まさに時代に合わせたエボリューション! シリーズ初となったFF車3選
何度もフルモデルチェンジを重ね、長い歴史を刻んできたクルマの場合、あるタイミングで大きな転機を迎えるケースがあります。そこで、フルモデルチェンジによってFRからFFという、まさに革新的な変化を経験したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
時代のニーズに合わせて駆動方式が変わったクルマを振り返る
誕生から数十年もの間にフルモデルチェンジを何度も続けるような、長い歴史を刻んできたクルマがあります。そうしたクルマのなかには、変わらないことを是とするモデルがある一方で、あるタイミングで大きな転機を迎えたモデルも存在します。
フルモデルチェンジといってもメーカーや車種によってさまざまなケースがあり、一見するとフルモデルチェンジとは思えないクルマや、デザインだけでなくプラットフォームやエンジンも刷新するような、大規模な変化を伴うフルモデルチェンジもあります。
そしてフルモデルチェンジによってそれまでにないほど革新的な変化があった例として、駆動方式が変わったモデルが存在。
そこで、かつて駆動方式がFRからFFへと移行するような大規模なフルモデルチェンジをおこなったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●マツダ5代目「ファミリア」
マツダは1963年に初代「ファミリア」を発売しました。その名のとおり「家族が揃ってドライブへ行く」という想いをこめた命名の大衆車で、当初はバンとしてデビューしましたが、翌1964年にはイタリアのデザイン工房「ベルトーネ」がデザインしたスタイリッシュなセダンが加わりました。
その後、1967年に2代目が登場し、1968年にはロータリーエンジンを搭載した「ファミリア ロータリークーペ」が追加ラインナップされ、1969年にはセダンにもロータリーエンジンが搭載されるなど、大衆車路線と平行して若者に訴求するスポーティカーへと変貌を遂げました。
3代目では全体のフォルムは2代目からそのままに、全車レシプロエンジンを搭載したオーソドックスな大衆車へと回帰。1977年に発売された4代目は、FRを継承しつつ小型車で流行していた2ボックススタイルの3ドア/5ドアハッチバックへと一新されました。
4代目ファミリアは国産車初の4ドア+ハッチバックのボディによる使い勝手の良さと、優れた経済性から好調なセールスを記録しましたが、同クラスのライバルとしてFF車が台頭すると、室内空間の広さなどの点でアドバンテージが失われつつありました。
そこで、1980年に登場した5代目では時代の流れから駆動方式がFF化され、さらにハッチバックだけでなく4ドアセダンが復活しました。
5代目は直線基調のシャープなデザインに一新され、充実した装備に利便性や快適性を重視した設計と、イメージカラーに赤を設定して「赤いファミリア」というキャッチコピーも当たり、若者を中心に大ヒットを記録。
高く評価された5代目ファミリアは、記念すべき第1回日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。
●トヨタ5代目「カローラ」
トヨタは1966年に、マイカー時代到来に向けて開発した大衆車の初代「カローラ」を発売しました。
前年に発売された日産(ダットサン)「サニー」に対して100ccアップした1.1リッターエンジンを搭載し、ボディもやや大型化していたことも功を奏してヒット作となり、日本を代表する大衆車として代を重ねていきました。
カローラは大きくコンセプトを変えずにフルモデルチェンジを繰り返しましたが、やはり同クラスのクルマが世界的にもFF化している潮流は見逃せず、1983年に登場した5代目はこれまでにない大規模なモデルチェンジがおこなわれ、セダン系モデルがFF化されました。
一方、クーペ系はFRのままで、後に名車と呼ばれることになる「AE86型 カローラレビン」も誕生しました。
初のFFカローラは4ドアセダンと5ドアハッチバックの「リフトバック」という2タイプのボディラインナップで、エンジンも4代目までの前時代的なOHVからSOHCへ刷新。
また1984年には、3ドアハッチバックの「カローラFX」と同時にセダンに高性能モデルの「1600GT」が加わりました。
1600GTのエンジンはAE86型レビン用に開発された1.6リッター直列4気筒DOHC「4A-GEU型」を横置き用に改良した「4A-GELU型」で、最高出力130馬力を発揮し、FFスポーツセダンとして若者にも訴求しました。
その後、1987年に6代目にフルモデルチェンジするとレビンも含め全車FF化され、現在に至ります。
●日産7代目「ブルーバード」
日産のミドルクラスセダン「ブルーバード」は1959年に誕生し、以来、サニーや「スカイライン」「セドリック/グロリア」などと並び、ラインナップの中核を担う重要なモデルとして、代を重ねました。
1967年に登場した3代目の「510型」は、日本のみならずアメリカでもヒットし、日産の本格的な世界進出への礎にもなり、1979年に登場した6代目「910型」は、直線基調のボディデザインとシリーズ初のターボエンジンを搭載し、優れた操縦性のFR車として高く評価され、シリーズ最高の大ヒットとなりました。
そして、1983年に発売された7代目ブルーバードでは、初代から続いたFRからFFに変更するという大きな転換期を迎えました。
プラットフォームやエンジンを一新した一方で、外観は大ヒットした910型のデザインを踏襲した直線基調のままで、ある意味過渡期のモデルだったといえるでしょう。
また、510型から910型まで続いていた2ドアクーペが廃止となり、セダン系とステーションワゴン、バンにボディタイプが絞られました。
その後、角を丸くしたデザインが流行となっていくなか7代目のデザインは時代遅れ感が否めず、1987年の8代目ではより洗練されたデザインとなり、さらに大幅な高性能化を果たしました。
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FRからFFになったクルマはほかにも存在し、たとえばトヨタでは「スターレット」「セリカ」「カリーナ」「コロナ」などで、日産は「バイオレット3兄弟」「セフィーロ」「エルグランド」「セレナ」など。
マツダは「カペラ」、三菱は「デボネア」「ミニカ」「ランサー」「ギャラン」などがFF化し、スズキ「セルボ」はRRからFFに大胆な変更がおこなわれました。
また、海外メーカーではBMW「1シリーズ」が、2019年に登場した3代目からFFとなって大いに話題となりました。ほかにもボルボとアルファ ロメオがほぼすべてのラインナップをFF化していますが、アルファ ロメオは現行モデルの「ジュリア」が、前身の「159」がFFだったのに対してFRを採用した珍しいケースもあります。
ちなみにBMWは3代目1シリーズの発売前に、2代目までの1シリーズオーナーに調査をおこなったところ、8割の人が自分のクルマの駆動方式を知らなかったといいますから、スポーツカーでない限りは多くの人は駆動方式に関心がないようです。
910は最初からFFですよ。
910までFRですよ