なぜヴェルファイアに「クラウン」名称採用? ミニバン・SUVに王冠装着の理由 中国でも憧れの存在か

トヨタの中国法人は、上海モーターショー2021でミニバンのトヨタ「ヴェルファイア」とSUVのトヨタ「クルーガー」にそれぞれ「クラウン(中国名:皇冠)」の車名を冠した新しいモデルを発表しました。日本では「クラウン=セダン」の印象が強いものの、なぜ中国ではミニバンやSUVにクラウンの名称が付けられたのでしょうか。

中国におけるクラウンの輸入は1964年から

 2021年4月23日に一般公開が始まった上海モーターショーで、ミニバンのトヨタ「ヴェルファイア」とSUVのトヨタ「クルーガー」の2台にそれぞれ「クラウン(中国名:皇冠)」の車名が冠されたニューモデルが登場しました。
 
 日本では、「クラウン=セダン」というイメージが強いですが、なぜ中国ではSUVやミニバンにクラウンを冠することになったのでしょうか。そして、中国の人々はどのような印象を持ったのでしょうか。

なぜトヨタのミニバン「ヴェルファイア」に「クラウン」の名称が付けられたのか?(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)
なぜトヨタのミニバン「ヴェルファイア」に「クラウン」の名称が付けられたのか?(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)

 1955年から生産が始まったクラウンは、同一の車名で生産され続ける乗用車として長い歴史を持つ日本車です。

 中国におけるクラウン販売の歴史は意外と長く、最初のクラウン(左ハンドルの2代目40型)が輸入されたのは1964年です。

 なお、同じ年にフィンランドなどヨーロッパのいくつかの国もクラウンの輸入を開始しています。

 当初、中国ではおもにVIPや政府機関向けのクルマとして販売がおこなわれてきましたが、7代目となる120型クラウン以降、1980年代から1990年にかけて国内の公用車やタクシーに用いられて人気を博しました。

 香港においても同様で、一般用のみならず香港を象徴する存在でもある「香港タクシー(香港的士)」として長きにわたり採用され続けた代表的な日本車として認識されています。

 一時期、中国では輸入販売を停止していましたが、2003年からは第一汽車とトヨタの合弁会社である「一汽トヨタ」が中国国内で生産を始め、再び中国本土に王冠のエンブレムが舞い戻ることになりました。

 とくに人気を博した12代目クラウン(180系・日本では通称:ゼロクラ)は中型・大型高級車の代表的なクルマとなり、中国市場のアウディ「A6L」、メルセデス・ベンツ「Eシリーズ」、BMW「5シリーズ」と並ぶ高級車として熱烈な支持を得ていました。

 しかし、2020年4月におよそ17年間にわたる生産・販売の歴史は終了。日本と同様、高級セダンの需要が「アルファード」などのミニバンにとって代わられたことや、レクサスの圧倒的人気に押されて高級車としてのイメージが後退していったことも一因とされています。

 中国で自動車販売を仕事とするA氏は、クラウンのイメージをこう語ります。

「個人的にクラウンに対してのイメージは『トヨタの昔の高級車?』って感じですね。

 レクサスが中国で販売されるようになってから、クラウンの存在感がどんどん薄くなってきて、今では中途半端な感じもあります。

 パトカーやタクシー、会社役員車というイメージが強く、おじいちゃん専用車というイメージもあります。ただ、40歳代以上の人には今も人気があると思いますよ」

※ ※ ※

 では、なぜミニバンのヴェルファイアとSUVのクルーガーでクラウンブランドが復活することになったのでしょうか。

 上海モーターショー2021で、一汽トヨタは次のように述べています。

「クラウンは、1964年の広東交易会でのデビュー以来『国賓車』として広東交易会の一部となっており、改革開放がおこなわれた1980年代にはクラウンは中国の人々が望む高級車となりました。

 当時、クラウン富裕層の象徴であり、多くの人が憧れていました。

 今回、クラウンブランドを復活することで、一汽トヨタの『ブランドアップ』を図ります。

 単体モデルからクラウンブランドのシリーズに変わり、これまでのクラウンで培われたクラフトマンシップや品質と静かな快適性を継承する一方で、新しいSUVやMPV(ミニバン)の導入により、際立ったイメージを与えました

 これにより、一汽トヨタのハイエンド・フラッグシップ・ブランドであるクラウンは、一汽トヨタのブランドイメージに新たな高みをもたらし、ブランド力を向上させることになります。

 今回、一汽トヨタのハイエンド・フラッグシップMPVとハイエンド・フラッグシップSUVがクラウンブランドによって『デュアル・フラッグシップ』のラインナップを構築。

 これにより、30万人以上のハイエンド市場をカバーし、多くの消費者に対応していきます」

※ ※ ※

 このように、かつて中国の人々が憧れたクラウンブランドを復活させ、消費者が多いミニバンやSUVといったモデルにクラウンを冠することで、新たな消費者を獲得していくことが狙いのようです。

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2件のコメント

  1. 最近のトヨタは日和見主義的でブランドの信用力を低下させていると感じる。販売店の再編による車種統合でVOXYは廃版との情報が出ていたが、その後販売が好調になると生産継続の情報が出る。ヴェルファイアも同様でアルファードと統合と言いながらクラウンの名を付属させて生産継続。そのクラウンはセダンからSUVに方向転換との情報を出しながらこの状態。もともと他社に先駆けて冒険をすることがなく、後出しジャンケンで高い販売力によって成功してきたが、こうも度々ユーザーを裏切るようではブランドの信頼も低下すると思う。クラウンヴェルファイア、グランエース、、レクサスLMと車種統合とは逆の流れも感じる。

  2. 財力を見せつける小道具に成り下がってしまったな。
    アルファード系の先祖は初代グランビア、今でもその血族は救急車で現役だけど、やがてはウィンダムやアバロンの下駄に増築したミニバンがアルファードとして出たわけだけど、とにかく乗り心地が悪すぎるし重すぎる。
    クラウン云々よりアルファード系を高級と洗脳する辺りが市場を侮ってる証だし、見極めるほうも肥えた目で車を診てほしいね。
    おそらくはゼロクラウン時代だったら王冠のバナナの叩き売りはしなかったろね
    要はクラウンは消費期限間近の牛乳でアルファード系はヨーグルトと言ったところか?w

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