半世紀前にイカしたセダンがあった? 1960年代に誕生したスポーツセダン3選
日本でマイカーの普及が始まったのは1960年代の後半からですが、当時は軽自動車や1リッタークラスの2ドア/4ドアセダンがファミリーカーとしてポピュラーな存在でした。そして、同時期には国産車の高性能化も始まっています。そこで、1960年代に登場した大衆スポーツセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
マイカーの普及が始まった頃、すでに登場していてスポーツセダンを振り返る
日本では1955年から1970年にかけて目覚ましい発展があり、いわゆる高度成長期と呼ばれる頃で、国民総生産(GNP)は急上昇していき、諸外国を次々に追い抜きました。
そして、1960年代の後半にはトヨタ「カローラ」や日産「サニー」といった1リッタークラスの大衆車が誕生し、さらに軽自動車も車種が急激に増加。マイカー時代の到来です。
当時のファミリーカーといえば2ドア/4ドアセダンが主流で、まだ性能よりも価格が重視されていたといえます。
一方、1960年代の終わりには名神高速道路や東名高速道路が開通してハイウェイ時代が到来。国産車もライバルに負けまいと高性能化が加速しました。
そこで、1960年代の終わり頃にデビューした大衆スポーツセダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「ファミリア ロータリーSS」
かつてマツダの主力車種だった「ファミリア」は、カローラやサニーに先んじて1963年に誕生しました。その名のとおり大衆車として開発されましたが、イタリアのデザイン工房であるベルトーネによるデザインで、欧州車を思わせるスタイリッシュなフォルムが特徴でした。
その後、1967年に2代目が登場。1968年には「コスモスポーツ」に次ぐロータリーエンジン搭載車として「ファミリア ロータリークーペ」が発売されました。
さらにマツダはロータリーエンジン車の拡充を開始して、1969年にはセダンにロータリーエンジンを搭載した「ファミリア ロータリーSS」を追加ラインナップ。
エンジンは491cc×2ローターの「10A型」ロータリーエンジンで、最高出力は100馬力(グロス、以下同様)を発揮。まだ同クラスの大衆セダンが50馬力から70馬力程度が平均の時代ですから、いかに高性能だったかがうかがえます。
外観ではロータリーエンジン車であることをアピールするため、フロントグリルは専用のメッシュタイプに三角形のローターを模した「おむすび型」エンブレムが装着され、テールライトは丸形4灯式の専用デザインを採用。
ファミリアの登場によってロータリーエンジン車の普及は一気に加速しましたが、1973年に3代目が登場すると排出ガス規制の強化やオイルショックの影響から全車レシプロエンジンとなり、ロータリーエンジンを搭載したファミリアは2代目だけでした。
●日産「510型 ブルーバードSSS」
日産は1966年に発売したサニーをエントリーモデルとしたことで、1967年に上級クラスに移行した3代目「510型 ブルーバード」を発売しました。
外観は2代目の410型が丸みを帯びたフォルムだったのに対し、全体を直線基調としたシャープなデザインに刷新。このデザインは「スーパーソニックライン」と呼称されました。
ボディタイプは、2ドア/4ドアセダンとワゴン/4ドアバンの4種類を設定し、1968年には最大のライバルであるトヨタ「コロナハードトップ」に対抗した2ドアクーペも追加し、テールライトには近年増加しているシーケンシャルウインカーを採用するなど、当時としてはかなり斬新でした。
搭載されたエンジンは、新開発の直列4気筒SOHCの「L型」エンジンで、登場時には1.3リッター(1970年には1.4リッターに変更)と1.6リッターをラインナップ。
1970年には最高出力100馬力(1971年には105馬力まで出力向上)を発揮するSU型ツインキャブ・1.8リッターエンジンを搭載した「1800SSS」が発売され、まさに「スーパースポーツセダン」にふさわしいエンジンでした。
また、510型最大の特徴はサスペンションで、フロントがマクファーソンストラット、リアがセミトレーリングアームとなる日産車初の四輪独立懸架を採用。操縦安定性と乗り心地を両立した先進的な設計は、「技術の日産」のイメージを確立するだけでなく、ライバルに対しての大きなアドバンテージになったといえます。
さらに、510型のポテンシャルの高さを裏付けるように、海外のラリー参戦。東アフリカサファリラリーでの優勝を含む上位入賞を果たし、「ラリーの日産」のイメージも揺るぎないものにしました。
●三菱「コルトギャラン AIIGS」
現在、国内市場ではラインナップからセダンが消えて久しい三菱ですが、かつては「ミラージュ」「ランサー」「ギャラン」が三菱製セダンの3本柱でした。
なかでも1969年発売の「コルトギャラン」は、当時の国産4ドアセダンのなかでも美しいと評されたデザインで人気となりました。
外観は直線基調のウェッジシェイプを採用し、三菱はこのデザインを「ダイナウェッジライン」と呼称。
グレードはエンジンの仕様で3タイプに分かれ、さらに装備の違いで11タイプを展開し、トップグレードの「AIIGS(グランドスポーツ)」には最高出力105馬力を発揮するSU型ツインキャブの1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載。
最高速度は175km/h、0-400m加速は16.9秒と、ワンクラス上を上まわるほどの動力性能でした。
実際にノーマルのままでラリーにエントリーできると自負し、三菱はコルトギャランをさらに高性能に仕立てるスポーツキットも用意していたほどです。
コルトギャランはハイウェイ時代の到来を見据えて開発されており、100km/h以上の連続走行も可能としているなど、まさにスポーツセダンといえるモデルでした。
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日本時間の2021年8月18日に、日産は米ニューヨークで市販モデルの新型「フェアレディZ(米名はNISSAN Z)」を世界初公開して、大いに話題となっています。
このフェアレディZは初代が1969年に誕生し、1970年にはアメリカでダットサン「240Z」として販売を開始。安価で高性能、スタイリッシュなスポーツカーとして、異例の大ヒットを記録しました。
一方、240Zのアメリカでのヒットにおいて忘れてはいけないのが、本文で紹介した510型 ブルーバードの存在です。
アメリカでは240Zに先立って510型 ブルーバード(ダットサン「510」)が上陸しており、基本性能や信頼性の高さからスマッシュヒットを記録。240Zのみならず、日産の世界進出への礎になったのが、510型 ブルーバードです。
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