性能は発展途上だったけど魅力的! 昭和のコンパクトスポーツセダン3選
1980年代といえば、日本車の性能が一気に向上した時代でした。同時に各メーカーの主力車種はセダンだった時代です。そこで、1980年代初頭に登場したコンパクトでスポーティなセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
昭和のコンパクトスポーツセダンを振り返る
日本において1970年代の後半は、排出ガス規制の強化から高性能車にとって冬の時代になりました。しかし、1980年代になると各メーカーとも排出ガス規制の対応が一段落し、一気にパワーアップを開始。
その原動力となったのはターボエンジンの普及ですが、自然吸気エンジンにおいても出力向上が図られ、さらにシャシ性能も次第に高められました。
また、当時はセダンが各メーカーの主力車種だったことからスポーティなセダンが次々と登場し、とくに1.5リッタークラスのエンジンを搭載したコンパクトなモデルが急増。
そこで、1980年代の初頭に発売されたスポーティなコンパクトセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「トレディア」
三菱は1978年に、同社初のFF車である初代「ミラージュ」を発売しました。洗練されたデザインのコンパクトなボディで、1982年には同クラス初のターボエンジン車「ミラージュII」をラインナップするなど、三菱のエントリーカーとして人気となりました。
そして、1982年にはFF車第2弾の「トレディア」と「コルディア」が誕生しました。
トレディアとコルディアはプラットフォームを共有しながらも、トレディアが4ドアセダン、コルディアが3ドアハッチバッククーペと、異なる車種として展開されました。
両車とも直線基調のデザインで、コンパクトなボディにゆとりのある室内空間を実現。トレディアはセダンながら空力性能を追求したウェッジシェイプを採用し、ボディ表面から凹凸をなくしたフラッシュサーフェス化が図られていました。
エンジンは日本車では初の1.6リッター直列4気筒SOHCターボに加え、1.6リッターと1.8リッターの自然吸気を設定し、1.6リッターターボは最高出力115馬力(グロス、以下同様)を誇りました。
また、ターボ車のボンネットにエアスクープが装着されるなど、見た目にもスポーティさを表現。
その後、マイナーチェンジでターボエンジンは1.8リッターに排気量アップされ、4WDモデルを追加するなど、より魅力的なモデルとなりましたが、1987年に一代限りで生産を終了しました。
●日産「サニー ターボ ルプリ」
日産は1966年に、マイカー時代到来に合わせて初代「ダットサン サニー」を発売。トヨタ初代「カローラ」と共に日本の大衆車市場をけん引する存在となりました。
その後代を重ね、1981年に登場した5代目では駆動方式がFRからFFとなる大きな転換期を迎え、同時にエンジンやサスペンションなどもすべて一新されました。
ボディタイプは3ドアハッチバッククーペ(後に2ボックス化)と4ドアセダン、ステーションワゴンをラインナップ。セダンは直線基調のオーソドックスなスタイリングですが広い室内空間を実現し、騒音や振動の低減、空調システムの改良も実施されました。
そして1982年に、日本車初の1.5リッターターボエンジンを搭載した「ターボ ルプリ」が登場。
ターボ ルプリは3ドアハッチバッククーペと4ドアセダンに設定され、1.5リッター4気筒SOHCターボの「E15ET型」は最高出力115馬力を発揮し、800kg程度の軽量な車体と相まって優れた走行性能を発揮しました。
また、当時のトレンドで、フロントグリルに「TURBO」の鏡文字が採用され、高性能車であることを控えめに主張し、内装ではスポーツシートと3本スポークのステアリングを装備してスポーティに演出。
このE15ET型エンジンはターボ ルプリ以外にも「ローレルスピリット ターボXJ」「パルサーEXA ターボ」「パルサー ターボ」「ラングレー ターボGT」「リベルタ ビラ SSSターボ」と、5代目サニーと共通のプラットフォームを持つ各車に幅広く搭載されました。
●ホンダ「バラード FXT」
ホンダは1972年に、新世代のFFコンパクトカー初代「シビック」を発売し、優れた経済性と走り、広い室内空間から大ヒットを記録しました。
そして、1979年に初代からキープコンセプトとした3ドア/5ドアハッチバックの2代目が登場し、1980年には4ドアセダンが追加され、同時に姉妹車で4ドアセダン専用モデルの初代「バラード」が誕生。
バラードのボディはシビック セダンと共通でしたが、フロントフェイスとリアまわりのデザインは専用とされ、さらにシビック セダンには無いスポーティグレードの「FXT」が設定されました。
FXTは標準車よりも5馬力アップした最高出力85馬力の1.5リッター直列4気筒SOHC CVCCエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTのみ。
足まわりには155SR13タイヤにハードダンパー、前後にスタビライザーが装着されるなどスポーティなセッティングとなっており、シャシ性能の向上が図られていました。
その後、バラードは1983年に2代目へとフルモデルチェンジ。シビックと共によりスポーティなモデルへと進化を果たしました。
※ ※ ※
1980年代の10年間は日本車の性能が著しく向上し、とくにエンジンの進化はめざましく、メーカー間のパワー競争にまで発展しました。
しかし、当初はパワーアップにシャシ性能が追いついていないクルマも多く、かなり危険なクルマも存在したほどです。
その後、平成の時代になるとメーカーもシャシ性能の向上を重要視し、さらに各種電子デバイスの開発やタイヤの性能アップもあり、より安全な高性能車の誕生につながりました。
街の遊撃手 いすゞ ジェミニ! が載ってない。