なぜダイハツは軽依存からシフト? 小型車販売が5年で34倍に急成長! トヨタOEM車には無い個性を出す訳
ライバルはトヨタへのOEM車!? ダイハツはどう戦う?
2016年1月になると、トヨタがダイハツを100%出資の完全子会社に変更することも発表されました。
ダイハツが小型車に力を入れる理由として、トヨタの意向が働いていることもあるかも知れません。
単純に考えれば、トヨタは小型車、ダイハツは軽自動車とカテゴリーを分けた方が合理的ですが、今後の軽自動車市場が縮小することを前提にすると話は変わります。
とくにメーカーではなく、ダイハツの販売会社の将来を考えると、軽自動車への依存度を抑えて小型車の販売増加に備えたいところでしょう。
また当時から、軽自動車市場の競争激化も心配されていました。
2011年にはホンダから初代「N-BOX」が発売されて売れ行きを伸ばし、日産も2013年に先代「デイズ」、2014年には先代「ルークス」(当時は「デイズルークス」)を扱うようになりました。
従来は小型/普通車が中心だったメーカーまで軽自動車の届け出台数を増やすと、競争の激化によって薄利多売がさらに進んでしまいます。
そこで軽自動車が中心だったダイハツとスズキは、ホンダや日産とは逆に、小型/普通車に力を入れるようになったのです。
とくにスズキは早期に行動を起こしました。国内で登録される小型/普通車を10万台まで増やす目標を掲げ、先代「ソリオ」のヒットもあり、2016年には10万台少々を登録して目標を達成しました。
一方、ダイハツの小型/普通車登録台数は、同じ2016年には前述の6930台(つまりスズキの約7%)でした。スズキの売り方に刺激され、ダイハツが2017年に小型車の登録台数を2万8113台まで増やした経緯もあるでしょう。
このように最近のダイハツは小型車に力を入れますが、いまのところすべての車種がトヨタにも供給されています。従ってダイハツの小型車は、すべてトヨタのOEM車と競争するのです。
そうなるとダイハツの小型車が売れ行きを伸ばすうえで、トヨタのOEM車が障壁になりますが、ダイハツ車としての個性を持たせる傾向も見られます。
たとえばロッキーの「プレミアムG/プレミアムGハイブリッド」には、OEM車のライズが採用していないソフトレザー調のシート表皮が使われています。
かつてのダイハツ「シャレード」のように、トヨタには供給しない別の小型車を開発するには至っていませんが、グレードには独自のタイプを用意しています。
このように、一時は急減したダイハツの小型車販売が、再び増加傾向にあります。これはユーザーの購買動向に沿った変化でもあります。
一般的に小型車から軽自動車へ乗り替えるダウンサイジングが話題になりますが、実際には、軽自動車ユーザーの約20%は小型車にアップサイジングしているからです。
そしていまの上質な軽自動車から、さらに小型車へアップサイジングする場合、ユーザーはさらに高い品質を求めます。
先に挙げたソフトレザー調シート表皮を使うロッキー プレミアムGは、このダイハツの顧客ニーズにも合っており、プレミアム感覚の小型車を必要としているのはトヨタよりもむしろダイハツなのです。
これからのダイハツでは、軽自動車とあわせて、コンパクトカーにも期待が持てそうです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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