「インプレッサ」が5600万円オーバー! 英国でスバル人気の理由とは

本物のラリー参戦インプレッサの驚愕の落札価格は?

 もう1台のインプレッサは、2004年式のWRXである。

 このクルマは2004年にプロドライブが、ラリー参戦をするために製作した8台目のシャシとなるS10型『PRO-WRC 04008』。同年9月に開催されたラリー・ジャパンで、ペター・ソルベルグ選手が優勝したクルマが、まさにこれだ。

●2004 スバル「インプレッサWRC(ペター・ソルベルグ)」

2004年9月に開催されたラリー・ジャパンで、ペター・ソルベルグ選手が優勝したときの個体だ(C)Silverstone Auctions Limited 2021
2004年9月に開催されたラリー・ジャパンで、ペター・ソルベルグ選手が優勝したときの個体だ(C)Silverstone Auctions Limited 2021

 優勝後、このクルマはベッテガ・メモリアル・ラリー・スプリントに出場するコリン・マクレー選手のためにカスタマイズを受けていたのだが、その後はプライベートチームへと売却され、数々のラリーに参戦していた。

 そのクルマを、2019年になって個人オーナーが入手し、プロドライブのレジェンド部門へと車両を持ち込んで、ラリージャパン当時の状態を再現するためのレストアを依頼している。

 その作業内容は、以下のようなものとなる。

●ボディ
ボディからエンジンや駆動系などをすべて下ろしてホワイト状態にし、ボディにショットブラストを掛けて塗装を剥がしたのち、シャシは全体を計測・検査し、2004年当時のオリジナルカーに忠実であることを確認。ダメージがあったパネルを交換し、一部パーツはプロドライブ社内で再加工。

●サブアッセンブリー
各サブアッセンブリーを分解・検査・サスペンションはクラックテストをおこない、ベアリングとシールを交換。ブレーキキャリパーはリビルトし、ブレーキローターを交換。

●カラーリング
ラリージャパン当時にカラーリングを施した担当者が、細部までオリジナルと同じになるよう再塗装。

 さらに、シートはオリジナルメーカーであるスパルコに送って再調整しているほか、当時使われていたノキア製の電話機も装備。さらには、ラリージャパンでSTIがチーム全員に配ったラッキーチャームも、同じものをプロドライブが調達して装備している。

 ここまでこだわりをもって作られた2004ラリージャパン仕様のS10型スバル・インプレッサWRCの落札価格は、なんと36万9000ポンド(邦貨換算約5690万円)というものだった。もちろん、その価格にふさわしい価値があるのは間違いがない。そして、その価値を正しく判断できる人たちが多くいるという英国の車趣味の深さにも、敬意を表したい。

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