映画のような世界観に浸れる名車「初代アルファ ロメオ スパイダー」が美しさを求める“大人”にオススメな理由【中古至難】

今回取り扱うクルマは、前回の「SL」と同じく2ドアオープンカーだ。SLは性能や安全性、ゴージャスさを体現したクルマといえた。一方で、1966年に発売された初代アルファ ロメオ「スパイダー」は、それらの要素とは相反した、感性に訴えるタイプのクルマだ。スパイダーだけにある、他のクルマでは絶対に味わうことのできない世界観は、どのようにして誕生したのか。現在の中古車事情も含め解説していきたいと思う。

息を呑むほど美しいピニンファリーナデザイン

 比較的余裕のある大人のための輸入オープンスポーツといえば、人気が高いのはポルシェの「718ボクスター」や「911カレラ カブリオレ」あたりだろうか。

 それらはもちろん素晴らしいオープンタイプのスポーツカーだが、何というかこうステレオタイプすぎる気がしないでもない。

「ステレオタイプで構わない!」という人もいらっしゃろうが、もしも「それはちょっと避けたいな……」とお思いなら、“ネオクラシック”と呼ばれることが多い1980年代から1990年代あたりの輸入オープンスポーツに注目してみることをおすすめしたい。

 それらはちょっと古い世代ゆえ、純粋な走行性能は最新世代のオープンカーと比べればかなり低い。だが、ドライバーとセットになった際の「たたずまい」は、正直申し上げて現代のギラギラ系オープンカーに乗る場合の数倍は素敵なものになるはずだからだ。

 そして、そんな場合におすすめしたいネオクラシックな輸入オープンカーのひとつが、アルファ ロメオ「スパイダー」である。

 アルファ ロメオ スパイダーは2011年まで、けっこう現代的な意匠とハードウエアを備えたモデルが製造されていた。だが今回おすすめしたいのはそれではなく、1966年から1993年までの長きにわたり販売された初代スパイダーだ。

1966年から1993年もの間販売されていた初代アルファ ロメオ スパイダー(写真はシリーズ4)。1967年の映画『卒業』などの映像作品を彩った。この映画のヒットを受け、後にスパイダーの廉価版は「グラデュエイト(卒業)」と名付けられたという(C)Stellantis NV
1966年から1993年もの間販売されていた初代アルファ ロメオ スパイダー(写真はシリーズ4)。1967年の映画『卒業』などの映像作品を彩った。この映画のヒットを受け、後にスパイダーの廉価版は「グラデュエイト(卒業)」と名付けられたという(C)Stellantis NV

●バッティスタがデザインした初代「スパイダー」

 初代アルファ ロメオ スパイダーのベースとなったのは1962年登場の「ジュリア」というスポーツセダン。それのオープン版が、まずはアルファ ロメオ「1600スパイダー デュエット」という名前で1966年に登場した初代スパイダーだった。

 ちなみにアルファ ロメオ スパイダーのデザインは、アルファ ロメオの社内デザインチームではなく、イタリアが世界に誇るカロッツェリア「ピニンファリーナ」が担当した。そしてこの初代スパイダーは、ピニンファリーナの創始者であるバッティスタ・ファリーナが息子に家督を譲る直前に手がけた「最後の作」といわれている。

 御大バッティスタの筆による最初の世代は、テール部分がまるでボートのようなロマンチックな形状であったため「ボートテール」あるいは「シリーズ1」と呼ばれるが、1970年のマイナーチェンジでスパイダーのテールはスパッと切り落とされかのような「カムテール」となり、「シリーズ2」とも呼ばれるようになった。シリーズ2は、テール形状の関係でトランクスペースは拡大されたが、形状としてのロマンティシズムはやや減じた感がある。

 1983年には2度目のマイナーチェンジが実施され、フロントグリルと一体化した大型バンパーや、リアスポイラーと一体化した大型リアバンパーを採用。この世代は「シリーズ3」と呼ばれるが、シリーズ3からはカーエアコンの装着も可能になった(逆にいうとシリーズ1&2はエアコン無し)。

 そして1990年には最後の改変がおこなわれて「シリーズ4」となり、これが前述のとおり1993年まで販売された。シリーズ4はテールデザインとダッシュボードのデザインを大きく変更するとともに、パワーステアリングが標準装備に(シリーズ3まではいわゆる重ステだった)。そして5速MTに加えて3速ATの仕様も用意し、エンジンは最高出力126psを発生する2リッター直列4気筒の1種類のみとなった。

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