日本からロールスで「ペブルビーチ」にエントリー 世界有数のコンクールの裏側とは

「ペブルビーチ」では実際にどのような審査がなされているのか?

 ワクイミュージアムの涌井清春館長、そして同ミュージアム創立メンバーである筆者にとっても2年越しの期待が込められていた「第70回ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」。ところが8月15日のコンクール会場に歩みを進めることができたのは、6月中旬にアメリカに向けて船積みしたロールス・ロイスだけとなってしまった。

審査のさなかにトップを降ろし、美しいスタイルをアピール
審査のさなかにトップを降ろし、美しいスタイルをアピール

●ロールス・ロイスの識者から高い評価を受けるも……

 コンクール当日、愛車に乗るはずの涌井夫妻、あるいは2019年と同じく今回も随行を予定していた筆者もCOVID-19ワクチンを早めに接種し、いわゆる「ワクチンパスポート」を取得するなどの準備をギリギリまで進めてはいたものの、やはり現地における新型コロナ禍に対する情勢(陰性証明の取得や自主隔離の有無など)に不確定要素が多かったことから、今回の渡米は断念せざるを得なくなってしまった。

 しかし、ペブルビーチ・コンクールのオーガナイザーであるマーティン・バトン氏は、遠く日本からエントリーした涌井氏に最高の配慮を図ってくれた。

 バトン氏は、ロールス・ロイス/ベントレーの識者として国際的に知られるとともに、ペブルビーチ・コンクールで「ロールス・ロイス」クラスないしは「ベントレー」クラスが成立した際には必ず「ジャッジ(Judge=審査員)」の一員に選ばれる女性、ダイアン・ブランドン氏を指名。涌井氏のファントムIIコンチネンタルをコンクール会場に設置するまでのハンドリングや、日曜日の審査におけるジャッジ陣との応対を担当していただくよう手配したというのだ。

 また、もしも「クラスH:戦前のロールス・ロイス」部門の上位3台に入賞することができて、コンクール当日午後の表彰セレモニーにてメインステージに登壇することがあれば、彼女が運転してプレゼンテーションを代行する約束も、バトン氏は取りつけてくれていた。

 この約束どおり、大会前日にエントリー車両を受け取ったダイアン氏は、会場での進捗状況を涌井氏に知らせるメールにて「このクルマは完璧で内外装、機関の好調さまで含めて“正しいファントムII”であり、大きな関心を呼ぶでしょう」と述べている。

 ところが、世界屈指のコンクール・デレガンスであるペブルビーチにおいては、たとえ欧米の著名コレクターたちであっても何度も何度も挑戦して、ようやくメインステージに愛車を進めることができる……、というのがセオリー。残念ながら、まだ2度目のチャレンジである涌井氏のファントムIIコンチネンタルが、10台以上が参加したクラスHで入賞するという夢は果たすことなく終わってしまった。

 とはいえ、今回ダイアン・ブランドン氏とのコンタクトを得たことによって、これまで徒手空拳だったペブルビーチ・コンクールにおける心構え、たとえばエントリー車両の仕立て方や、会場における立ち振る舞いの方法なども知ることができたのは、大きな収穫。なによりペブルビーチ・コンクールにかかわる人々の親切な真心に触れられたことは、涌井氏にとって最高の僥倖だったようだ。

 来る2022年の「第71回ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」に、ロールス・ロイスないしはベントレーのクラスが設定されるかどうかは、現時点では不明である。また、ペブルビーチ出品にはかなりのエネルギーを要することから、涌井氏も今後のエントリーについてはまだ決定には至っていない。

 でも、今年は現場に行くことができなかった捲土重来を期して、加えてまだ直接お会いしたことのないブランドン氏に、今回お世話になったお礼をするためにも、なんとか来年以降もチャレンジを継続していただきたいと願っているのである。

【画像】狭き門「ペブルビーチ」での厳しい審査とは(18枚)

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1件のコメント

  1. 涌井清治氏は買い付けに行った欧米で日本には車がどこに行ったか分からなくなるから売りたくないと言われ日本人の誇りにかけてベントレー、ロールスロイスのコレクションとそれを公開する場を採算度外視で作り上げた人物。御年70を過ぎてその情熱は凄い。お会いしてこんな人物が日本にいることを感謝した。涌井氏の最高のコレクションがいつの日か正当に評価されべブルビーチにおいて氏の晴れ姿が見られる日を楽しみに待ちたい。By九州の田舎のささやかなRRコレクター(コーニッシュ&ロードスター)

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