何が違う? トヨタ新型「ランクル」はGRスポーツが良い? 外観だけじゃないGR仕様のスゴさとは

標準仕様(ZX)とGRスポーツでは何かが違う?

 実は走り初めて「あれっ?」と思うことがありました。それは発進時にZXよりも僅かに力強さを感じたことです。

 パワートレインは同じなので、「ZXより軽いのかな?」とも思いましたが、車両重量はむしろGRスポーツのほうが重いのです(ガソリン+20kg、ディーゼル+10kg)。

 何とも狐につままれた感じですが、筆者(山本シンヤ)はZXから2インチダウンされたタイヤ&ホイールの軽さから来る転がり始めの良さに加えて、ZXより引き締められたサスペンションでピッチング方向の姿勢変化が抑えられたことで、アクセル操作から発進までの一連の動きのロスが減ったと分析しています。

 フットワークはZXでもラダーフレームであることを感じさせない一体感のあるハンドリングと直進安定性、乗り心地の良さは実感していますが、GRスポーツはそれらの精度がより高められた印象です。

 具体的にはステア系はギアの隙間が埋まったかのような精度の高さやいいベアリングを使っているかのような滑らかさなどがZXと共通ですが、タイヤの情報がより伝わりやすく、直結感が高くなっています。

 最初は「ステアリングの皮を薄くしたのかな?」とも思いましたが、開発陣に聞くと「ステアリングは共通です」と説明。

 ハンドリングは基本素性の刷新でZXでも無駄な動きが抑えた走りを実現していますが、GRスポーツはそれが1ランク上のレベルにあります。

 この辺りは筆者がランクルらしさを感じる要素のひとつだと考えている「心地よいダルさ」を抑えたことで、よりダイレクト、よりレスポンシブ、よりコントローラブルになっており、クルマがより小さく、より軽くなったかような印象となり、一体感が増しているように感じました。

 ただ、勘違いしてほしくないのは単純に各部を「スポーティ=硬め」でなく、「無駄な動きは極力抑えるが、動かす所はシッカリ動かす」といった最新のスポーツモデルのそれと同じ考えであることです。

 そういう意味では、GRスポーツ専用のサスペンションセットアップに加えて、スタビライザー効果を細かく制御できるE-KDSSの効果も大きいはずです。

トヨタ新型「ランクル300」に設定された「GR SPORT」は性能面で何が違うのか?
トヨタ新型「ランクル300」に設定された「GR SPORT」は性能面で何が違うのか?

 ちなみにZXに乗ったときに感じたコーナリング時に凹凸を超えるような状況でいくつか条件が重なるとリアタイヤが左右にズレるような感覚は、GRスポーツは今回の試乗では一度も出ませんでした。

 開発陣にその印象を伝えると、日本向けのZXは音/振動対策でタイヤのサイドウォールが柔らかい設定になっており、それが悪さをしているそうです。逆をいえば、GRスポーツは操安性重視のためネガは出なかったと思われます。

 乗り心地は、ZXに比べると引き締められたセットアップなので街中では硬めの印象ですが、18インチによりバネ下が軽くなったタイヤ&ホイールとシットリではなくスッキリと動くサスペンションの相乗効果なのか、高速域ではバネ上の落ちつきはZXより高いと感じました。

 ちなみにGRスポーツにもドライブモードセレクトが用意されていますが、街中は「ノーマル」、ワインディングは「スポーツ+」、そして高速は「カスタム」を選択してパワートレイン「ECOもしくはノーマル」、サスペンション「スポーツ」がおススメです。

 パワートレインはどちらもパフォーマンス的には十分以上ですが、GRスポーツの走りのキャラクターを踏まえると、ガソリン車の軽快でシュンと回るフィーリングのほうがマッチしているように感じました。

 ただ、燃費の面では10km/Lを軽く超えるディーゼルが圧倒的に優れるので悩ましい所です。

※ ※ ※

 GRスポーツは「ちょっとスポーティなランクル」ではなく、道なき道でも自由に走れるという「ランクルの本来の姿」をよりピュアに表現したモデルだと感じました。

 今回はオンロードのみの試乗なので、ダカールラリーからのフィードバックにより鍛えられた圧倒的なオフロード性能のチェックはお預けですが、乗っていて「フラットダートで振り回したら楽しそうだな」、「ジャンプした時の着地は綺麗に決まりそうな」と想像している自分がいました。

 つまり、通常走行でも極限状態の走りを想像し、ワクワクできるという意味では、「GRヤリス」と同じDNAがランクルGRスポーツにも宿っていると感じました。

 これはGRの「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」がブレていない証拠でしょう。

 価格は、ZXの40万円高でランクル300系のなかではもっとも高額なモデルとなりますが、「本物の中の本物」という意味では、その価値は十分にあると思っています。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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