MT車が若者から熱い支持!? EVシフトで消滅寸前! いまあえて自動車メーカーがMT車を設定する理由とは
EVシフトでMTはいずれ消滅する運命!?
そもそも、乗用車が一般家庭に普及し始めた1960年代の高度成長期では、MT車は当たり前の存在でした。
日本車のエンジン排気量は小型でありパワーやトルクが低く、またブレーキやタイヤの性能は現代と比べるとかなり低かったため、手動変速によって加速での出足とエンジンブレーキを併用した減速をMTでドライバー自らがコントロールする必要があったのです。
それが1970年代に入ると、「トルコンAT(トルクコンバーター)は運転が楽だ」とか、「先進国のアメリカでは自動変速は当たり前だ」といった風潮が日本で広まり始めました。
筆者はその当時、日系大手メーカーのトルコン車を実際に運転していますが、出足はかなりゆったりした印象でしたし、登場して間もなかったパワステも手ごたえ感がかなり軽く感じました。
時は流れて、AT限定免許が登場して日本車でもATが当たり前となり、MTによる手動変速は「面倒なこと」とか「操作が難しいこと」といったイメージが世間に広まっていきます。
また、いわゆるスーパーカーでもMT車はどんどん消えていき、残ったのはスバル「WRX STI」やホンダの「タイプR」、ロードスターなど日本を代表するスポーツカーという時代に入ってきました。
では、今後MT車はどうなっていくのでしょうか。
残念ながら、ある時期を境に一気に消滅する可能性が極めて高いといわざるを得ません。
理由は、クルマの電動化・EV化です。
2050年カーボンニュートラルに向けて、各メーカーがパワートレインの電動化を推進していますが、例えばホンダは「2040年にブローバルで新車100%をEVまたはFCV(燃料電池車)」を公式に宣言しています。
EV専用プラットフォームと専用モーター・制御機能が当たり前の時代になれば、MT車が存在できる場所はなくなってしまいます。
唯一考えられるのは、サーキットなどクローズドエリアでのレースカーや、旧車を楽しむ走行会でしょう。
こうした時代の流れを、若い世代ほど敏感に感じ取れるのかもしれません。
また、長年クルマを愛してきた中高年層では、「終(つい)のくるま」としてMT車という選択肢もあるように感じます。
MT車の最後の花道になるであろう2020年代に、MT車との思い出づくりをしようと思っている人が、日本でも一定数いるのだと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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