都市型クロカン車の先駆的存在! 日産初代「テラノ」を振り返る

現在、日産のSUVといえば「エクストレイル」が筆頭に挙げられますが、歴史を遡ると、1986年に登場した「テラノ」がその祖先にあたります。「ダットサン ピックアップトラック」をベースに、5ナンバーボディで仕立てた初代は、オフロードだけでなくオンロードでの快適性も追求。都市型クロカン車という新しいジャンルを切り拓き、好評を博しました。そんな初代テラノを振り返ります。

オンロードでの快適性を高めた都市部でも扱いやすいSUV

 現在、世界的に人気のクルマといえばSUVです。そのSUVの源流をたどるとクロスカントリー4WD車(以下、クロカン車)であり、文字どおり悪路走破性に優れたクルマです。

 いまから30年ほど前の1990年代初頭には、日本でクロカン車が大ヒットを記録。いわゆる「RVブーム」到来によるものです。

スタイリッシュなボディが特徴だったライトディーティクロカン車の初代「テラノ」
スタイリッシュなボディが特徴だったライトディーティクロカン車の初代「テラノ」

 このRVブームが起こる以前から、三菱「パジェロ」、トヨタ「ランドクルーザー」、いすゞ「ビッグホーン」、日産「サファリ」など、数多くのクロカン車が販売されており、すでにクロカン車市場は成熟していたとえいます。

 一方で、1980年代半ばにはオフロードだけでなくオンロードでも快適に走れる、現代のSUVに相当するモデルが誕生していました。

 まさに現在のSUVのルーツといえるモデルで、そのなかの1台が1986年にデビューした日産初代「テラノ」です。

 当時アメリカで大人気だった「ダットサン ピックアップトラック(D21型)」をベースに、悪路走破性とオンロードでの快適性を両立。それまでのヘビーデューティなクロカン車とは一線を画した洗練されたデザインが与えられ、人気を得ました。

 そこで、初代テラノにフォーカスして、どんなクルマだったのか紹介します。

※ ※ ※

 車名のテラノとは、「大地」や「地球」を意味するラテン語「Terra」に由来したもの。スタイリングは日産デザインインターナショナル(現、日産デザインアメリカ)が手がけており、都会的なイメージが当時のクロカン車としてはかなり新鮮でした。

 ボンネット先端に入れられた3本のスリットや、力強い走りをイメージさせる前後のブリスターフェンダー、そして後席用の三角形ウインドウ(ポップアップ開閉式)といったディテールが与えられたエクステリアデザインは実に個性的。スタイルの面でも洗練性が表現されていました。

 ボディサイズは全長4365mm×全幅1690mm×全高1680mmで、ホイールベースは2650mmと、現在の水準からするとかなりコンパクトで、3ドアながら5ナンバー枠に収められたボディサイズは、個性的なスタイリングとともに人気を呼んだ要因のひとつといえるでしょう。

 インテリアは、直線基調としたインパネデザインや、ダッシュボード上部に備わる傾斜計や高度計はクロカン車ならではですが、4本スポークのスポーティなステアリングホイールや、上質なトリム、モケット地のシートなどが採用され、快適性を高めていることが見て取れます。

 後席の居住性も配慮され、上級グレードにはリクライニング機構やサイドアームレストが装備されました。また、ガラス部分が単独で開閉できるリヤガラスハッチの採用は、実用性の高さをうかがわせるものです。

 発売当初は、最高出力85馬力を発揮する「TD27型」2.7リッター直列4気筒OHVディーゼルエンジンを搭載。トルクフルで経済的なディーゼルエンジンはクロカン車としては有利でしたが、より快適な走りのために、1987年には140馬力の3リッターV型6気筒ガソリンエンジン搭載車が設定されたほか、5速MTに加え4速AT車をラインナップ。

 1988年には100馬力を発揮するターボチャージャー付きの2.7リッター直列4気筒ディーゼルエンジン「TD27T型」搭載車が加わり、1989年には4ドアボディが追加されたほか、V型6気筒ガソリンエンジンがマルチポイントインジェクション仕様となる155馬力の「VG30型」に変更されるなど、よりオンロードでの走りが進化。

 1993年に実施されたマイナーチェンジでは、オーバーフェンダーを装着したワイドボディが新たに設定され、さらに1994年の一部仕様変更では「TD27T型」ディーゼルエンジンの出力が115馬力に高められました。

 電子制御式の多板クラッチを用いた4WDシステムはパートタイム式で、シフトノブの左側に配置されたトランスファーで、2H(2WDハイ)/4H(4WDハイ)/4L(4WDロー)が切り替えられます。

 フロントにダブルウイッシュボーン式、リヤに5リンク式を採用したサスペンションにより、高い悪路走破性とオンロードでの快適性を両立。サスペンションには2ウェイアジャスタブルショックアブソーバーが採用され、「スポーツ」と「ツーリング」のふたつの減衰力を設定。ドライバーは走行状況や好みに合わせて選択できるものとなっています。

 国内外で人気を博した初代テラノは1995年8月に生産終了し、同年9月に登場した2代目をもって、テラノは2002年に国内での販売が終了しました。

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 当時、テラノの最大のライバルはトヨタ「ハイラックスサーフ」で、やはりスタイリッシュでライトディーティなクロカン車でした。

 現在は両車とも海外で生き残っていますが、新型「ランドクルーザー 300」が好調な受注を記録していることを考えると、今なら日本で需要があるかもしれません。

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