ゴツいところがカッコイイ! クロカン4WDブームを支えた初代「パジェロ」を振り返る

昨今の世界的にSUVブームが続いていますが、前輪駆動の都市型モデルが増加するなど多様化が進んでいるのは周知のとおり。そんなSUVですが、日本での歴史を紐解くと1990年代にはステーションワゴンやミニバンを含めたRVブームが、さらに遡ると1980年代後半にはクロカン4WDブームがありました。日本でSUVという呼称が定着する前の時代です。そこで、1980年代のクロカン4WDブームを支えた1台である、三菱初代「パジェロ」を振り返ります。

誰もが乗用車感覚で使える、まったく新しい多目的4WD車として誕生

 現在、世界的にSUVブームが続いており、さまざまなニーズに対応するように多様化も進んでいます。

 このSUVの先祖にあたるのが悪路走破性に特化したクロスカントリー4WD車や、4WDのピックアップトラックで、日本では1980年代の後半にクロカン車人気が上昇し、ちょっとしたブームにまで発展。

 そのブームをけん引した1台が、1982年に誕生した三菱初代「パジェロ」です。

クロカン車ならではの質実剛健なイメージがカッコイイ初代「パジェロ」
クロカン車ならではの質実剛健なイメージがカッコイイ初代「パジェロ」

 初代パジェロの登場以前からトヨタ「ランドクルーザー 40系」や日産「サファリ」など、当時表現されていた“多目的4WD車”は一定の支持を受けており、市場が拡大傾向にありました。

 そんななか、初代パジェロは乗用車感覚で使いこなせる新しい多目的4WDとして登場。ちなみに初代パジェロが誕生した1982年(昭和57年)は、東北&上越新幹線が開業したほか、500円硬貨の発行。テレホンカードの使用が始まり、ソニーから世界初のCDプレーヤーが発売されました。

 TV番組ではタモリが司会を務める『笑っていいとも!』の放映がスタート(2014年3月終了)。TVやラジオからは『北酒場(細川たかし)』や『待つわ(あみん)』などがよく流れていた年です。

 三菱は当時拡大傾向にあったクロカン4WD市場に、前年に開催された第24回東京モーターショーで参考出品され好評を得た「パジェロ」を市販化。30年の歴史を持つ「ジープ」やライトトラックの「フォルテ」に続く4WDシリーズの拡充を図りました。

 パジェロの開発にあたり同社は、「乗用車ユーザーにも抵抗なく受け入れられるスタイリッシュで機能的なデザイン」「抜群の悪路走破性と信頼性を備えた全く新しい多目的4WD車」「乗用車感覚あふれる多目的4WD車として誰もが使いこなせる乗用車並みの快適性や操作性」を目標に掲げました。

 さらに4WD車として日本で初めてディーゼルターボエンジンを搭載したことは、パジェロの誕生をよりインパクトの強いものにしました。

 インパネは乗用車然としたデザインですが、前面には乗員の安全に配慮したパッドを装着したほか、ディーゼルターボ車には助手席側の上部にアシストグリップを装着したり、傾斜計・油圧計・電圧計の3連メーターをインパネ中央に配置し、悪路での安心・安全な走行に配慮。

 フロントシートはホールド性の高いバケットタイプで、運転席には4WD車としては日本初となるサスペンションシートを採用。このシートにはショックアブソーバーを内蔵したパンタグラフ機構が用いられており、車体の振動をドライバーに直接伝えないようにするため、疲労を軽減させるとともに快適な乗り心地を実現するものです。

 エンジンは最高出力95馬力、最大トルク18.5kg・mを発揮する2.3リッター直列4気筒ディーゼルターボ(4D55型)と、そのターボレス仕様(75馬力/15.0kg・m)、110馬力、16.7kg・mを発揮する2リッター直列4気筒ガソリンエンジン(G63B型)の3機種を設定。

 いずれのエンジンもメタルトップ仕様とキャンバストップ仕様の両方でラインナップされ、トランスミッションは全機種で5速MTを組み合わせています。

 トランスファーレバーのシフトパターンは、4輪駆動でハイとローの切り替えができる2スピードパートタイム方式。トランスファーは直結型のため、後輪に駆動力を伝える際はダイレクト結合され、前輪への伝達はサイレントチェーンを介しているため、パワーロスが少なく静粛性も高いものでした。

 サスペンションは、フロントにダブルウイッシュボーン、リアにリーフリジッドを採用。フロントはトーションバースプリングを組み合わせた独立懸架で、スタビライザーの装着により快適な乗り心地や高速安定性、そして優れた悪路走破性を発揮しました。メタルトップのディーゼルターボ車にはさらに、パワーステアリングを採用しています。

 1982年から1991年まで約9年間販売された初代パジェロですが、発売翌年の1983年にはメタルトップ仕様に145馬力を発揮するガソリンターボ搭載車が設定され、「国産クロカン4WD最速」の称号を得ました。

 そして1985年にはディーゼルターボ車に4速AT仕様が追加。さらに1988年にはインタークーラーを備えた2.5リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジン(94馬力/23.0kg・m)と、3リッターV型6気筒ガソリンエンジン(150馬力/23.5kg・mを発揮)を搭載し、普段使いにおける高速性能を強化。

 1989年の改良では、オーバーフェンダーやワイドタイヤを装着するワイドシリーズを設定するなど、進化を重ね、その後、1991年に発表された2代目へとバトンタッチされました。

 パジェロはデビュー翌年の1983年からパリ・ダカールラリーに投入されました。1983年と1984年はクラス優勝、そして1985年にはプロトタイプで1-2フィニッシュを飾り、タフな走りをアピール。

 ラリーでの活躍はパジェロのプレゼンスを飛躍的に高め、RVブームにおける存在感の向上につながったといえます。

※ ※ ※

 2019年に、パジェロは4代目をもって国内向けの生産を終了。そして、2021年7月にはパジェロの生産をおこなっていた「パジェロ製造」の閉鎖に伴い海外向けも含め完全に生産を終え、39年間もの長い歴史に幕を下ろしました。

 販売台数の低迷だけでなくさまざまな要因が重なったことにより、生産を終える決断があったのでしょう。

 しかし、同様なクロカン車であるランドクルーザーや日産「パトロール」が、グローバルで好調なセールスを記録していることを考えると、パジェロでもまだできることかあったのかもしれません。

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1件のコメント

  1. 時代も変わったものですね。
    パジェロが出たときは「ゴツくない四駆」「スタイリッシュな四駆」だったんですから。

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