高性能だけじゃなくスタイリングも完璧! 昭和のコンパクトFRクーペ3選
現在、世界的にも絶滅危惧種となってしまったコンパクトなクーペですが、1970年代には数多くのモデルが販売され、まさに隆盛を極めていました。そこで、昭和の時代に登場した高性能な国産コンパクトFRクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
昭和を彩った高性能なコンパクトFRクーペを振り返る
2000年代以降、急激にニーズが低下し、ラインナップが激減してしまったのがコンパクトなボディのクーペです。今では世界的にも絶滅が危惧されている状況となってしまいました。
かつて日本では、コンパクトなクーペは走り好きやクルマ好きの若者を中心に人気を集め、各メーカーから数多くラインナップされていました。
とくに1970年代の初頭には大衆車と呼ばれるクラスのコンパクトクーペが次々と登場し、まさに隆盛を極めていた状態でした。しかも高性能なエンジンを搭載した魅力的なモデルも存在。
そこで、昭和の時代を彩った高性能な国産コンパクトFRクーペを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「サニークーペ 1200 GX5」
1966年の中頃には、日本でも本格的な「マイカー時代」が到来し、それに応えるかのように日産1966年4月、初代「ダットサン サニー」を発売しました。
その後、1970年1月には2代目サニーが登場。搭載されたエンジンは初代から受け継いだ「A型」直列4気筒OHVで、排気量は初代の1リッターから1.2リッターへと拡大されました。
ボディタイプは2ドア/4ドアセダンと2ドアクーペ、3ドア/5ドアバン、ピックアップトラックをラインナップし、大衆車の責務としてさまざまなニーズに対応していました。
そして、発売からまもなく1970年4月にはSU型ツインキャブを備え、最高出力は68馬力から83馬力(グロス、以下同様)までチューンナップされたA12型エンジンを搭載したセダンとクーペ「サニー 1200 GX」が登場。
さらに1972年には、GXをベースに5速MTを組み込んだ「サニー 1200 GX5」が加わりました。
このGX5に搭載されたトランスミッションは5速のギア比が1.0とされたクロスレシオで、通称「直結5速」と呼ばれ、シフトパターンも1速が左手前にあるレーシングパターンとされるなど、大衆車ながら日産がレースで培った技術が投入されました。
また、1200 GX5の足まわりはフロントがストラット、リアがリーフスプリングを用いたリジッドアクスルとシンプルな構造ながら、パワフルなエンジンと軽量コンパクトな車体が相まって、優れた走行性能を発揮。
比較的安価なスポーツモデルとして走り好きから高く支持され、ツーリングカーレースに参戦すると高いポテンシャルを発揮し、サニーのイメージアップにも貢献しました。
●トヨタ「カローラレビン」
トヨタは前出のサニーよりわずかに遅れた1966年11月に、初代「カローラ」を発売。そして、サニーとともに大衆車市場をけん引する存在となりました。
当初は2ドアセダンのみのボディでしたが、後に4ドアセダンとバンが加わり、1968年にはスポーティな2ドアクーペの「カローラスプリンター」が登場するなど、ラインナップの拡大が図られました。
その後、1970年には2代目が登場し、よりモダンなデザインとなりエンジン性能も向上。さらに1973年には、2代目カローラの2ドアクーペをベースに、大衆車としては異色ともいえる高性能なDOHCエンジンを搭載した初代「カローラレビン」と姉妹車の「スプリンタートレノ」が発売されました。
レビンの外観はカローラクーペと同一の形状ながら、レースカーをイメージさせるオーバーフェンダーを4輪に装着して迫力あるフォルムを実現。
トップグレードには初代「セリカ 1600GT」用に開発された1.6リッター直列4気筒DOHC「2T-G型」を搭載し、ミクニ製2バレルソレックスキャブが2基装着され、有鉛ハイオク仕様では最高出力115馬力を誇りました。
また、より安価なグレードとして「レビンJ」もラインナップ。ボディはそのままにエンジンは最高出力105馬力(有鉛ハイオク仕様)の1.6リッター直列4気筒OHV「2T-B型」が搭載されました。
また、レビンの足まわりはフロントにストラット、リアはリーフスプリングのリジッドアクスルと、サニーと同じく当時のFR車では定番の形式で、後にリアがコイルスプリングに変わりつつ「AE86型」まで継承されました。
初代レビンは若者たちから絶大な人気を獲得してカローラのスポーツモデルとしての地位を確立し、2000年まで7代にわたって受け継がれました。
●三菱「ギャランクーペFTO」
三菱は1970年に、スタイリッシュな外観の2ドアファストバッククーペ「コルトギャランGTO」を発売。日本車離れしたスタイリッシュな外観とパワフルなエンジンで人気となりました
さらに1971年にはコルトギャランGTOの弟分にあたる、コンパクトな2ドアFRクーペの「ギャランクーペFTO」を発売。
ボディサイズは全長3765mm×全幅1580mm×全高1330mmとコルトギャランGTOよりも格段にコンパクトながら、ロー&ワイドを強調したスタイリッシュなファストバッククーペで、足まわりやボディの一部を実績のある「コルトギャラン」と共用化することで開発期間の短縮とコストダウンを図り、55万8000円(東京価格)からと安価な価格設定を実現しました。
グレードは「GI」「GII」「GIII」の3グレードを展開。エンジンは全車1.4リッター直列4気筒OHVを搭載し、GIとGIIはシングルキャブレター仕様で最高出力は86馬力、トップグレードのGIIIはツインキャブ装着とハイリフトのカムプロフィールに変更され、高圧縮比化、点火時期の最適化などのチューニングによって最高出力95馬力を誇りました。
足まわりはフロントがストラット、リアがリーフリジッドと、やはり安価なFR車では定番の形式を採用。
そして、1973年のマイナーチェンジではエンジンが1.4リッターと1.6リッターのSOHCに換装され、高性能グレードの「GS-R」はツインキャブ仕様の1.6リッターエンジンで最高出力110馬力を誇り、4輪にオーバーフェンダーが装着されるなど、本格的なコンパクトスポーツカーへと進化しました。
その後ギャランクーペFTOは1975年まで生産され、1994年に発売されたFFクーペの「FTO」によって車名が継承されました。
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適度な性能のエンジンを搭載した軽量コンパクトボディのFR車は、ドライビングの基礎を学ぶ上でも最適なクルマで、日本の道路事情にもマッチした優れモノです。
そししたことから、AE86型レビン/トレノも生産終了後に再評価されたといえます。
今後、EV化が加速するなかでFRという概念はなくなりますが、後輪駆動のコンパクトモデル登場には期待できます。ただし、軽量なモデルとなると、革新的な電池が開発されなければ難しいでしょう。
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