登場から40年!日本発の便利アイテム「カーナビ」はどう進化? その壮大な歴史とは

いまではスマホさえあれば目的地までルート案内してくれる時代だが、それでも市販カーナビの売上は伸びているという。それまで紙の地図しかなかった時代にカーナビが登場したのは、いまからちょうど40年前の1981年。そこから年々進化し、いまでは将来の高度自動運転実現には欠かせない技術の一端を担っている。カーナビの壮大な進化の歴史を見ていこう。

世界初の地図型カーナビはホンダが開発

 スマホ(スマートフォン)が1台あれば、行きたい場所を検索して設定するだけで簡単に目的地までのルートを案内してくれる。いまやそんなことが当たり前の時代となった。

 でも、それが可能となったのはほんの10年ほど前、iPhoneやAndroid搭載スマートフォンで専用の地図アプリを使えるようになってからのことだ。それ以前は、ドライブにおいては車載されたカーナビゲーション(カーナビ)がその役を任されていた。

 では、そのカーナビが誕生したのはいつなのか。その歴史をたどってみよう。

今から40年前の1981年、ホンダがアコード/ビガーに用意した世界初の地図型カーナビ「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」
今から40年前の1981年、ホンダがアコード/ビガーに用意した世界初の地図型カーナビ「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」

 2017年3月、本田技研工業(ホンダ)の本社ビルで「IEEEマイルストーン」の認定式が開催された。

 その認定の対象となったのが1981年に誕生した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」。これが世界初の地図型カーナビゲーションとして認定されたのだ。

 いまから40年近く前、ドライブではひたすら紙地図を開いて目的地までのルートをたどっていた時代。そんななかでホンダは「ガスレートジャイロセンサー」を用いることで、クルマの動きを地図上に反映させる技術を開発したのだ。6インチのブラウン管ディスプレイ上に、現在地を表示する技術として活用したのが始まりだった。

 しかし、いざ開発となると試行錯誤の連続だったようだ。「ガスレートジャイロセンサー」は停止すると勝手に滑り出す“ドリフト現象”が発生し、この対策のためにヘリウムガスの純度を高めたが、これを維持するためには高い真空技術が欠かせない。そこで、真空技術に長けているランプメーカーのスタンレー電気に協力を仰いだ。

 自車位置を表示するなら地図も必要だ。しかし、時は紙地図しかない時代。検討を重ねた結果、昭文社がそれをフィルム化して協力してくれることになった。地図上にマーキングして消せる専用ペンは三菱鉛筆が担当。ブラウン管の上に差し込んだフィルム式地図上に、ペンでマーキングして使用した。ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータの開発には多くのサプライヤーメーカーが関わっていたわけだ。

 しかし、使い勝手は決して褒められたものではなかった。というのも、使う時は最初に正しい現在地を設定する必要があったし、何よりもこのフィルム式地図は、紙地図をめくるように手作業で差し替える必要があったのだ。

 そんな反省から生まれたのが、光ディスクに地図データを収録する方式だ。ホンダはこれで特許を取得。しかも普及することを第一に考えたホンダは、これを無償公開した。これがきっかけで、地図の電子化は一気に進んだのだ。

 1987年にはさっそくトヨタがCD-ROMに地図データを収めた「エレクトロマルチビジョン」を「クラウン」に搭載。1989年には日産が「シーマ」に進行方向を上にして地図を表示する「マルチAVシステム」を搭載するに至る。

 ただ、いずれも利用する際に、正しい現在地を設定する必要があった。これらを経て時代は、いよいよ現在地測位に「GPS(グローバル・ポジショニング・システム)」を使う時代へと入っていくのだ。

 世界初のGPSカーナビは、1990年4月に登場した「ユーノス・コスモ」のCCS(カーコミュニケーションシステム)だ。

ユーノス・コスモのCCS(カーコミュニケーションシステム)は、世界初のGPSを使用したカーナビとなった
ユーノス・コスモのCCS(カーコミュニケーションシステム)は、世界初のGPSを使用したカーナビとなった

 当時、南極の資源探査で使われていたGPSをカーナビとして活用することを三菱電機が思い立ち、開発に着手。地図の電子化を住宅地図のゼンリンに依頼し、地図データのプラットフォーム「ナビ研フォーマット」を開発。このデータベースを採用することで、コスモのGPSカーナビが実現した。

 同年6月には、パイオニアが日本初の市販型GPSカーナビ「AVIC-1」が登場、「道は星に聞く」このキャッチコピーのCMで多くの人を惹きつけた。これにより、いつでも現在地が地図上に表示されるようになり、ここからGPSによるカーナビゲーションへの道が開かれることになる。

 ルートガイドをおこなう現在のカーナビの原型ともなったのは、初代「セルシオ」後期型に搭載された「ボイスナビゲーションシステム」だ(1992年)。GPSによって常に正しい現在地を表示できる上に目的地までのルートを地図上に表示し、音声ガイドに交差点ガイド機能も備えた。これによって急速にカーナビの能力は高まっていくこととなった。

 それに伴い、地図データもCD-ROMからより容量の大きいDVD-ROM、HDD、メモリーへと変遷していく。情報量やアクセススピードが向上し、使い勝手は飛躍的に高まっていった。

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