新型車のイメージカラーはなぜ人気がないのか? 白や黒が売れるのにはワケがある?

個性的なボディカラーは「売れなくてもいい」?

 それならピンクやグリーンが欲しい時はどうなるのでしょうか。

「ピンクやグリーンは人気色ではないので、在庫車が少ないです。希望される色とグレードが在庫車では合わない場合、メーカーに発注するため、在庫車に比べて値引き額が下がります。

 数年後に売却する時の金額も、人気色に比べて安くなるでしょう。在庫車でないと、納期は1.5~2か月なので、期間限定のキャンペーンに間に合わずディーラーオプションサービスなどを受けられない場合もあります」(ホンダの販売店スタッフ)

スバル「XV」
スバル「XV」

 販売店でこのような説明を受けると、ピンクやグリーンに魅力を感じていても、多くのユーザーは在庫車に用意されるホワイトやブラックを選びます。

 ホワイトやブラックは、個性的な色に比べると値引きが拡大してディーラーオプションのサービスも受けやすく、納期も短く、さらに売却時にも有利になるからです。逆に個性的な色は、不利な要素が多く、売れ行きも伸び悩みます。

 一所懸命に個性的な色を生み出しているデザイナーがかわいそうに思えますが、某自動車メーカー商品企画担当者は「それでも良いのです」といいます。どういうことでしょうか。

「カタログやウェブサイトに大きく掲載されるボディカラーは、その車種の世界観を表現するものです。売れ筋になればうれしいですが、車種の価値を発信する役割を担うので、必ずしも多く売れる必要はありません。

 これはテレビCMなどのイメージ映像に似ています。CMでは若い人達が仲間同士でアウトドアに出かけて、スポーツを楽しむ映像が流れたりします。これはフォーカスターゲット、つまり商品コンセプトに合ったユーザー像なので、実際に購入するお客様に合わせる必要はないのです」

 以上のようにカタログやウェブサイトで取り扱われる色は、車両のコンセプトや個性の表現手段です。訴求色を売れ筋の色にすると、ホワイトとブラックばかりになって個性を表現できません。

 テレビCMの話も納得できます。今は若い人達がクルマをあまり買わなくなり、例えばスバル「XV」の場合、受注段階の年齢構成比を見ると50歳以上が52%を占めました。

 しかしXVのコンセプトは、50歳以上の中高年齢層をターゲットにしたシニア向けのクルマではありません。そこでCMでは、若い男女がスポーツを楽しむ映像と「好きに生きよう」というキャッチコピーが流れます。

 このように新型車の訴求色もCM映像も、実際の人気色とは違っていて良いわけです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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