まさに三菱の最終兵器? 悲運のマシン、ランサーエボリューションIとは

日本の自動車史にその名を刻んだスポーツセダンといえば、三菱「ランサーエボリューション」の名を挙げないわけにはいきません。2015年4月に生産終了するまでのおよそ23年間、三菱車フリークやWRCファンに支持されてきた“ランエボ”の初代を振り返ります。

WRC参戦を照準に開発されたホモロゲーションモデル

 近年、ニーズの変化から国内の高性能車はかなり数を減らしてしまいました。一方、現在に続く高性能車誕生の礎になったのは1980年代のことで、ターボエンジンの普及やDOHCエンジンの復活から国産車の高性能化が加速した時代です。

 そして、各メーカーから高性能車が出揃うと、今度は市販車のポテンシャルをアピールするために次々とモータースポーツへの参戦を始めました。

ラリーに特化したマシンとして産声をあげた、初代「ランサー GSRエボリューション」
ラリーに特化したマシンとして産声をあげた、初代「ランサー GSRエボリューション」

 とくに欧州を中心に高い人気を誇り、勝利することで市販車の販売台数にまで大きく影響を与える世界ラリー選手権(WRC)は、欧州メーカーだけでなく日本のメーカーも参戦を表明。

 なかでも三菱は1970年代から積極的にWRCや国内ラリーで戦っており、排出ガス規制の強化からブランクがありましたが、1987年に登場した6代目「ギャラン」の高性能モデル「VR-4」で、1988年シーズンから5年ぶりにWRCに復帰。

 ギャラン VR-4は一定の結果を残しましたが、ライバルの台頭により苦戦を強いられるようになりました。

 そこで、次世代のマシンとして1992年に初代「ランサー GSRエボリューション」が登場。後に「ランサーエボリューション I」と呼ばれるこのマシンは、どんなクルマだったのでしょうか。

※ ※ ※

 1992年に登場したランサー GSRエボリューションは、WRCの出場資格を得るために開発されました。当時、開発には三菱WRCチーム総監督である木全巌氏、WRCドライバーだった篠塚建次郎氏、三菱WRCチームドライバーのケネス・エリクソンが参加したことも話題となります。

 車名に「進化」「発展」を意味する「エボリューション」を冠したランサー GSRエボリューションは、1992年に登場した初代から2015年に生産終了となった10代目まで、車名のとおりつねに進化を続けてきました。

 とくに初代が残した功績は大きく、WRCでの活躍もさることながら、流行の兆しを見せていたハイパワー4WDがブームを一気に加速させた立役者でもあります。

 ボディサイズは4310×1695×1395mmで、ホイールベースは2500mmとコンパクトな設計で、車重は1240kgとギャラン VR-4より60kgほど軽量でした。

 小型かつ軽量なボディに、最高出力250馬力を発生する「4G63型」2リッター直列4気筒ターボエンジンと4WDシステムを搭載。当時の2リッターエンジン車としては世界最強と称されるほどのパフォーマンスを誇っていたのは、今も語り草となっています。

 スタイルは今どきのデザイントレンドと照らし合わせると、高性能スポーツセダンとしてはやや大人しい印象を受けます。しかし、開口部の大きな大型フロントバンパーや、ボンネット上に設けられた大型エアアウトレットとエアインレット、大型リヤスポイラーをまとった姿は、ベースとなったランサーの面影を残しながら、かなり尖ったものへと進化を遂げていました。

 ドライブトレーンは、ビスカスカップリング(VCU)とセンターデフを組み合わせた三菱独自のフルタイム4WDシステムを採用。後輪にはVCU式リミテッドスリップデフを装備し、さらにクロスレシオの5速MTを搭載しています。

 これらの技術によって、250馬力/31.5kg-mの高出力を余すことなく路面へ伝達し、あらゆる速度域で俊敏な加速性能を発揮していたのです。

 足まわりもランサーをベースにしながら強化され、サスペンションはスプリング、ショックアブソーバー、スタビライザーの見直しをおこなうことで、旋回特性やコントロール性能が格段に引き上げられました。

 高出力化に伴い、ブレーキもフロントが15インチ2ポットベンチレーテッドディスクを奢り、ABSを標準装備。

 こうした数々の技術は、ラリーという苛酷な状況下においてもドライバーが意のままに操れるポテンシャルを実現していたことはいうまでもありません。当時としては相当なインパクトを与え、勝つためにはここまでやるのか!? と驚愕させられたものです。

 また、グループA規定でWRCへの出場資格を得るためには、連続した12か月で2500台以上を生産するというレギュレーションが設けられていました。そのため、市場で一定数を販売する必要があり、内装には特別なアイテムが数多く採用されています。

 シートは、レカロ社製スポーツシートに新開発のシート生地(ソアベール)を採用。モモ社製本革巻3本スポークステアリングと本革巻シフトノブも相まって、激しいスポーツ走行でも思いのままにクルマをコントロールすることを可能にしていました。

 ほかにも、フルオートエアコン、AM/FMラジオ付フルロジックカセットオーディオ(6スピーカー)、パワーウインドウ、センタードアロック、キーレスエントリーといった快適装備も充実し、パフォーマンス以外でも「特別なクルマ」であることをアピール。

 一般ユーザー向けに販売されたのは「GSR」グレードですが、モータースポーツでの使用に特化し、装備を簡略化させた「RS」グレードも設定。このバリエーション展開は、後のランサーエボリューションにも踏襲されています。

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 ハイパワー4WDがブームの兆しを見せていたことが販売に好影響をもたらし、初代は目標としていた限定2500台が即完売したことから、追加販売をおこなって最終的に7628台が販売されました。

 予想外の売れ行きを記録したものの、じつは肝心のWRCでは、残念ながら勝利することが叶いませんでした。

 しかし、この結果こそランサーエボリューションが続いていくきっかけになったことは間違いありません。その後、II、III、IVそして最終型となるXまで、その名のとおり進化・発展を続けていくことになるのです。

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