「ミウラSV」誕生50周年! なぜSVの価格が高騰しているのかを検証

ミウラSVの最後の1台は、ウォルター・ウルフがオーダー

 ミウラSVはミウラSと比べて、最高出力は15psアップの385ps/7850rpm、最大トルクは1.7kgmアップの40.7kgm/5750rpmに高められ、さらに運転性が向上している。また、ウェーバー製のトリプルバレルキャブレター「40IDL3C」のセッティングも新しく変更されている。

●オイル潤滑システムをついに分割

ミウラは、フロントとリアのカウルが大きく開く
ミウラは、フロントとリアのカウルが大きく開く

 ミウラSVの「見えない部分の革新」は、実はこうしたエンジンのパワーアップではない。ようやくエンジンとギアボックスの潤滑システムが分割された点が、ミウラSVのもっとも特筆すべきポイントである。これにより、ミウラが抱えていた問題の解決となったのだ。

 それまでのミウラは、トランスミッションとデフケース、エンジンのオイルパンは繋がっている設計となっており、それらの潤滑はすべて同じエンジンオイルを使っていた。現在のクルマは、エンジン、トランスミッション、デフはすべて粘度も特性も異なるオイルが個別に使用されている。ミウラでは、それらをすべて同じエンジンオイルでカバーするため、当然ながら各機関のトラブルのリスクは高かったのである。

 さらにリアサスペンション下部のアンカーポイントとアームが改良され、130mm近くワイドトレッド化したことにより、リアのトラクション性能は著しく向上した。

 また、タイヤサイズも前後異形サイズに変更され、フロントの205幅に対してリアは255幅になった。ホイールサイズは、フロントが7.0J×15、リアが9.0J×15となる。そのためリアフェンダーは大きく膨らみが増し、ワイルドなスタイリングを得るに至った。

●睫毛なしがSVの証

 ミウラSVのエクステリアの変更を語る上で忘れてはならないのが、ライトまわりの変更である。

 テールライトは当時のフィアット用が採用され、外観上の大きな特徴となっている。そしてヘッドライトまわりの「アイラッシュ(まつ毛)」が、ミウラSVでは廃止されている。

 ランボルギーニの創始者フェルッチオが決定したアイラッシュの廃止は、その組立てとフィッティングに高度な技術が必要だったため、生産時間短縮の目的があったとされている。ただし、フェルッチオは自分のプライベート用のミウラSVには、ヘッドライトまわりのアイラッシュを取り付けているのだが。

 このアイラッシュの廃止は、技術的な理由ではないとされているが、それ自体が結構重たいので、結果的に軽量化されたともいえる。

 アイラッシュがなくなったミウラSVは、かわりにその部分をブラックでペイントして対処した。しかし、ミウラSVのごく最初期の個体では、黒くペイントされたふたつのカバーがヘッドライトを挟むようにして取り付けられており、希少なミウラSVのなかにあってさらにレアとされている。

 ミウラSVの生産台数は150台。1973年初頭に生産は終了されているが、それから2年後の1975年にウォルター・ウルフのオーダーにより、特別に最後の1台のミウラSVが製造されている。この個体は現在、ランボルギーニ本社のあるサンタアガタ・ボロネーゼのムゼオ・ランボルギーニに収蔵されているので、展示によっては現車を見学することができるかもしれない。

* * *

 ミウラ・シリーズのなかでミウラSVがもっとも人気があり価値があるのは、150台という生産台数の少なさと、ミウラP400、P400 Sの致命的な構造的弱点が改良されているために安心してドライブできるからであろう。さらに、アグレッシブなリアフェンダーの膨らみなど、エクステリアデザインがグラマラスな点も理由に挙げられる。

 もちろん、ポロストリコでレストアの証明を正式に認定するからこそ、クラシックランボルギーニの価格が維持されているのはいうまでもない(フェラーリの「クラシケ」に相当する)。

 カウンタックは一番最初期のモデル「カウンタックLP400」がもっとも高額であるので、まったく逆の現象である。ランボルギーニに限らず、ローンチモデルと最終モデルのどちらに価値がつくのか分からないのも、クラシックカーの醍醐味といえるだろう。

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