「販売台数No.1」は本当に良いクルマ? 自分が欲しいクルマの選び方とは
「いいクルマ」はどうやって選ぶ?
自動車関連の仕事をしている筆者のもとには、悩ましい思いをしている友人や知人から、クルマの購入について相談を受けることがあります。
基本的に、筆者が答えるのは「フィーリングで選べば良い」ということをまず伝えます。
筆者に相談をする時点で、予算やボディタイプなどはある程度の方向性が固まっていることがほとんどで、あとはいくつかの競合のなかから実際に購入する1台を決めるということが多いからです。
現在販売されている新車は、「走る・曲がる・止まる」といった基本性能は必要十分であり、むしろよほどのプロでない限り、その優劣を判断するのが難しいほどです。
そのため、実際に見たデザインの感覚や、ハンドルを握った際の感覚、そして試乗をした感覚で一番しっくりきたものを選べば、大きな間違いはないと思うのです(もちろん、「自分の責任で選ぶべき」という思いもあります)。
また、「ハードウェアにはあまりこだわりすぎないほうがいい」ということを伝えることもあります。
インターネット上には「ライバル比較」という名で、競合車を比較するような記事があふれています。
それだけ人々の関心が高いということだと思いますが、そうした記事の多くは、全長×全幅×全高、あるいは室内幅や室内高といった寸法や燃費、機能といったカタログ情報の比較に終始しています。
ただ、比較対象となる競合車であれば、そうしたスペックに大きな差は出にくいものです。誤解を恐れずいえば、ラゲッジスペースが2-3cm広いからといってなんになるのでしょうか。
もちろん、特定の目的があれば、ラゲッジスペースのわずかな違いを決め手にすることも良いでしょう。しかし、そうした場合を除いて、ハードウェアのスペックを決め手にすることを筆者はすすめません。
シートベルトやエアバッグが付いていないクルマというなら話は別ですが、新車であれば、そういったレベルの差はどのクルマでもないのですから。
筆者がより踏み込んだアドバイスをするケースは、「そのクルマに乗っていることでどのように見られるか」という点について聞かれた場合です。
例えば、「人とかぶるのはあまり好きじゃない」という相談を受けることは少なくありません。これは「違いのわかる人間として見られたい」という願望を往々にして含んでいると思われます。
しかし、だからといって、マニアックな輸入車や旧車などをすすめることはまずありません。あくまでも「(普通のクルマのなかで)人とかぶるのはあまり好きじゃない」という意味であることがほとんどだからです。
人とかぶらないことを優先した結果、単なる不人気車を選んでも仕方ありません。そうした相談者に対して、筆者がすすめるのは「ボディカラー」での差別化です。
売れ筋のクルマでも、白や黒、シルバー以外の色を選べば多くの場合「一味違った」感じになるものです。
また、「良いクルマがほしいが、悪目立ちしたくない」や「品のあるように見られたい」といった相談を受けることもあります。
時代錯誤といわれるかもしれませんが、やはりクルマによってその人の趣味嗜好やキャラクターを判断されることが多いのも事実です。
こうしたニーズを満たすためには、クルマ視点で選ぶのではなく、相談者の内面を見てアドバイスをしなければなりません。
つまり「いいクルマ」の定義は、クルマ側だけで決められるものなのではなく、実際に所有し、使用する人との関係のなかで決められるものだと、筆者は考えるのです。
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市場の動向を表しているという意味では、新車販売台数ランキングは、とても有効なデータといえます。
しかし、実際にクルマを所有し、使用する人はあくまでもひとりの人間です。いろいろなデータや周囲の人の意見を参考にしつつ、実際にそのクルマに関わる人間の意思がクルマ選びにはもっとも重要であることは間違いありません。
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