小さなエンジンでも超絶ハイパワー! 小排気量最強マシン3選
エンジンの出力は排気量に比例しており、コンパクトなボディで軽量なクルマならば小さなエンジンを搭載するケースが一般的です。一方で、排気量が小さくても出力が大きなクルマも存在。そこで、小排気量ながらハイパワーなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
小排気量エンジンの最強マシンを振り返る
世界中の自動車メーカーは二酸化炭素排出量削減を目的に、EV化へのシフトを加速。すでに数多くのEVが市販化されています。
しかし、現状ではまだまだ内燃機関を搭載したクルマが販売の主力であり、EVへの完全移行にはしばらく時間がかかりそうです。
この内燃機関にはさまざまな種類がありますが、車格によって分けられているのが排気量で、概ね排気量と出力は比例する関係にあります。
コンパクトなボディで軽量はクルマは小排気量、大型で重いクルマでは必然的に排気量が大きくなりますが、近年では小排気量エンジンでもターボチャージャーによって高出力化が可能な「ダウンサイジングターボエンジン」もあり、大型のクルマでも小排気量エンジンというケースも珍しくありません。
そこで、小排気量エンジンでもハイパワーなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●ケータハム「セブン170」
イギリスを代表するスポーツカーメーカーであるロータスは1957年に、後に傑作と評されたライトウェイトスポーツカーの「7(セブン)」を発売しました。
セブンは往年のフォミュラーカーに近いコンセプトのFR車で、高性能ながらキットカー(オーナーが自ら組み立てるクルマ)として販売されたことで安価な価格を実現し、同社のモデルとしては空前のヒット作になりました。
その後、セブンは「シリーズ4」をもって1973年に生産を終了しましたが、ロータスはセブンの製造権と販売権を、同じくイギリスのスポーツカーメーカーであるケータハムに譲渡しました。
ケータハムがつくるセブンはもっとも完成度が高い「シリーズ3」をベースに開発され、基本的なレイアウトやコンセプトを継承しながらも独自の進化を続け、欧州のみならず日本でも人気を獲得しました。
そして2014年には、エントリーモデルとして最高出力80馬力を発揮するスズキ製660cc直列3気筒ターボエンジンを搭載した「セブン160」が誕生。日本では軽自動車として登録できるセブンとして、大いに話題となりましたが、2020年に生産終了となりました。
しかし2021年9月に、新型「セブン170」として復活を果たし、同じく軽自動車規格に収まるボディサイズを継承。
エンジンもセブン160と同じスズキ製660cc直列3気筒ターボですが、最高出力85馬力までチューンナップされました。
グレードは2タイプあり、標準モデルの「セブン170S」と、ウインドスクリーンを装備せず、カーボンパーツの装着と足まわりを強化してサーキット走行にも対応した「セブン170R」を設定。
車重はわずか440kgと歴代セブンのなかでももっとも軽量で、セブンの原点である「走ることに特化した簡素な装備」と「超軽量」というコンセプトに回帰しました。
価格(消費税込)はセブン170Sが539万円、セブン170Rが561万円からで、多彩なオプションが用意されており、使用環境によってユーザーが自分好みに仕立てることを前提としています。
●ダイハツ「ブーン X4」
かつてダイハツは、ラリーやダートトライアルを中心にしたモータースポーツへの参戦と、同競技に参加するユーザーのサポートを積極的におこなっていました。
とくに1990年代から2000年代にかけて、スズキやスバルといったライバルとの争いが激化したことから、モータースポーツベース車の「ミラ X4」や「ストーリア X4」を開発。さらに2006年にはストーリア X4の後継車である「ブーン X4」を発売しました。
ブーンはトヨタと共同開発したベーシックなコンパクトカーですが、ブーン X4は最高出力133馬力を発揮する936cc直列4気筒ターボエンジンが搭載され、燃料もプレミアムガソリンが必須でした。
駆動方式はフルタイム4WD、トランスミッションはクロスレシオの5速MTのみの設定など、スタンダードなブーンとは完全に別物の「戦うマシン」に仕立てられていました。
外観ではボンネット上にインタークーラー冷却用の大型エアダクトを設置し、このインタークーラーには冷却両のウォータースプレーを装備するなど、競技における戦闘力を重視。
また、エンジン以外でも前後スタビライザーを装着した強化サスペンション、機械式LSDをフロントのデファレンシャルギヤに搭載し、わずか980kgという軽量な車体も相まって高い運動性能を発揮しました。
実際の競技でも大いに活躍し、同クラスの最強マシンとして君臨していたほどです。
かなり硬派なマシンだったブーン X4ですが、快適装備が充実して普段使いも可能な「ハイグレードパック」も設定されていました。
その後、2009年にブーン X4は生産終了となり、モータースポーツベース車は消滅してしまいました。
●BMW「i8」
日本の自動車市場では自動車税の区分が排気量で決まるため、登録車においては1.5リッターエンジンが古くから人気でしたが、今や輸入車でも1.5リッター以下のモデルが盛んにつくられ、たとえばメルセデス・ベンツ「Eクラス」でさえも1.5リッターターボエンジンを搭載して話題となりました。
そんな1.5リッター車のなかでも一際ハイパワーなのが、BMWのプラグインハイブリッドカー「i8」です。
i8は2013年に発売され、外観は新時代のスーパーカーと呼ぶべき未来的なウェッジシェイプのボディで、最大の特徴は斜め上に開閉されるシザーズドアを採用していることです。
全長4690mm×全幅1940mm×全高1300mmとロー&ワイドなボディは、アルミ製のバックボーンシャシにCFRP製のキャビン(「パッセンジャー・セル」と呼称)を架装する構造の2+2の4シーターで、大容量バッテリーによって外部充電に対応しあプラグインハイブリッド車ながら1590kgという軽量な車体を実現。
そして、パワーユニットはミニに採用されているのと同型の1.5リッター直列3気筒ターボエンジンをミッドシップに搭載し、エンジン単体で231馬力を発揮して発電と共にリアタイヤを駆動します。フロントには142.8馬力のモーターを搭載するフルタイム4WDで、システム出力は374馬力を誇りました。
走行シーンによってモーターとエンジンを使い分けるシステムは通常のストロングハイブリッド車と変わりませんが、最大54.8kmのEV走行が可能でした。
なお、2018年にはオープンモデルの「i8 ロードスター」が追加されました。
実用的でエコなスーパーカーという特異な存在だったi8でしたが、2020年4月に生産終了となり、2021年6月には日本でも販売を終了しました。
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小排気量エンジンにターボチャージャーを組み合わせたダウンサイジングターボエンジンという概念は、1980年代には確立されていました。
その代表的な存在が1988年まで使用されていたF1用エンジンで、1.5リッターから1000馬力を誇り、燃料の使用量やブースト圧上限の規制が強化される前には、予選時で1500馬力に到達していたといわれています。
もちろん、F1では燃料も特殊で市販車とはかけ離れた存在でしたが、リッターあたり1000馬力を発揮するターボチャージャーの威力の凄さが垣間見える事例でしょう。
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