“音の静かさ”はメリットなのか? ヤマハの電動バイク「E-Vino」を2週間使って感じたこと

電動バイクのメリットとデメリットとは何でしょうか? 音が静か、給油が不要、航続距離、外出先での充電……等々。今回はヤマハの電動バイク「E-Vino」を日常生活に近い形で使ってみて感じた、電動バイクのメリットとデメリットをお伝えします。

原付スクータータイプの電動バイク、約2週間使ってみて気付いたこと

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 ヤマハ「E-Vino(イー・ビーノ)」は、2015年に発売された原付1種に分類されるスクータータイプの電動バイクです。排気量50ccの原付スクーター「VINO(ビーノ)」がベースとなっています。

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ヤマハの電動バイク「E-Vino」(原付1種区分)

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 今回は、その「E-Vino」を約2週間にわたって、距離にして100km以上を走り、日常的な使い方に近い形でメリットやデメリットなど検証を行ないました。

 ちなみにテスター(筆者:伊藤英里)は身長153cm、体重43kg。バイク歴は10年以上ですが、原付スクーター(排気量50cc以下)にはほとんど乗った経験がありません。まともに乗ったのは、若かりし日に行った宮古島でのみ。これからお伝えする内容は、そんな筆者が原付1種に分類されるスクータータイプの電動バイクに乗って感じたことです。

音がないことはメリット? それとも……

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 ご存知の通り、電動バイクは音が静かです。実際に走らせていると、静かであることは便利でもあり、また気を付けなければならないところでもありました。

ヤマハ「E-Vino」に乗る筆者(伊藤英里)。内燃機関のスクーターよりもさらに気軽に走ることができる印象

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 深夜や早朝に思い立ってコンビニへ行くときも、音の点で周りの家に気を遣う必要がないのは間違いなく“良い!”と感じたところ。昼間の時間帯に住宅街などを走るときも同様です。これはすぐに想像がつくと思います。「E-Vino」は本当に音が静かで、モーター音もほとんどしません。気兼ねなくスロットルを回すことができました。

 一方で、音が無いゆえに何度も怖さを感じたことも事実です。歩行者が多い商店街や住宅街の路地など、歩道が無いような狭い道をスイスイと走って行けるのですが、静か過ぎて、逆に歩行者には気付かれにくい、ということがありました。

 エンジン音が聞こえないから車やバイクが来ていないと思ったのか、後ろを確認せずに道を横切る自転車や歩行者に何度も出くわしました。とくに歩きスマホ(危険です!!)やヘッドホンをつけて歩く人、聴力が衰えている様子の高齢者や、子ども連れなど何かに気を取られている歩行者には、より気付かれにくく、走行にはさらに注意が必要でした。状況としては自転車の走行時と同じですが、走らせているのは自転車ではなくバイクです。スピードも自転車より速いので、危険度も高くなります。

 静かな「E-Vino」を走らせていると、私たちは日常の中で、当たり前のように音による危険回避をしているのだと、あらためて深く気づかされました。これまでの内燃機関のバイク(またはクルマ)により、視覚と聴覚による危険回避に慣れている、ということです。音が聞こえない=クルマもバイクも接近していない、と判断されてしまいますし、筆者自身が歩行者のときもそうでした。

日本郵便が2020年1月より郵便配達業務用に導入したホンダの電動バイク「BENLY e:(ベンリィ・イー)」は、走行音が出る仕様になっている

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 ちなみに、昨年(2020年1月)から日本郵便が導入しているホンダの電動バイク「BENLY e:(ベンリィ・イー)」には、走行中に聞きとれるほどの音が発生しています。これについてホンダの広報担当者に問い合わせたところ、配達に使用される「BENLY e:」は音が出る仕様になっているそうです。

 つまり、現時点ですでに音を味付けした電動バイクが存在するということです。今後、モビリティの電動化が進むにあたって音の静かさは解決すべき課題となるでしょう。そして同時に、将来的にはエキゾーストノートとは違った、電動バイクならではの音が出現するのかもしれない、と想像を膨らませるとなかなか楽しみなところです。

