流麗なフォルムとは真逆だけど秀逸なデザイン! 昭和のカクカクした車3選
クルマの外観デザインは時代によって流行があり、変化しています。また、車種によっては独特なデザインを採用するケースも存在。そこで、昭和の時代に登場したカクカクフォルムのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
直線基調のデザインが魅力的な昭和のクルマを振り返る
クルマの外観デザインは個性そのものといえ、各メーカーともデザインにはもっとも注力しているといえるでしょう。
また、デザインには時代によって流行があり、時とともに変化を続けていますが、さらに車種によっても独特なデザインを採用するケースがあります。
近年はセダンやSUVなどで流麗なフォルムが流行しており、複雑な曲面を多用しています。
一方、1970年代から1980年代にかけては、直線基調のデザインを採用したクルマが多く見られました。
そこで、昭和の時代に登場したカクカクフォルムのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「ライフ ステップバン」
ホンダは1971年に、大ヒットした「N360」シリーズの後継車として、水冷360ccエンジンを搭載した軽乗用車「ライフ」を発売。さらに1972年にはライフのコンポーネンツを流用した派生車で軽商用バンの「ライフ ステップバン」が登場しました。
外観は背が高いボクシーなフォルムで、極端に短いボンネットがあるセミオーバーキャブのスタイルにドアはすべてヒンジドアで、現在の軽トールワゴンの先駆け的存在でした。
当時の軽バンはフロントシート下にエンジンを置き後輪を駆動するFRが主流でしたが、ライフ ステップバンはFFだったことからプロペラシャフトが不要となり、低床で上下開きのリアゲートなど使い勝手のよい荷室を実現。
また内装ではデスクタイプのインパネにペンホルダーを装備し、折りたためば広くフラットな荷台になるリヤシートなど、商用車として考え抜かれた設計でした。
エンジンはライフ用と同型の360cc直列2気筒SOHCで、最高出力は30馬力(グロス)と十分な出力を発揮しました。
デザインもユーティリティも優れた商用バンのライフ ステップバンでしたが、ホンダは初代「シビック」の生産と改良に注力するため、軽トラック以外の軽自動車の生産を休止すると宣言し、1974年にライフ ステップバンは生産終了となりました。
こうして短命に終わったライフ ステップバンでしたが、絶版車となってからしばらくして若者を中心にレジャーカーとして再評価され、とくにサーファーたちから高い人気を誇りました。
●日産初代「サファリ」
日本におけるクロカン車の歴史は、警察予備隊(自衛隊の前進)に採用されることを目的に開発されたモデルから始まりました。
最終的に警察予備隊が採用したのは三菱「ジープ」でしたが、選に漏れたトヨタ「ジープ(BJ型)」(「ランドクルーザー」の前身)と日産「パトロール」はそのまま民生用に販売されました。
そして1980年に、パトロールの実質的後継車として初代「サファリ」が登場。
ボディスクエアなフォルムのステーションワゴンタイプで4ドアのロングと2ドアのショートがあり、ハイルーフ仕様や、バックドアが観音開きと上下開きが設定されるなど、さまざまな用途に対応する幅広いバリエーションを展開していました。
搭載されたエンジンは、当初3.3リッターディーゼルのみでしたが、1983年にはターボディーゼルを追加し、トランスミッションも4速MTに加え5速MTが設定され、駆動方式は全車パートタイム式4WDです。
車体はクロカン車では定番のラダーフレームにボディを架装する構造で、サスペンションは高い耐久性を誇る4輪リーフリジッドを採用していました。
1985年のマイナーチェンジではヘッドライトが角型となり、4ドアのロングホイールベース車に、オーバーフェンダーと大径タイヤ、電動ウインチと背面スペアタイヤキャリアを装着した豪華仕様向の「グランロード」をラインナップするなど、クロカン車ながらラグジュアリーなモデルも加わりました。
初代サファリは優れた悪路走破性を誇っただけでなく信頼性も高く、国内の山間部や豪雪地帯では消防車など緊急車輌としても活躍。
その後、1987年に2代目、2007年には3代目がデビューしましたが、2007年に生産を終了。その後も海外向けの生産は続けられ、現在もパトロールの車名で販売され、高級SUVへと変貌を遂げています。
●三菱2代目「ミラージュ」
三菱は1978年に、初代「ミラージュ」を発売。同社初のFF車で他メーカーよりも後発でしたが、1982年にはクラス初の1.4リッターターボエンジンを搭載し、動力性能でライバル車を引き離しました。
その後、1983年に2代目が登場し、ボディは3ドア/5ドアハッチバックと4ドアセダンで当時の流行だった直線基調のデザインに一新。
トップグレードの「GSRターボ」には最高出力120馬力(グロス)を発揮する1.6リッター直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載し、このGSRターボをベースにしたマシンによるワンメイクレース「ミラージュカップ」が開催されるなど、モータースポーツをフックにスポーティなモデルとしてアピールしました。
さらに1986年には、ポルシェ初代「911」のデザインに携わり、ポルシェデザイン社を創業したフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ氏が監修した「ミラージュ X1X」シリーズが加わりました。
X1Xは1.5リッターNA車とターボ車がラインナップされ、ボディは3ドアハッチバックのみで、専用にデザインされたステアリングやアルミホイール、ピレリ製タイヤ、スポーツシート、ブラック内装色の採用など、シックなスポーツコンパクトカーに仕立てられていました。
その後、1987年に3代目が登場し、さらなる高性能化が図られるなどスポーティなモデルとして代を重ねました。
※ ※ ※
「デザインは繰り返す」といいますが、クルマでも同様にデザインが繰り返されています。
たとえば、2022年6月に発売される日産新型「フェアレディZ」は、現代的にアレンジされているものの、歴代モデルのデザインエッセンスを採用しています。
また、現行モデルのスズキ4代目「ジムニー」も丸目のヘッドライトに直線基調のスクエアなフォルムは、初代や2代目を思わせるデザインです。
旧車を再現するようなデザインもありますが、細かい部分ごとに古いクルマをオマージュするのは、最近の流行となっているようです。
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