メルセデス三代目「SL」はラグジュアリー スポーツの開祖【誕生ヒストリー】
2021年、自動車史上に燦然たる金字塔として記憶に残るメルセデス・ベンツ「R107系SL」が登場して50周年を迎えた。18年ものロングライフをまっとうした3代目SLシリーズの誕生ストーリーとは。
スポーツ ラグジュアリーに転換した「SL」
1970-1980年代のポップカルチャーにおいて、燦然たる輝きを見せたメルセデス・ベンツ「SL(R107)」が、1971年のデビューから2021年でちょうど半世紀にあたる50周年を迎えた。
今回は、われわれVAGUEでもその誕生にまつわるストーリーを紐解き、かつて数多くのファンを魅了した1台への敬意を表することにしたい。
●安全対策とゴージャスさ、そして動力性能を追求
時は1970年代を迎え、オイルショックやエミッションコントロール(排ガス対策)、そしてアメリカの市民運動家ラルフ・ネーダーの「安全ヒステリー」に端を発するパッシヴセーフティ(受動安全)対策など、自動車という乗り物にとって、そしてメルセデスSLシリーズにとっても、誕生以来最悪ともいうべき受難の時代が訪れようとしていた。
その一方で、当時急速に高まりつつあった高性能&コンフォータブルの風潮は、伝統的にV8エンジンを熱望する北米マーケットの要求に加えて、排ガス対策でパワーダウンを余儀なくされてしまう分を補うことも併せて、すでにサルーンやクーペ/カブリオレでは生産化されていた、V8エンジンへの上位変換がSLにも待ち望まれていた。
このような状況とマーケットの要求のもと、1971年の春、3.5リッターV型8気筒エンジンを搭載する「350SL」をファーストモデルとして、SLシリーズに8年ぶりのフルチェンジが施行され、新世代のメルセデスSL「W107系(のちにR107系に改称)」が登場することになる。
このフルモデルチェンジではホイールベースが60mm延長されるなど、ボディは従来の「W113」型SLより大型化されていたうえに、内外装は先代よりもはるかに豪華な設え。また、同時代に世界中の自動車メーカーが開発し、メルセデスが最先端を歩んでいた「ESV」実験車のテクノロジーも生かされて、パッシヴセーフティ対策には大いに気が遣われていた。
とはいえ、この安全対策は当時のトレンドを意識したものというよりは、旧来から安全面で世界をリードしてきたダイムラー・ベンツ社(当時)にとっては世界の頂点に立つ意思表明としての意味合いの方が強かったとも考えられる。
そしてこれ以後、メルセデス・ベンツの生産車が、長らく安全への新アプローチを伴って発表されるのが一種の習わしのようになってきたのは、もはや誰もが周知のことである。
まず1971年の発表当初は、3.5リッターから200ps/5800rpm、29.2mkg/4000rpmを発生するV8SOHCユニット一本体制でデビューしたR107系SLだが、直後からV8エンジンのストロークを延長することで4.5リッター・225ps/5000rpm、38.5kgm/4000rpmとした「450SL」も、北米マーケット向けに限って追加。ヨーロッパでも、1973年モデルからラインナップに加わった。
さらに1974年には、西ドイツ本国およびヨーロッパ市場向けに「280SL」も復活している。ただし、この280用エンジンはかつてのW113に搭載されたSOHC・170psユニットではなく、ダイムラー・ベンツ社の市販車としては初めてDOHCヘッドが与えられた直列6気筒エンジンである。185ps/6000rpmのパワーに、24.3mkg/4500rpmのトルクは、V8を搭載した350SLとも遜色ないものであった。
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