ガソリンスタンドに行く必要はないが、バッテリーの持ち運びは必要

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 ガソリンスタンドに行く必要がなく、家でバッテリーを充電できるのは電動バイクのメリットです。「E-Vino」の場合、バッテリーを取り外し、室内でアダプターと100Vコンセントをつないで充電します。100Vコンセントは一般家庭に備わっているので特別な工事などは必要ありません。

ヤマハ「E-Vino」に標準装備のリチウムイオンバッテリー。スペアバッテリーは別売りで価格(消費税10%込み)5万8740円

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 一方、バッテリーの持ち運びは少し大変かもしれません。バイクに乗る場合はヘルメットやグローブなどを抱えているので、これに加えて重量6kgほどのバッテリーを持ち運ぶことになるからです。例えばマンションの2階や3階から毎日それを繰り返すとなれば、まあまあの筋トレになるでしょう。

 今回走らせた「E-Vino」のバッテリーの場合、残量がゼロに近くても2時間程度で満充電になりました。バッテリーの持ち運びやこうした利便性を総合的に考える必要がありそうです。

静電気が起きても心配しなくていい?

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 ちょうど乾燥した日が続いていたこともあり、気になったのが静電気です。カバーを被せていたこともあって帯電したらしく、何度か「E-Vino」に触れた瞬間に“バチッ”ときたことがありました。

 静電気を帯びた状態でバッテリーに触れても大丈夫なのか……。そう不安になってしまったのは事実です。しかし不安の感情は、何だかわからないものに対して起こるもの。というわけで、ヤマハの広報担当者に問い合わせました。

 すると「人が帯電するレベルの静電気はとくに問題ありません」との回答でした。乾燥肌の人でも安心して電動バイクに乗れることが証明されたわけです。

取りまわしには細心の注意を払う

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 取りまわしの際には注意が必要です。例えば「E-Vino」の場合、走行後はキーを回してオフにしなければ、スロットルを回すと音も無くバイクが動きます。「E-Vino」のトルクの出方は比較的緩やかですが、それでも電動バイクの特性上“一気に”トルクが発生します。走行可能状態でもエンジン音などはありません。静かなままです。

ヤマハの電動バイク「E-Vino」(原付1種区分)

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 走行可能状態のままバイクを降りて取りまわしをしようとすると、少しスロットルを回しただけでバイクが動いてしまいます。内燃機関のバイクの場合、アクセルを開けながら取りまわしをする人もいるでしょう。しかし電動バイクの場合、回転数の上昇がないので乗り手はその出力を想像しづらいのです。予期せずスロットルを回してしまうと、バイクが発進してしまうのです。

 というわけで、バイクを降りるときには必ずキーを回してオフにし、それから取りまわしをしました。とくに、周りに人がいるときには本当に注意を払います。これは電動バイクすべてに言えることでしょう。その形状から内燃機関のバイクの電動版だと思ってしまうのですが、こうした細かなところからも、電動バイクというのは新たなカテゴリーのモビリティだと気付くのです。

身長153cmの筆者(伊藤英里)が「E-Vino」に着座した状態。ベースがヤマハの原付スクーター「VINO」なのでライディングポジションなどは問題なし。走ってみると少しリアショックは硬めな印象

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 最後に、これは電動バイクに限ったことではありませんが、原付1種スクーターはご存知のように法定速度は30km/hです。しかし、幹線道路ではない道路でさえ、走行中に、このバイクは一体どこを走れば安全なのか、と思わざるをえませんでした。電動バイクを含め、今後ますますモビリティは多様になっていくでしょう。どのモビリティにとっても身の危険を感じることなく走行できる法整備を望みます。

※ ※ ※

 ヤマハ「E-Vino」の価格(消費税10%込み)は25万9600円、標準装備のバッテリーと同じスペアバッテリーは5万8740円です(専用のバッテリーダンパーも必要)。

提供:バイクのニュース


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