ラリー界の伝説「ランチア デルタ」が、今でも真のクルマ好きにオススメの理由【中古車至難】

濃いたたずまいをガッツリ味わうために押さえるべきポイント

 今回推奨したいランチア デルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネIIは、16Vエボルツィオーネ(通称エボI)の後を受けて1993年に発売されたモデル。この通称エボIIは、WRCという実戦の舞台に投入されることはなかったが、「ランチア デルタHFインテグラーレ」としてはまさに最終完成形といえるものだ。

 燃料噴射がシーケンシャル方式(吸気ポートへの燃料噴射を各気筒の点火時期に合わせ、該当するインジェクタから1本ずつおこなう方式)に変更されたことで、2リッター直列4気筒DOHCターボエンジンの最高出力は215馬力に。そして、エボIと同形状のホイールは15インチから16インチに拡大。そして市販乗用車としての信頼性も──あくまで「ランチア デルタとしては」だが──エボルツィオーネIまでと比べれば大きく向上した。

 ビジュアル面での美しさと中古車としての流通台数、また前述した信頼性から考えると、これからデルタHFインテグラーレを買うのであれば、このエボIIか、それをベースとする最終限定車「コレッツィオーネ」のどちらかとなるだろう。エボIIとエボIではホイール径以外のビジュアルはほぼ同一だが、エボIはハッキリ申し上げて故障発生確率が決して低くはないため、あまりおすすめはできない。

 しかし最終のエボルツィオーネIIであれば、さほどの心配はいらない。

ランチア「デルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネII」の中古車販売価格は700万円以上となり、さらに多くの中古車が応談となっている。気軽に購入できるクルマではないことが分かる(C)Stellantis N.V.
ランチア「デルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネII」の中古車販売価格は700万円以上となり、さらに多くの中古車が応談となっている。気軽に購入できるクルマではないことが分かる(C)Stellantis N.V.

 エボIIにしても「1年のうち半分ぐらいは修理工場に入ってる」などという都市伝説もあるが、実際にそれを所有していた筆者にいわせれば、そんなことはない……場合もあると断言できる。

 もちろん「素性の良い個体を選び、それをしっかりメンテナンスしながら乗る」という条件付きではあるが、それを心がけた筆者は、所有期間中に大きな故障は皆無だった(もちろんマイナートラブルは何回か経験したが)。

 また筆者が乗っていた個体をその後購入した方によれば(Facebookで個人的につながっているのだ)、当該の個体は今なお元気に走り回っている模様。もちろん「次のオーナーになった方がしっかりメンテナンスをしているから」ではあるのだが。

 とにかくこのランチア デルタHFインテグラーレ エボルツィオーネIIというクルマの魅力は、その「たたずまい」にある。

 4WDシステムもターボエンジンも往時は「最新」だったが、今となっては旧式のそれであるゆえ、特に速いとかコーナリング性能が凄いとかいったことは、実はない。

 だがこのデザインとたたずまいは、その後に登場したどんなクルマが束で襲いかかってもびくともしないだけの美しさがある。そして、WRC6連覇という「神話」にも包まれている。

 そのような神話と美は2021年の今、一定以上の経済力と見識をお持ちの「大人」各位であれば必ず、上手に維持できるはず。逆にいえばそういった人でないと、このクルマの維持は難しいだろう。

 それゆえクルマがお好きな大人の各位にこそ、おすすめしたいのである。

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