ドレスアップアイテムから「本気仕様」へと変化!? 昭和・平成・令和のエアロパーツ車3選
レーシングカーの空力性能向上のために開発されたエアロパーツは、1960年代には市販車へと導入され、1980年代にはドレスアップパーツとしても広く普及しました。以降は本来の機能パーツとして進化し、現在に至ります。そこで、昭和・平成・令和のエアロパーツ車の変遷を、3車種ピックアップして紹介します。
昭和・平成・令和と、各時代におけるエアロパーツ車を振り返る
クルマの外観は見た目の印象を左右するほかに、機能的な面も考慮してデザインされています。そのなかのひとつが空力性能です。
空力性能には空気抵抗や車体を浮き上がらせる揚力、クルマの左右方向からの横力がポイントで、それぞれ燃費、最高速度、コーナリング性能、直進安定性などに影響を与え、空力性能の向上はデザインの上でも重要になります。
この空力性能の向上を目的に開発されたのがエアロパーツです。レーシングカーから誕生し、1960年代には市販車にも取り付けられるようになり、1970年代の日本では一旦は廃れましたが1980年代にはドレスアップパーツとして流行しました。
その後、エアロパーツは進化し、本来の機能パーツとしての効果も成熟しながら現在に至ります。
そこで、昭和・平成・令和のエアロパーツ車の変遷を、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「サニー 306 ツインカム NISMO」
先述したように、1970年代にはエアロパーツが消滅しました。これは当時の運輸省(現在の国土交通省)の指導から、暴走をあおるような装備が認可されなかったことに起因しますが、1980年代はエアロパーツが再び解禁され、純正装着されたクルマが次々に登場しました。
とくに前後スポイラー(リアのアンダースポイラーを含む)にサイドステップの組み合わせは「フルエアロ」と呼ばれ、当時はドレスアップアイテムとして人気を博しました。
そんな昭和を彩ったフルエアロの1台として挙げられるのが、1985年に登場した6代目「サニー」3ドアハッチバックの高性能グレード「306 ツインカム NISMO」です。
1986年に、FF化した第2世代のサニーにシリーズ初のDOHCエンジン車が加わり、306 ツインカム NISMOは3ドアハッチバックモデルの最上位に位置するモデルで、エンジンは最高出力120馬力の1.6リッター直列4気筒DOHC「CA16DE型」を搭載。
ボディにはフロントスポイラー、サイドステップ(サイドシルプロテクターと呼称)、リアアンダースポイラーが装着され、カラーリングも専用の「クリスタルホワイト」と「ニスモブラック」の2色を設定。
ほかにもボディサイドには専用のデカール、内装ではスポーツシートに本革巻ステアリング、ホワイトメーターなどによってスポーティに演出され、足まわりではアジャスタブルショックアブソーバー、4輪ディスクブレーキ、ブリヂストン「ポテンザ」のハイグリップタイヤが奢られました。
当時、ホワイトのボディとフルエアロの組み合わせはセグメントを問わず流行の最先端であり、6代目サニーは流行をキャッチアップしていたモデルといえました。
●スバル「S208 NBR CHALLENGE PACKAGE」
平成になるとエアロパーツも進化し、保安基準に適合していればアグレッシブなエアロパーツの純正装着も問題視されることもなく、より過激なエアロパーツが登場しました。
なかでも2017年に450台で発売されたSTI(スバルテクニカインターナショナル)謹製のコンプリートカー、スバル「S208」の本気度はかなりのものでした。
S208はスポーツセダンの「WRX STI」をベースに、大型フロントアンダースポイラーに加え、リアにはドライカーボン製トランクリップスポイラーを装着。
さらに「NBR CHALLENGE PACKAGE」では、S208ロゴ入りの大型ドライカーボンリヤウイングを採用。ルーフ部分もドライカーボン製とするなど、軽量化と同時に低重心化も図られました。
エンジンは最高出力329馬力を誇る「EJ20型」2リッター水平対向4気筒ターボを搭載。トランスミッションは6速MTのみの設定で、これは ベース車と同じです。
ほかにも11:1のクイックステアリング、フレキシブルタワーバーをはじめSTI独自のパーツ類に加え、フロントには可変減衰力のショックアブソーバーを装着するなど、しなやかな乗り味とシャープなコーナリングを両立していました。
S208のフロントスポイラーや大型リアウイングは、まさにスバルがレースで培った技術のフィードバックといえ、公道での効果よりもサーキット走行でこそ効果が期待できました。
●トヨタ「GRMNヤリス」
トヨタは2022年1月14日に、コンパクトスポーツカーの「GRMNヤリス」を世界初公開しました。
「TOYOTA GAZOO Racing」が手掛けるコンプリートカーのなかでも「GRMN」シリーズは最高峰に位置するハイスペックモデルで、これまでも「86 GRMN」「マークX GRMN」「ヴィッツ GRMNターボ」「iQ GRMNスーパーチャージャー」などが登場しています。
GRMNヤリスは、トヨタがWRC参戦で培った技術をフィードバックして開発された「GRヤリス」をベースに、さらにチューンナップされ、外装パーツにカーボン製フロントフードとルーフ、リアスポイラーなどが採用され、リアシートを撤去して2シーター化するなど、ベース車に対して約20kgもの軽量化を達成しています。
とくにリアスポイラーはレーシングカーではスタンダードになっている「スワンネック」のステーとなっており、ウイング下方の空気の流れを改善。よりリアウイングの効果が得られる高効率な取り付け方法です。
搭載されるエンジンはGRヤリスの1.6リッター直列3気筒ターボをベースにチューニングされ、最高出力272馬力は変わっていませんが、トルクが370N・mから390N・mにアップ。
6速MTのトランスミッションはクロスレシオ化とギアの表面処理による強度の向上が図られ、メタルクラッチを採用し、駆動力を最適化したローファイナルギヤが組み込まれています。
駆動系では前後のディファレンシャルギアには機械式LSDを装備し、足まわりではビルシュタイン製の減衰力調整式ショックアブソーバーを装着、ボディ剛性のアップも併せ、トラクション性能と旋回性能も向上しました。
GRMNヤリスには3タイプが設定され、標準仕様、サーキット走行を重視したオプションパッケージの“Circuit package”、あらゆる路面でのパフォーマンスを高めたオプションパッケージの“Rally package”のラインナップで500台の限定販売で、すでに商談受付は終了しています。
価格は標準仕様が731万7000円、Circuit package仕様が846万7000円、Rally package仕様が837万8764円(装備により変動)で、2022年夏以降に納車が始まる予定です。
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一時は過激さを増していたエアロパーツですが、近年はだいぶ落ち着いた印象があります。
ベースとなるボディそのものの空力性能が向上したこともありますが、やはり高性能なスポーツカーが少なくなったということも影響しているのかもしれません。
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