「販売台数No.1」は本当に良いクルマ? 自分が欲しいクルマの選び方とは
毎月、さまざまなメディアが販売台数ランキングを発表しています。それらは、今現在どのようなクルマが人気なのかを図る指標となりますが、果たして「売れているクルマは本当に良いクルマ」といえるものなのでしょうか。
新車販売台数ランキングの「落とし穴」とは?
金額が大きいだけでなく、数年にわたって使用するものでもあるため、クルマの購入前にはさまざまな角度から検討するのが一般的です。
そうしたなかで、クルマを購入する際に、参考にされることが多いのが新車販売台数ランキングです。
しかし、このランキングに掲載されているクルマが、本当に良いクルマだといえるのでしょうか。
新車販売台数ランキングは、自動車販売協会連合会(自販連)や全国軽自動車協会連合会(全軽自協)、日本自動車輸入組合(JAIA)が毎月発表する統計データをもとにすることが一般的です。
それによると、2020年度にもっとも売れたクルマはトヨタ「ヤリス」で、1年間に20万2652台を販売しています。
ちなみに、ライバルとして比較されることの多いホンダ「フィット」の年間販売台数は9万4311台で全体の6位です。
しかし、仮に200万円前後でコンパクトカーを探していた場合、このランキングにしたがってヤリスを選ぶことが正解なのでしょうか。あるいは、販売台数の分だけ、ヤリスはフィットより優れているのでしょうか。
誤解のないように付け加えておくと、ここではヤリスとフィットのどちらが優れているかを論じたいわけではありません。あくまで、ランキングだけを見て、クルマの購入判断をすることの「落とし穴」を説明するための例です。
さて、ここでいう「落とし穴」とは、ヤリスの販売台数には「ヤリスクロス」や「GRヤリス」も含まれていることです。つまり、ランキング上は、3モデルをまとめて「ヤリスファミリー」となっているのです。
とはいえ、ヤリスを求めて販売店へ行ったところ、ヤリスクロスやGRヤリスが登場したら、ユーザーの多くは「思っていたのと違う」と感じることでしょう。
ヤリスのみに限定した販売台数は13万台程度とされており、およそ7万台がヤリスクロスやGRヤリスであることがわかります。
一方、フィットには派生モデルは含まれていないため、9万4311台がユーザーの感じる実勢と近いといえるでしょう。
今回はヤリスを例に出しましたが、派生モデルを統合して集計するということは、以前から一般的におこなわれています。
一方、あまり例は多くありませんが、トヨタ「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」のように、構造上は共通していても、あえて別のモデルとして集計されている例もあります。
このように、ユーザーが感じる「車種」と、ランキング上の「車種」は微妙に異なる場合もあるので注意が必要です。
さらにいえば、モデルチェンジがおこなわれたモデルは数字が急激に伸びる傾向があり、反対にモデルチェンジを控えたものは数字が落ち込む傾向があります。同様に、販売店の数も販売台数に直結します。
また、高価格帯のクルマや、スポーツカーのようなそもそも大多数をターゲットとしていないクルマは、販売台数が稼げないため、こうしたランキングには登場しません。
つまり、新車販売台数ランキングはあくまでも目安と考えたほうがよいといえます。
一方で、よほどクルマに詳しい人でない限り、絶対的な判断基準を持っていないのがふつうであり、なかには新車販売台数ランキングを頼りにする人もいると考えられます。
多くの場合、クルマ選びの第一の制約条件となるのは予算ですが、残価設定ローンなどを活用すれば月々の支払いを圧縮することができるため、ワンランク上のクルマを所有することも可能です。
そこに加えて、中古車も視野に入れれば、まさに無数の選択肢が登場することになります「クルマを選ぶ時間もひとつの楽しみ」という愛好家以外は、悩ましい思いをすることになるでしょう。
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