直4DOHCのFRという旧車でも特別な存在! 昭和生まれの「硬派」な高性能車3選
今では当たり前の存在となっているDOHCエンジンですが、昭和の時代には高性能エンジンの代表格でした。そこで、直列4気筒DOHCエンジンを搭載した昭和のFR車を、3車種ピックアップして紹介します。
DOHCエンジンが高性能車の証だった時代の硬派なクルマを振り返る
日本車の性能向上を振り返るうえで、大きな影響として挙げられるのが排出ガス規制の強化で、幾度も高性能車が消え、復活を繰り返してきた歴史があります。
とくに1970年代は排出ガス規制が一気に強化され、それ以前に登場した高性能車は急激に淘汰されてしまいました。
しかし、1970年代の終わりには、国産メーカーによる排出ガス対策も一段落し、1980年代になるとターボエンジンの普及もあって再び高性能車が登場し、以降も排出ガス規制が強化されましたが技術の進歩も後押しするかたちで高性能車もさらに進化を果たし、現在に至ります。
この高性能車のなかでも昭和を代表するのがDOHC(ダブルオーバーヘッド・カムシャフト)エンジン車で、今では当たり前の存在ですが、かつては高性能車の証といえるパワーユニットでした。
そこで、直列4気筒DOHCエンジンを搭載した昭和のクルマのなかでも硬派な印象のFRモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「コルトギャランGTO MR」
三菱は1969年に、初代「コルトギャラン」を発売。スタイリッシュなデザインの高性能4ドアFRセダンとして、人気を博しました。
そして1970年にはコルトギャランをベースにした2ドアハードトップの派生車「コルトギャラン GTO」が登場。「GTO」の名はイタリア語の「Grande Tourismo Omologare」の頭文字に由来し、「GTカーとして正式に承認されたクルマ」を意味します。
外観はフロントノーズからテールエンドまで続く「ダイナウェッジライン」と呼ばれた美しいサイドラインのファストバックで、トランクリッド後端を跳ね上げたダックテールによって力強さを演出。
またフロントフェイスはコルトギャランと異なり丸目4灯のヘッドライトを配置した逆スラントノーズで、シャープな印象でした。
発売当初に搭載されていたエンジンは1.6リッター直列4気筒SOHCのみでしたが、発売から1か月後には最高出力125馬力(グロス、以下同様)を誇る1.6リッター直列4気筒DOHCを搭載した「コルトギャラン GTO MR」が登場しました。
このDOHCエンジンは三菱の市販車では初で、最高速度は公称200km/hを誇り足まわりも強化されるなど、「Mitsubishi Racing」に由来する「MR」の名にふさわしい性能を発揮。
しかし1972年、排出ガス規制の強化により、ギャランGTO MRの生産を終了。わずかな販売期間で販売台数は少なく、今ではかなり貴重な存在です。
●いすゞ「ジェミニ ZZ」
いすゞは2002年に、日本市場で乗用車の生産・販売から撤退しましたが、かつては「117クーペ」や「ベレット」「ピアッツァ」など、数多くの名車を世に送り出してきました。
そして1974年には、ベレットの実質的な後継車として初代「ジェミニ」(当初は「ベレット ジェミニ」の車名)が誕生。
ジェミニは当時いすゞと提携していたGMと共同開発されたグローバルカーで、GM傘下だったオペルから発売された「カデット」と兄弟車であり、デザインもヨーロピアンな雰囲気が漂うモダンな2ドアクーペと4ドアセダンでした。
その後は前述にあるとおり排出ガス規制の強化から環境性能の向上や細かな改良を重ね、1979年に「ベレットGTR」の再来ともいえる高性能モデルの「ZZ(ダブルジー)」シリーズが加わりました。
最高出力130馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載したZZシリーズの外観は、SOHCエンジン車から大きく変わっていませんでしたが、ボンネット上のバルジや迫力あるサウンドを奏でるデュアルマフラーが取り付けられ高性能さをアピールしていました。
足回りはフロントにダブルウイッシュボーン、リアは3リンクのリジットアクスルで、117クーペと同形式でしたがリアはコイルスプリングに変更され、後のピアッツァも同形式となるなど、いすゞ製FR車では定番でした。
さらに1981年には強化サスペンションやLSDを標準装備し、走りに徹した「ZZ/R」が登場。1トンを切る軽量な車体も相まって、ラリーをはじめモータースポーツでも活躍しました。
その後、1985年に2代目ジェミニが登場すると時代の流れからFFにスイッチ。初代も併売されましたが、1987年に生産を終了しました。
●日産「シルビア RS」
日本でようやくマイカー時代が始まろうとしていた1965年に、日産は超高級なスペシャリティカーである初代「シルビア」を発売。
しかし、生産工程の多くをハンドメイドとしたことから、初代シルビアはかなり高額なクルマで購入できる顧客は限られ、わずか3年ほどで生産を終了しました。
それから7年の空白期間を経た1975年に、2代目シルビアが登場しましたが、性能的には排出ガス規制の強化という背景から特筆すべきところはなく、米国市場を意識したデザインも賛否が分かれ、販売は好調ではありませんでした。
そこで1979年に3代目へとフルモデルチェンジし、外観デザインを直線基調のシャープなフォルムに一新。ボディは2ドアハードトップクーペと3ドアハッチバッククーペをラインナップし、販売チャネル違いの姉妹車「ガゼール」も加わりました。
フロントフェイスは角型4灯式とすることで精悍で迫力のあるデザインとなり、ハードトップ、ハッチバックどちらも甲乙つけがたいほどスタイリッシュなシルエットでした。
エンジンは当初1.8リッターと2リッターの直列4気筒SOHC自然吸気でしたが、1981年には最高出力135馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒SOHCターボエンジン車を追加ラインナップ。
さらに1982年には2ドアハードトップに、最高出力150馬力を誇る2リッター直列4気筒DOHC16バルブ「FJ20E型」エンジンを「スカイラインRS」から移植した「RS」シリーズ登場したことで、シルビアはコンパクトなスポーツカーというイメージを前面に押し出し、若者から絶大な人気を得ることに成功しました。
RSシリーズには装備を簡素化した硬派な「RS」グレードと、音声認識パワーウインドウやパワーステアリングなど装備が充実した「RS エクストラ」を設定し、どちらもLSDと「ポテンザ」タイヤを標準装備するなど、走りの質も高められていました。
その後シルビアは3代目のコンセプトを継承して進化を果たし、2002年に7代目の「S15型」をもって歴史に幕を下ろしました。
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今やDOHCエンジンは珍しい存在ではありませんが、排出ガス規制クリア後の1980年代にはまだまだ希少で、各メーカーはエンブレムやデカールでDOHCエンジンを大きくアピールしていました。
さらにターボエンジン車も「TURBO」のエンブレムやデカールを貼り、もっと昔は「5 SPEED」と5速MTであることを強調する流れがありました。
そうしたメカや装備が一般化するとアピールすることもなくなりましたが、1990年代以降でも「CVT」や「HYBRID」をエンブレムで主張し、現在もEVでは「ZERO EMISSION」のエンブレムが取り付けられるなど、文化は継承されています。
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