デザインがガラッと変わったケースも!? 往年の魅力的な「姉妹車」3選
クルマの種類を示す言葉のひとつに「姉妹車(兄弟車とも)」があります。姉妹車は主要なコンポーネンツを共有して開発されたモデルで、多くは販売チャネルよって分けて販売され、外観デザインはエンブレムや前後のデザインが異なる程度というのが一般的です。しかし、姉妹車として追加されたクルマのなかには、かなり大胆なモディファイがおこなわれたケースもあります。そこで、かなり魅力的な姉妹車を、3車種ピックアップして紹介します。
ボディに大胆な変更が加えられた魅力的な姉妹車を振り返る
クルマの種類についてはさまざまな呼び名がありますが、そのなかのひとつが姉妹車で、兄弟車と呼ばれることもあります。
日本の姉妹車は、各メーカーが複数の販売チャネルを展開していた頃に誕生し、2車種以上にまたがってプラットフォームと基本的なコンポーネンツを共有して開発されたモデルの愛称です。
ベースとなる車種が先にデビューして、あとから同様な車種が追加されたことから、姉妹、兄弟と呼ばれました。
複数の販売チャネルで同じクルマを販売するケースもありますが、かつては姉妹車として分けられるケースが多く、トヨタ「マークII/クレスタ/チェイサー」や、日産「セドリック/グロリア」などが代表的な例として挙げられます。
姉妹車同士では、フロントフェイスとリアまわりのデザインが異なる程度の変更が加えられる場合が定番ですが、なかにはまったく異なるほど大規模な変更がおこなわれた車種も存在します。
そこで、姉妹車でも大きく印象が異なる魅力的な往年のモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「スプリンター トレノ」
トヨタは1966年に、マイカー時代到来を見据えて開発された初代「カローラ」を発売しました。
その後、1968年に初代カローラのスポーティモデルとして2ドアファストバッククーペの「カローラ スプリンター」が登場し、1970年にはトヨタ「スプリンター」の名で独立したモデルに昇格しました。
さらに、1972年に高性能な派生車として初代「カローラレビン/スプリンタートレノ」が誕生。2代目レビン/トレノは当初ボディ形状がレビン=ハードトップ/トレノ=ファストバックと分かれましたが、後期型では統一され、3代目ではフロントフェイスとリアまわりの意匠が差別化されました。
そして、1983年にデビューした4代目「AE86/85型」では、レビンが固定式ヘッドライト、トレノがリトラクタブルライトのフロントフェイスと、大きくデザインが分かれ、どちらも魅力的な存在ですが、近年は人気マンガ、アニメの「頭文字D」の影響もあって、トレノに注目が集まっています。
スペックはレビン/トレノとも同一で、上位グレードには最高出力130馬力(グロス)を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHC「4A-GEU型」エンジンを搭載し、シリーズ最後のFRモデルとなったのは周知のとおりです。
5代目の「AE92/91型」でもAE86/85型と同じく固定式ヘッドライトとリトラクタブルライトに分かれましたが、リトラクタブルライトはこの代をもって最後となり、以降の6代目、7代目では若干の意匠変更に留まりました。
●日産「180SX」
日産は1988年に5代目「S13型 シルビア」を発売。スタイリッシュな2ドアクーペボディに、高性能エンジンを搭載したFRスポーツカーというコンセプトが見事に時代にマッチし、シリーズ屈指のヒット作になりました。
さらに日産はシルビアの姉妹車として、1989年に3ドアハッチバッククーペの「180SX」を発売。3代目と4代目シルビアには、販売チャネルが異なる「ガゼール」がラインナップされましたが、内外装のデザインは両車ともほぼ共通化されていました。
一方、180SXはシルビアとプラットフォームなど主要なコンポーネンツを共有していましたが、外装はシルビアが固定式の異形ヘッドライトだったのに対し、180SXはリトラクタブルヘッドライトを採用。
さらにノッチバックとハッチバックというボディ全体のシルエットやリアまわりのデザインもまったく異なる、完全な別車種として位置づけられていました。
180SXのエンジンは当初最高出力175馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボ「CA18DET型」のみでしたが、1991年のマイナーチェンジで205馬力を発揮する2リッターターボ「SR20DET型」と140馬力の2リッター自然吸気「SR20DE型」に換装され、足まわりはフロントがストラット、リアがマルチリンクと、シルビアと変わりません。
その後、1993年にシルビアは6代目の「S14型」にフルモデルチェンジしましたが、180SXは従来型のまま継続して販売され、改良がおこなわれながらフルモデルチェンジすることなくロングセラーとなり、1999年に生産を終了しました。
180SXの走りの実力はシルビアと対等であり、スタイルはユーザーの好みで分かれましたが、デートカーとして大人気だったシルビアに対し、スポーツカーそのものといったフォルムの180SXも、多くの若者から支持されました。
●三菱「エテルナ」
1969年に誕生した三菱「コルトギャラン」は、スタイリッシュなデザインと優れた走りの次世代型セダンとして大ヒットを記録しました。
その後、車名が「ギャラン」「ギャランΣ(シグマ)」と変わり、三菱のラインナップで、ミドルクラスセダンの中核を担いました。
そして、シリーズを通じて大きな転換期を迎えたのが1987年に登場した6代目です。世界ラリー選手権(WRC)に参戦する目的から高性能グレードの「ギャラン VR-4」が登場。実際にWRCをはじめとするモータースポーツで活躍して、ギャランのイメージが大きく変わりました。
そして、この6代目ギャランの姉妹車として1988年にデビューしたのが、4代目「エテルナ」です。
もともとギャランΣの姉妹車だったエテルナは、1979年に「ギャランΣエテルナ(後にΣエテルナ)」の車名で誕生し、ボディはギャランΣと同一で、前後の意匠が変更された程度でした。
一方、4代目エテルナのボディは、4ドアセダンのギャランに5ドアハッチバックのヨーロピアンなフォルムへと大きく変わり、フロントまわりとキャビンはギャランに準じたデザインとなっていますが、後部がハッチバックに作り替えられ、伸びやかなクーペスタイルとなっていました。
また、リアハッチに変更されたのに伴い、テールランプまわりも専用のデザインを採用し、雰囲気は大きく異なりました。
トップグレードはギャラン VR-4と同じパワートレインを搭載した「エテルナ ZR-4」で、最高出力205馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHCターボエンジンのフルタイム4WD車です。
高性能でスタイリッシュなエテルナでしたが、「5ドアハッチバックは売れない」という当時のジンクスを覆すことはできず、販売的には成功しませんでした。そのため、1989年には4ドアセダンでギャランから若干デザイン変更したモデル「エテルナSAVA」が追加されましたが、1992年に5代目にモデルチェンジすると、エテルナは4ドアセダンのみに一本化しました。
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近年は各メーカーとも販売チャネルがひとつに統合され、かつてのような姉妹車はレアなケースとなってしまいました。
最新の姉妹車というと、2022年1月に8年ぶりにフルモデルチェンジしたミドルサイズミニバン、トヨタ新型「ノア/ヴォクシー」が該当します。
従来モデルにあった「エスクァイア」は消滅し、ノア/ヴォクシーも販売店が同じ2タイプのデザインコンセプトの車種という扱いで、かつての姉妹車の関係とは若干異なります。
このままでは近い将来に、姉妹車/兄弟車という概念はなくなってしまうかもしれませんが、生産や販売の合理化という点を考えると仕方のないことなのかもしれません。
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