車は見かけによらぬもの? かなりの実力派だった車3選
クルマの外観を見れば、そのクルマがどういう用途で開発されたのか、どんなジャンルかが推し量れます。しかし、見た目からはすぐに判断できないような、高いポテンシャルを秘めたモデルも存在。そこで、じつはかなりの実力派だったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
高いポテンシャルを秘めたクルマを振り返る
スポーツカーならば見るからに速そうなフォルム、クロカン車なら車高が高くて無骨、ミニバンならショートノーズで大きいキャビンと、クルマのキャラクターは見た目でも判断できます。
しかし、「人は見かけによらぬもの」ということわざがあるように、クルマでも見た目だけで中身やポテンシャルを判断できないモデルもあります。
かつて、見た目は普通のクルマながら、高性能なエンジンや優れた足まわりを搭載したモデルを「羊の皮を被った狼」と呼びましたが、近頃は耳にすることもなくなってしまいました。
しかし、ちょっと探してみると、高いポテンシャルを秘めたクルマも存在。
そこで、じつはかなりの実力派だったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「エアトレック ターボR」
現在、三菱のラインナップで主力はSUVです。なかでもクロスオーバーSUVとして人気の「アウトランダー」がありますが、その前身といえるモデルが2001年に誕生した「エアトレック」です。
エアトレックはオンロードでの走行性能を重視したクロスオーバーSUVで、ステーションワゴンタイプのボディは角が丸くボリューム感のあるデザインを採用。
ボディサイズは全長4410mm×全幅1750mm×全高1550mmと、低めの全高で使い勝手も優れていました。
エンジンは2リッター直列4気筒と2.4リッター直列4気筒GDI(直噴)をラインナップし、トランスミッションはマニュアルシフトが可能な4速ATのみ。駆動方式は4WDだけでなくFFの2WDも設定されました。
そして、2002年にエアトレックの走行性能を高めた高性能グレードとして「ターボR」が登場。
ターボRのエンジンは、「ランサーエボリューション」シリーズの第1世代から第3世代まで搭載されていた高性能な2リッター直列4気筒ターボ「4G63型」と同型で、最高出力は240馬力に抑えられ低回転域からフラットなトルクで扱いやすい特性とされました。
また、トランスミッションも専用で「ランサーエボリューションVII GT-A」で採用したスポーツモード付5速ATをベースにギア比が最適化され、水冷式と空冷式のふたつのATFクーラーを装備してスポーツドライビングに対応。
外観でスタンダードモデルとの違いは、ボンネット上のインタークーラーへ導風するエアスクープくらいで、派手なエアロパーツなどは装着されていません。
一方で、ブレーキは4輪ディスク化とともにフロントに2ポッドキャリパーが奢られ、足まわりでは10mmローダウンの強化スプリングとショックアブソーバーの減衰力向上、さらに前後スタビライザーも専用です。
同様にSUVにハイパワーなエンジンを搭載する例は他メーカーにもありましたが、エアトレック ターボRは入念につくり込まれていたといえます。
しかも価格は229万5000円(消費税含まず)と、内容を考えるとかなりお買い得だったのではないでしょうか。
●ダイハツ「ビーゴ」
ダイハツは軽自動車とコンパクトカーに特化したメーカーですが、かつて「タフト」「ロッキー」「ラガー」という本格的なクロカン車を販売しており、その末裔といえるモデルが2006年に登場した「ビーゴ」です。
ビーゴは1997年に発売されたSUV「テリオス」の後継車で、コンセプトも継承。ボディサイズは全長3995mm×全幅1695mm×全高1705mmとコンパクトです。
一見するとビーゴはトールワゴンタイプのクロスオーバーSUVですが、他メーカーの同様なモデルと大きく異なるのがシャシで、ラダーフレーム状の構造体をモノコックシャシと結合させた「ビルトインラダーフレーム式モノコック」を採用しています。
サスペンションはフロントがストラット、リアは5リンクのリジッドアクスルを搭載するなど、本格的なクロカン車に近い形式です。
また、最低地上高は200mmを確保しており、前後のオーバーハングを短くすることでアプローチアングルとデパーチャーアングルも考慮されているなど、設計思想は完全にオフロード志向のモデルといえます。
エンジンは縦置きに搭載された最高出力109馬力の1.5リッター直列4気筒自然吸気で、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定。駆動方式はFRをベースとしたフルタイム4WDと2WDが用意され、4WDではセンターデフロックを装備することで高い悪路走破性を発揮。
ビーゴはトヨタにも「ラッシュ」として供給され、一定の人気を獲得しましたが2016年に生産を終了。実質的な後継車は2019年11月に発売された「ロッキー」ですが、ビーゴほどの悪路走破性は考慮されていません。
●ホンダ「ジェイド」
ホンダは2021年12月に「オデッセイ」の国内生産を終えると発表するなど、ミニバンラインナップは縮小傾向にあります。
これまでも出ては消えていったミニバンがありますが、そのなかの1台が「ジェイド」です。
ジェイドはもともと中国市場に向けて開発されたモデルで、外観はスタイリッシュなクーペフォルムを採用したステーションワゴンタイプのミニバンにカテゴライズされ、6人乗り3列シート車が設定されました。
ボディサイズは全長4650mm×全幅1775mm×全高1530mmとミドルサイズですが、注目すべきは全高で、1530mmと3列シート車では異例の低さです。
この低全高は機械式立体駐車場に対応するだけでなく、低重心なことからコーナリング性能にも良い影響を与え、フロントがストラット、リアがダブルウイッシュボーンのサスペンションと相まって、スポーティ走りは高く評価されました。
搭載されたパワーユニットは発売当初1.5リッター直列4気筒エンジン+モーターのハイブリッドのみでしたが、発売から3か月後には最高出力150馬力を誇る1.5リッター直列4気筒ターボを搭載する「RS」グレードを追加。
さらにRSではボディ剛性の向上と専用セッティングのサスペンションを装備し、ハンドリングでは優れたトレース性を実現する「アジャイルハンドリングアシスト」も搭載されるなど、ミニバンながら高い旋回性能を実現しました。
2018年には2列シートの5人乗り仕様を投入し、ステーションワゴンとしてのニーズにも対応しますが、販売は苦戦を強いられ、2020年にフルモデルチェンジすることなく生産を終了。スポーティなミニバンの市場はすでに無くなっていたということでしょう。
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2台目に紹介したビーゴは、現在、高年式の中古車でも100万円ほどで販売されており、かなりお手頃です。
ライバルにスズキ「ジムニーシエラ」(先代)がありますが、ビーゴは5名乗車と荷室の広さに大きなアドバンテージがあり、コンパクトなボディは林道を走るにも最適で性能的にも十分といえるでしょう。
実際、ビーゴのシャシはインドネシアや南米で販売されているミニバンに受け継がれており、堅牢さは折り紙付きです。
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