登場から四半世紀! 現代に続くメルセデス・ベンツFFモデルの源流 初代「Aクラス」とは?

いまではメルセデス・ベンツを代表する車種となった「Aクラス」ですが、初代登場はいまから四半世紀前の1997年だったといいます。現在は同じFFプラットフォームを使うコンパクトモデルとして「Bクラス」「CLA」「GLA」「GLB」と兄弟車も拡大していますが、Aクラスはどんな歴史を歩んできたのでしょうか。

メルセデスの歴史、コンパクトカーの歴史を変えたエポックな1台

 独メルセデス・ベンツは2022年3月24日、メルセデス・ベンツ初代「Aクラス」の誕生から25周年を記念したリリースを発表しました。

メルセデス・ベンツ初代「Aクラス」
メルセデス・ベンツ初代「Aクラス」

 初代Aクラス(W168型)は、1997年3月のジュネーブモーターショーで世界初披露されたモデルです。

 メルセデス・ベンツは創業から何十年もの間、ラグジュアリークラスとエグゼクティブクラスという大型モデルのみを展開するブランドでした。それが1982年の「190」「190E」(W201型)の登場により、よりコンパクトなクラスにまで拡大、ラインナップを増やしてきました。

 その後、さらに小型なセグメントにラインナップを拡大するために登場したのが、1993年のフランクフルトショー(IAA)で世界初公開された「ビジョンA93」、それをベースにした1994年発表の「Aスタディ」です。ビジョンA93では全長が3350mmでしたが、Aスタディではすでに市販車に近いデザインとなり、全長も3575mmでした。

 初代Aクラスは、メルセデス・ベンツの乗用車としては初めての量産FFモデルとして登場しました。

 独自の二重フロア構造「サンドイッチコンセプト」により、このセグメントのモデルとしてはかつてないレベルの安全性を実現しました。エンジンやトランスミッション、アクスルは車体の前部と床下に配置され、バッテリーや排気系、燃料タンクは、フレームが通された二重フロアに搭載されていました。

 これにより、前面衝突時には斜めに設置されたエンジンとトランスミッションのユニットが、室内側ではなく床下に滑り込むように設計されていました。初代Aクラスのパッシブセーフティは、「Eクラス」の水準に達していたといいます。

 1997年に生産が開始されましたが、発売直後にスウェーデンの自動車雑誌がおこなった「エルクテスト(ヘラジカを避けるために急ハンドルを切るというテスト。ムーステストともいう)」において、Aクラスが横転するという騒動が発生しました。

 これによりメルセデス・ベンツは急遽スプリングとダンパーを強化、車高を下げるというセッティングの変更をおこないました。さらに横滑り防止装置の「ESP」と自動ブレーキアシスト「BAS」を標準装備、またタイヤサイズを従来の175/65R15から195/50R15に変更し、すでに納車されていた1万8000台は無償で交換したといいます。

 ESPやBAS、エアバッグ、フロントドアのサイドインパクトエアバッグ、シートベルトテンショナー、ベルトフォースリミッターなど、初代Aクラスは当時のBセグメント・コンパクトカーにはない安全装備を多数標準装備しており、これらのアクティブセーフティシステムが業界全体に普及するきっかけとなりました。

 初代Aクラスは二重フロア構造のため、乗員は比較的に高い位置に座ることになり、そのため高齢者でも乗降がラクというメリットもありました。また室内も広く、大人5人がゆったりと座れる空間を確保していました。

 2001年にはマイナーチェンジをおこない、ホイールベースが170mm延長された「ロング」も登場、さらに広い空間を得ることになります。

※ ※ ※

 初代Aクラスは1997年から2001年のマイナーチェンジまで、全世界でおよそ55万台を販売、人気モデルとなりました。さらに初代は2005年まで販売を続け、結果的に115万9321台という販売台数となりました。また2004年に登場した2代目(W169型)も、ミリオンセラーを記録しました。

 3代目(W176型)は2012年に登場。デザインを一新し、スポーティなCセグメントハッチバックスタイルとなり、若いユーザーに受け入れられました。現行型Aクラスは4代目で、2018年に登場。「Bクラス」「CLA」「GLA」「GLB」と、FFプラットフォームを用いた兄弟車も拡大され、いまではメルセデス・ベンツの屋台骨を支える存在となっています。

 四半世紀前に登場したAクラス。初代から現行型まで、コンパクトクラスにおけるメルセデス・ベンツの成功を象徴するものといえます。

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