販売店通いは過去のものに!? 車の「オンライン商談」スバルで本格化 買い方どう変わる?
どういった経緯で実現? スバルに聞いてみた
では、スバルのオンライン商談はどういった経緯で実現したのでしょうか。スバル本社に聞いてみました。
それによりますと、導入を検討していたのは2019年末だといいます。
つまり、コロナ禍の前からですが、「多様化するお客さまのニーズに合わせたさまざまな施策を検討していました。それがコロナ禍となり、オンライン商談はスバル特約店(販売店)からの要望も多かったため、(さまざまな施策の中で実施に向けた)優先順位を上げて検討を続けました」というのがこれまでの流れです。
また中古車については「都道府県をまたいで車両の問い合わせをいただくことが多く、オンライン商談のニーズが元々高いという認識がありました」と指摘します。
さて、ユーザーや特約店からの潜在的な要望については、スバルのオンライン商談のウェブサイトに記載されているような「外出は極力控えたい」「子供がいるから販売店に行くのが大変」「販売店にいきなり行くのはなんとなく緊張するなど、ちょっと抵抗感がある」「平日は仕事、また休日もなにかと忙しいので、効率的に自動車購入についての情報を集めたい」といった声があることは、一般的なユーザー感覚として十分理解できます。
ただし、そうした声を受け付けてオンライン商談を用いることで、これまでの販売のあり方が大きく変わることへの販売現場での不安があるようにも思えます。
この点については「特約店からはオンライン商談に対してポジティブな意見が多く、将来への不安といったネガティブな声は聞こえません。特約店独自にオンライン商談を始めていたケースもあり、(全国からスバル本社主導で)早く始めてほしいという声の方が多くありました」というのが実情です。
では、特約店向けの教育はどのようにおこなったのでしょうか。
これについては「オンライン商談の要点をまとめた動画をスバル本社が作成し、特約店毎に社員教育を進めました。実際に、Zoomを使用したロールプレイングを店舗間で実施するなどして、オンライン商談に対するスキルアップの期間を設けました」と、十分な準備期間をとったといいます。
こうした取り組みを全国展開する上で、スバル特約店は全国44社中の約8割にあたる36社が本社の連結子会社であることが、実施に向けたプラス要因だともいえます。「オンライン商談で使用するiPad(タブレット端末)やネットワーク回線、そして業務システムが全国で統一されていることで、必要なインフラの増強や社員教員を実施しやすく、お客さまに全国で均質なサービスが提供できる」という利点があるのです。
また、海外での事例については、北米スバル販売店の一部でチャットを活用した商談の導入事例があるそうです。
最後に、(ボルボなど)一部のメーカーではEVシフトをひとつのきっかけとして今後、販売の完全オンライン化を進める動きがありますが、スバルとして今後、どう対応していくかについて聞きました。
この点については「電動化に限らず、コロナ由来のニューノーマル、拡大する販売現場などでの人と人との非接触のニーズ、Eコマースの拡大、そしてスマホネイティブ層の拡大など、今後のお客様にとっての『当たり前』の変化への対応を考えていきたい」という将来の展望を語ってくれました。
スバルが始めたオンライン商談という手法は近い将来、他のメーカーや販売店に大きな影響を与えそうです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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