日産「エンジン開発終了」は本当か 欧州と日中米で方針異なる? 垣間見えた経営体質の変化

顧客第一主義に真正面から向き合う体制に

 このように、日産は「お客さま第一」を最優先する経営体制に変わったという印象が強くあります。

 過去十数年間の日産の歩みを振り返ってみると、ゴーン体制が進むなか、グローバルで規模拡大路線を強く打ち出したことで、新車の供給過多や生産工場の稼働率低下に陥り、例えばアメリカ市場では大幅な値引き販売によってディーラーの経営を圧迫してきました。

 また、製造台数と販売台数を追う体制のなかで、既存車の継続を優先する流れが生まれてしまい、新車の市場導入サイクルがかなり長くなっていました。

日産初の電気SUV「アリア」
日産初の電気SUV「アリア」

 内田社長体制のもとで事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を打ち出し、経営を「量から質へ」と大きく転換していきました。

 新車開発についても、約束した18か月で12モデル導入をしっかりと実現し、それらの新モデルは米国、中国、インドなど海外での販売が好調です。

 日本では「ノートシリーズ」が2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、販売も順調に推移しています。

 筆者(桃田健史)は長年にわたり、世界各国で日産を商品面や経営面など多角的な視点で定常的に取材してきましたが、この2年間で日産は明らかに大きく変わったという感想を持っています。

 今回の欧州向けICE新規開発終了についても、2022年1月27日に実施したルノー・日産・三菱連合の2030年に向けたロードマップ発表という大枠のなかで、しっかりと説明がつくと感じました。

 このところ、日本市場向けには輸入車のEV攻勢が強まっており、テスラの販売も拡大しています。

「リーフ」を擁して、日本はもとより世界に対しEV新時代を築いてきた日産ですが、新経営体制では、単にEV拡大路線を敷くのではなく、ユーザーの声、ディーラーの声に真摯に向き合いながら、市場全体に対するベストソリューションを提案する姿勢が明確になってきました。

 日本の日産ラインナップでは当面、第2世代e-POWERがパワーユニットの中核となり、市場の期待が高い次期エクストレイルを含めたさまざまなモデルに搭載されることでしょう。

 さらには新型「アリア」に継ぐ、日産らしいさまざまな新型EVにも今から期待が高まります。

【画像】日産初の電気SUV「アリア」の全容をもっと見る(27枚)

まさか自分のクルマが… 高級外車のような超高音質にできるとっておきの方法を見る!

画像ギャラリー

Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

1 2

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

4件のコメント

  1. そもそも
    ユーロ7自体がICE単体ではクリアするのが到底困難な電動化シフトありきの無茶振り規制方針であり
    クリアしたとしてもその先、欧州での販売可能な期間さえも絞られてきてる
    開発費を投入するのに見合わないのは明らかで、
    既にメルセデスベンツも欧州では終了する事を表明している。
    各社とも投資に見合わないから欧州向けのICE開発からは手を引くつもりなのは既定路線だろう、
    今になって日産が表立って表明したこと自体は別段驚く事ではないし、
    欧州以外では各国の規制事情に合わせつつ利潤があるならば販売し続ける姿勢だよね。
    企業として利益率を考えれば当然の話
    まるで完全にエンジン開発止めていきなり放棄したかのように
    エンジン開発終了ばかりを強調する報道が見られるのはは恣意的で頂けないね。

  2. 自動車メーカーの中で、エンジン開発を完全にやめたのはヒュンダイくらいじゃない?
    ちなみに、ホンダは開発は縮小するがやめないって言ってる。

  3. ヨーロッパだけでしか売らないのなら分かるがアフリカでも売ろうと思えば、まともな常識があれば少なくとも四半世紀はエンジン開発しないと商売にならないだろうな。
    現状電池の性能、充電ポイントが半径100km以内には必要だし砂漠のど真ん中に作れるわけでも無いだろう。
    治安も考えれば内陸部は500km~1000kmに1つぐらいがせいぜいだろうし、電動車の航続距離もカタログで最低1200kmぐらいはないと乗れないし、充電が切れて次に何をして動かすか?話になるわな。

  4. 内燃機関の乗り物は燃料が手に入る前提でしょうし、宇宙船の中や惑星・衛星の上では風力やソーラー発電で発電・充電可能となるとモーターの開発のほうが良いのでしょうね。でも、自動車メーカーに開発を期待したいのは、ありふれたモーターよりも電欠の心配を忘れられる小型の核融合発電か永久機関でしょうね。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー