ホンダの4WDは走ってホントに楽しいの!? 雪道走行でわかった「ヴェゼル」と「CR-V」の操作性の違いとは?
同じ4WDシステム採用なのにヴェゼルとCR-Vには走りの違いが
「e:HEV」と呼ぶハイブリッドモデルを雪道で試乗してみると、タイムラグなく後輪へトルクが伝わって滑りやすい上り坂でもスムーズに発信できることからも、電子制御の多板クラッチに後輪への駆動力配分が巧みにおこなわれていることを感じられます。
かつてホンダの4WDは「レスポンスがいまひとつで、前輪がスリップしてからでないとあまり役に立たない」などと言われることもありましたが、それはすっかり過去の話だということを実感しました。
驚いたのは、旋回時の動き。
アクセルを戻してのターンインは、時にはイン側の前輪にブレーキをかけてクルマを曲げていく「アジャイルハンドリングアシスト」も活用しつつ素直にノーズの向きを変え、いっぽう脱出時は駆動力を4輪にしっかり配分することで安定感のある加速と挙動が自然だから安心できるのです。それはCR-Vとヴェゼルの両者に共通する美点でした。
ただし、そこから先の領域が楽しいのはヴェゼルでした。
安定志向のCR-Vに対し、ヴェゼルはアクセルをグッと踏み込むとリアが流れ、VSA(横滑り防止装置のホンダの名称=通称ESC)をカットした状態であれば、カウンターステアを当てつつアグレッシブに走れます。
この挙動はクルマを操る喜びに満ち溢れるもので、腕に覚えのあるドライバーならついつい楽しんでしまうことでしょう。いっぽうでそこまでのドライブテックニックがなければ、VSAをオフにせず、またアクセルを踏み込まなければ安定性の高い走りが得られます。
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ところで、CR-Vもヴェゼルも同じ駆動系ユニットなのに、操縦性に違いがあるのはどうしてでしょうか。
じつは、制御が異なるのです。
CR-Vの前後トルク配分が、概ね65:35から55:45の間でコントロールするのに対し、制御の世代が新しいヴェゼルでは、概ね60:40から50:50とリアに多めのトルクを配分します。
その違いが、安定に徹するか、時には後輪駆動のような感覚の楽しいハンドリングを実現するかの際になっているというわけです。
もう一度繰り返しますが、安定した走りや安心感はどちらも共通。いっぽうで運転を積極的に楽しむならヴェゼルのほうが魅力的です。
ちなみに両車とも、フロントタイヤが空転した際などは瞬間的に最大40:60までリアタイヤのトルク配分を高めてトラクションを向上させる仕掛けとなっています。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
なるほど、リヤにモーターを置くと居住スペースが犠牲になる可能性があるのか。