「水素カローラ」のレース参戦も話題! 最近また水素が注目されてきた理由とは

再生可能エネルギー発電と水素の生成がセットで考えられる

 続いて、FCVの今後について考えてみたいと思います。

 燃料電池は発電の過程でCO2を排出しないので、走行中のFCVはエミッションフリーもしくはカーボンニュートラルな自動車となるため、EVとともに「カーボンニュートラル時代の決定打」と期待されています。

 しかも、FCVは燃料(水素)の補給が数分で終わります。この点は、充電に何時間もかかることが珍しくないEVに対する決定的なメリットといえます。また、FCVは大量のエネルギーを貯蔵した状態でもEVに比べて軽量なため、貨物や人を満載する大型車や長距離を走る乗用車向きとされています。

トヨタのFCV(燃料電池車)、新型「ミライ」の走り
トヨタのFCV(燃料電池車)、新型「ミライ」の走り

 ところで、燃料となる水素はどこからやってくるのでしょうか?

 水素の元素記号はH2。そう、水(H2O)は水素と酸素の化合物なので、水を電気分解して水素を得る方法が検討されています。
 
 もっとも、水を電気分解して水素を得るよりも、電気そのものを活用したほうがずっと効率的なようにも思えます。では、なぜ、わざわざ水を電気分解して水素を手に入れようとしているのでしょうか。

 カーボンニュートラル社会では、発電にも再生可能エネルギーを用いることが重要となります。ここで主要な発電方法として期待されているのが太陽光発電と風力発電です。

 ただし、われわれ人間が電気を必要とする時間帯に、かならずしも太陽光発電や風力発電が可能とは限りません。たとえば、太陽の光が降り注がない夜でも電気は必要ですし、それは風の吹かない日も同様です。

 反対に、電気がそれほど必要とされない時間帯に太陽の光が強く照りつけ、風がいきおいよく吹くかもしれません。

 そんなときに生まれた電力は、どうすればいいのでしょうか?

「余った電力はバッテリーに充電すればいいのでは?」と多くの方が思われるかもしれませんが、高価、重い、場所をとるなどの理由から、バッテリーを太陽光発電や風力発電のバックアップとして用いるのは非現実的です。

 そこで考えられているのが、太陽光発電や風力発電で生まれた余剰電力で水を電気分解し、水素としてエネルギーを貯蔵する方法なのです。同じエネルギーを貯蔵するのであれば電気よりも水素のほうがはるかに簡単でコストが安くて済むほか、長期間エネルギーを貯蔵するにも水素のほうが有利です。

大林組の地熱発電およびグリーン水素製造実証プラント。大分県九重町にある
大林組の地熱発電およびグリーン水素製造実証プラント。大分県九重町にある

 つまり、いま水素が注目されているのは、再生可能エネルギー発電と水素の生成がセットで考えられているからなのです。

 いずれにしても、エネルギー資源に乏しい日本では、国ぐるみで新しいエネルギー社会の構築に取り組むことが重要といえるでしょう。

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