進化? 原点回帰? トヨタ新型「ランドクルーザー」は想像以上におもしろい! まさに「The Bestランクル」か
新型ランクル、走りの部分は何が変わった?
走行に関する部分で、大きく変わったのがドライビングポジションです。
200系までのランドクルーザーは、ゆったりとしたポジションながらも、どちらかというと家庭の椅子に近い姿勢で座るものでした。
これはクロスカントリー4WDの伝統的なもので、身体が飛び跳ねてしまうような激しい悪路でも、真上からしっかりと足で踏ん張れて、かつステアリングを確実に操作するためのものでした。巷でコマンドポジションなどといわれています。
300系ではこれをあえて覆しています。というのも、300系の大きなテーマのひとつとして「ラクに運転できる」というものがあるからです。
コマンドポジションは長時間運転していると疲労が溜まり、運転席から降りた時には脚に痛みを感じることさえあります。
300系は脚を前方に投げ出す「乗用車スタイル」を採用。かつての「ハイラックスサーフ」に近いドライビングポジションになりました。
それでいて、悪路でもしっかりと脚が踏ん張れるように、床面の前方がフットレスト状にせり上がっているのは、さすがランドクルーザーです。
ステアリングも、実に軽い力で操作できるようになりました。信頼性、耐久性を考えて、従来同様の油圧式を採用していますが、これに電気式のアクチュエーターでサポートさせることで、軽い操舵感を実現。
正直、この新機構にそれほど注目していませんでしたが、一般道を少し走っただけでも、その効果のほどが分かります。
例えば展開時や車庫入れ、縦列駐車などが非常に楽になり、200系で感じていたような車両の大きさ感さえ軽減されています。
さて、300系の大きなトピックスのひとつが、パワーユニットの一新です。まずガソリンエンジンは4.6リッターV型8気筒自然吸気から、3.5リッターV型6気筒ツインターボに改められました。新たに3.3リッターV型6気筒ツインターボのディーゼルエンジンも選択することができます。
両ユニットともいわゆるダウンサイジングエンジンで、4リッタークラスのスペックを発揮しますが、小さくなったことで別のメリットを生んでいます。例えば、前述のドライビングポジションもそうですし、軽量化や安全性の向上にも繋がっています。
V6エンジンというと、どうも“軽い”感じがしますが、乗ってみると印象は大きく変わりました。
まずガソリンエンジンですが、イマドキのダウンサイジング系ターボとは少し違うフィーリングになっています。
ターボよって鋭い加速を見せるというよりは、過給をあまり感じさせずに上まで力強く伸びる感じです。
オフロードにおいては、トルクの変動が時として邪魔になることを考慮してのことと思いますが、脳裏には別なことが浮かびました。
それは、56型や60系に搭載されていた2F型直列6気筒エンジンのフィーリングにどこか似ているということです。
ランクル好きには、その後に登場する3F型や3F-E型、1FZ-FE型よりも人気があり、直列6気筒の良さが素直に出ていたエンジンでした。フィーリングが旧モデルにどこか似ているという点では、新ディーゼルエンジンも同様です。
新ディーゼルエンジンは、スペックも環境性能もいかにも現代的なエンジンです。
しかし、ひとたびアクセルをグッと開けると、思いも寄らぬワイルドな顔を覗かせます。
そのエンジン音、加速は80系に搭載されていた1HZ型を彷彿させます。トヨタのことですから、もっと静粛性を向上させることもできたでしょうが、外連味としてこうした部分を“演出”したようにも思えてしまいます。
こういう五感で感じる部分も「ランドクルーザーだ!」という意識を持って開発していたとしたら、それはもはや脱帽です。
ただワイルドで楽しいフィーリングだけでなく、両ユニットとも10速ATと組み合わされたことで、通常の運転をすれば非常にスムーズかつ快適な走りを見せてくれるのは、やはり新型の由縁です。
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