進化? 原点回帰? トヨタ新型「ランドクルーザー」は想像以上におもしろい! まさに「The Bestランクル」か
300系は「The Bestランクル」か その進化はどうなった?
一方、300系が素晴らしいと思えるのは、走行シーンで感じるさまざまな革新性です。
まず、新型は従来型よりも約200kgも軽量化し、反対に剛性は20%アップしているとしています。
とくに軽さはガソリン、ディーゼルとも走り出した瞬間に感じる部分で、エンジンの回転がかなり上がって発進するというようなことは皆無です。
人間の五感とは不思議なもので、軽さを感じると大きささえ気にならなくなります。200系とボディサイズはほぼ同じですが、日本の道では持て余すような感覚がかなり軽減されました。
さて、走りの変革という点で大きく寄与しているのが、新開発のリアサスペンション。
「運転しやすく、疲れない」という開発テーマのなかでの目玉のひとつです。まず従来型のサスペンションですが、ラダーフレームとの位置関係により、ダンパーが「ハ」の字になって取り付けられていました。
基本的にダンパーが傾けば、筒内のピストンにフリクションのロスが出やすくなりますし、ホーシングによって結ばれた左右輪の動きも規制されます。
300系はダンパーをより立てた状態に改善し、ジオメトリーの適正化、トラベル量の増加を実現しました。
これによりオンロードでは路面追従性が大幅に向上し、リジッドアクスル式サスペンションのクルマにありがちな“ドタバタ感”や“ひきづり感”が見事に解消されています。
クロスカントリー4WDなら当然と思っていた操舵後の挙動の遅れがなく、レーンチェンジもイマドキのSUVのようにスッと決まります。もはや運転時に理解しなければならないクセは、ほぼありません。
スラロームのような走行シーンでも、リアサスが付いてこられずに、タイヤが悲鳴を上げてしまうということがありませんでした。
長年、ラダーフレーム+リジッドアクスル式サスペンションのクルマに乗ってきた人にこそ、300系の素性の良さはすぐに理解できるはずです。
ちなみに、このリアサスの配置を実施するために、ラダーフレームの一部を凹ませているというのです。
オフロード走行は試せていませんが、ホイールアーティキュレーションが格段に向上しているということでしたので、モーグルやステアケースといった地形での走破性が段違いであることが予想されます。
また、「GRスポーツ」には、18インチサイズのタイヤ装着に加えて、E-KDSSというフロントスタビライザーの動きを制御する電子デバイスが採用されているので、さらなるオフロード性能が期待できそうです。
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ランドクルーザーには、70年前から造り続けてきた人々の想いが、ギュッと濃縮されたような、先人達が目指したクロスカントリー4WDの理想が、ランドクルーザーの歴史的遺産と共に300系で昇華した感があります。
とくに評価したいのは、300系でもラダーフレーム構造とリアリジッドアクスル式サスペンションを踏襲したことです。
いくら理論上は十分な強度を持っていると謳っても、やはりモノコックボディやインディペンデンスサスペンションでは、信頼性と耐久性の点で懐疑的にならざるを得ません。
そういう点で300系は、クロスカントリー4WDに必要な基本性能と理想を完全に両立させたといえます。
誤解を恐れにいえば、まさに「The Bestランクル」なのではないでしょうか。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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