装備充実のトヨタ新型「アクア」は「ヤリス」よりも割安!? トヨタが仕掛ける小型車戦略とは

2021年7月19日にトヨタ「アクア」がフルモデルチェンジしました。新型アクアは充実した装備や機能などを備えているにもかかわらず、戦略的な価格を実現。最上級グレードで比較すると売れ筋のヤリスよりも割安感があるというのですが、それはなぜなのでしょうか。

戦略的な新型アクアの装備と価格

 2021年7月19日、トヨタ「アクア」が2代目にフルモデルチェンジしました。先代(初代)アクアの登場は2011年なので、約10年ぶりの全面刷新です。

 新型アクアは、従来モデルと同じくコンパクトなハイブリッド専用車です。ハイブリッドシステムやプラットフォームは基本的にトヨタ「ヤリスハイブリッド」と共通ですが、異なる点もあります。

2代目にフルモデルチェンジしたトヨタ「アクア」
2代目にフルモデルチェンジしたトヨタ「アクア」

 それはヤリスハイブリッドに比べて機能や装備を上級化させながら、コスト低減も図ったことです。

 一般的に上級化とコスト低減は相反する要素とされるので、両方を同時に実行することは珍しいです。

 まずアクアとヤリスハイブリッドの機能や装備と価格を比べてみましょう。

 どちらも最上級グレードは「Z」。2WDのモデル同士を比べてみると、価格は新型アクアが240万円、ヤリスハイブリッドが232万4000円と、新型アクアのほうが7万6000円高く設定されています。

 しかし新型アクアはホイールベースが50mm延長され、前後席に座る乗員同士の間隔もヤリスハイブリッドよりも広くなって後席の足元空間に余裕があります。ヤリスに4名で乗車すると窮屈ですが、アクアであれば不満なく乗車することができます。

 さらに新型アクアは装備も充実しており、全車に100V・1500Wの電源コンセントと非常時給電システムを標準装着しました。この装備はヤリスハイブリッドでは4万4000円のオプションです。

 またヤリスハイブリッドのホイールは15インチのスチール製ですが、アクアには15インチのアルミ製が標準装着されます。この価格は6万円に相当します。

 同様にアクアにはLEDフォグランプ(2万円相当)、10.5インチディスプレイオーディオ(ヤリスハイブリッドは8インチを装着/価格差は3万円相当)などが加わります。

 スピーカーの数は新型アクアが4個なので、6個搭載されるヤリスハイブリッドのほうが充実していますが、全般的に見ると装備は新型アクアが上回っているといえます。

 後席の居住性が向上することも考慮すると、新型アクアの価格がヤリスハイブリッドに比べて7万6000円の上乗せに収まるのであれば、新型アクアは割安感があるでしょう。

 その一方で新型アクアは駆動用電池として、売れ筋グレードに「バイポーラ型ニッケル水素電池」を使っています。

 燃費効率では、ヤリスハイブリッドが使うリチウムイオン電池に比べて不利ですが、バイポーラ型ニッケル水素電池にすると価格を安く抑えられます。

 また初代アクアに搭載された従来のニッケル水素電池に比べると、サイズがコンパクトという特徴があります。

 このように、新型アクアはヤリスハイブリッドよりも装備を充実させ、電動パワーシートなどのオプション設定も追加しながらコスト低減もおこなって価格の上昇を抑えるなど、買い得だといえます。

 WLTCモード燃費は新型アクア Z(2WD)が33.6km/Lなので、ヤリスハイブリッドZの35.4km/Lより下回りますが、それでも比率に換算すると6%に収まり、バイポーラ型ニッケル水素電池によるコスト低減を重視しました。

 ただし新型アクアで燃費を重視した「B」だけは、リチウムイオン電池を使ってWLTCモード燃費も35.8km/Lとしています。これはヤリスハイブリッド「G」と同じ数値です。

 通常であれば、新型アクアもすべてリチウムイオン電池にしてZの価格をもう少し高くするか、同じ価格にするなら装備を減らすということも考えられるでしょう。

 それなのに新型アクアは新たにバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載して、充実した装備と割安な価格を最小限度の燃費悪化によって達成させました。

 新型アクアの装備や燃費、価格は、相当緻密に計算されたものだといえそうです。

※ ※ ※

 新型アクアの装備や価格設定が考え抜かれたものだということは、グレードごとに比べてもよくわかります。

 最上級のZ(2WD)の価格は前述のように240万円。ひとつ下の「G」(2WD)は223万円なので価格差は17万円です。

 4WD仕様も含めて、この価格差でZには15インチアルミホイール(G・4WDは4万9500円でオプション設定)、バイビームLEDヘッドランプ&LEDフォグランプ(同11万円)、ディスプレイオーディオの10.5インチ化(同3万8500円/ほかのグレードは7インチ)が加わります。

 さらにオプション設定がない装備として、Zにはフロント間欠ワイパーの時間調節機能も加わり、装飾類も充実。総額では、ZはGに対して22万円相当の価値を加えながら、価格差は17万円に抑えました。

 注意したいのは、G(4WD)を選んで、15インチアルミホイール+バイビームLEDヘッドランプ&LEDフォグランプ+ディスプレイオーディオの10.5インチ化をオプションで加える場合です。

 オプション価格は総額19万8000円の上乗せになり、17万円高いZ(4WD)の価格を超えてしまうのです。

 Z(4WD)には上記のオプション装備がすべて標準装着され、そのほかの装備も加えながら価格差を17万円に抑えたので、G(4WD)にオプションで加えると合計価格がZを上回る逆転現象が生じました。

 実際に購入するときは、G(4WD)に多くのオプションを加えて損をしないよう、Z(4WD)を選ぶようにというアドバイスが営業マンからされるかと思いますが、グレードに応じて価格の割安感に大きな差が生じるこの価格設定は少々わかりづらいといえます。

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