「EVシフト」なぜプレミアムブランドで先行するのか? 価格面だけではないその理由

欧米プレミアムブランドの完全EV化 背景には何がある?

 近年、世界各地でカーボンニュートラルに対する政府や企業の動きが加速して、クルマの電動化も一気に進み始めています。

 その中で、大手自動車メーカーは当面の間、マイルドハイブリッド、ストロングハイブリッド、プラグインハイブリッド、EV、そして燃料電池車(FCV)など幅広い電動化ラインアップで対応しようしている一方で、欧米プレミアムブランドの完全EVシフトが目立つようになってきました。

 その背景には、技術面や法律面、そしてマーティング面など、さまざまな要因が考えられると思います。

日産「リーフe+」。
日産「リーフe+」。

 まず、法律面では、欧州で進む企業別平均燃費(CAFE:カフェ)の厳格化、さらに米カリフォルニア州でのZEV(ゼロエミッションヴィークル)や中国のNEV(新エネルギー車)などの規制強化が大きな要因です。

 一部のプレミアムブランドは販売台数によっては規制の直接的な影響を受けない場合もありますが、今後は各種規制の網が全ブランドにかけられる可能性も高く、プレミアムブランドとしては今がEVシフトへの最終決断するタイミングなのだと思います。

 技術面では、プレミアムブランドの車種ラインナップが一般的にボディサイズの大きいクルマが多く、そのボディサイズ自体がEVシフトへのプラス要因となります。

 EVでは満充電での航続距離を稼ごうとすると、搭載する電池の容量を大きくする必要があり、そうなると電池のコストがかさみます。

 ホンダの三部敏宏社長は先日のオンライン記者会見で「現在搭載しているタイプのリチウムイオン二次電池では、電池パックでみて電気容量1kWhあたり100ドル(1ドル108円換算で1万800円)を切るのが限界」と話しています。

 現状では1kWhあたり、125ドルから150ドル(1万3500円から1万6200円)だと推測され、リーフの上位グレード「リーフe+」(62kWh)での電池コストは84万円から100万円となり、車両価格全体の1/4から1/5にまで及びます。

 こうしたコストがプレミアムEVの場合、ブランドイメージによって新車販売価格をある程度引き上げて電池コストを吸収することが可能になるのです。

 そうした価格帯の値付けを、プレミアムブランドのユーザーは心理的に受け入れることができるのだと思います。

 また、マーケティング面では、テスラの影響が極めて大きな要因です。

 プレミアムブランドにおけるEVセグメントを、テスラに独り占めされている状況に対して、旧来からのプレミアムメーカーは自社の将来に対して強い危機感を持つようになりました。

 各社と意見交換すると「正直、まさかここまでプレミアム市場のユーザーがEVを受容するとは想定していなかった」という声を数多く聞きます。

 こうした、法律、技術、そしてマーケティングにおいてEVを取り巻く環境に変化が生じていることで、販売台数規模が少ないプレミアムブランドを中心にEVシフトが一気に進んだのではないでしょうか。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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