ランチア「デルタ」の面影ゼロ! 日本に3台輸入されたザガート「ハイエナ」とは

ザガートがランチア「デルタHFインテグラーレ」をベースとして製作した「ハイエナ」が、オークションに登場。1990年代に日本では正規で3台のみ販売されたハイエナの現代の評価額をレポートする。

芸術家のアイデアスケッチから誕生したスペチアーレ

 COVID-19の影響によりオンライン限定とされた「OPEN ROAD FEBRUARY」オークションは、同社の北米本社および欧州本社の双方から出品がおこなわれ、そのアイテム数は自動車だけでも108台に及んだ。

 今回VAGUEが注目したのは、2021年2月の「PARIS」オークションに出品がアナウンスされつつも、諸般の事情でキャンセルとなったものが、スライド的にこちらで出展された1台だ。

 ランチア「デルタHFインテグラーレ」をベースに、カロッツェリア・ザガートがアルミニウム製ボディを組み合わせた2座席クーペ、ランチア「ハイエナ・ザガート」である。

●1994 ランチア「ハイエナ・ザガート」

ランチア「ハイエナ・ザガート」のベースとなったのは、ランチア「デルタHFインテグラーレ」だ(C)2020 RM Sothebys
ランチア「ハイエナ・ザガート」のベースとなったのは、ランチア「デルタHFインテグラーレ」だ(C)2020 RM Sothebys

 ランチア・ハイエナ・ザガートは、1980−1990年代ランチアの最高傑作とも称される「デルタHFインテグラーレ」がベースだ。その起源は、イタリアでは非常に名を知られていた芸術家ナーニ・テデスキ(Nani Tedeschi)の描いた、躍動する猛獣ハイエナがクーペに「モーフィング」してゆくかのごときスケッチに端を発したものとされる。

 このスケッチに感銘を受けた、オランダのランチア正規代理店「ルッソ・サービス・オランド(Lusso Service Holland)」の経営者ポール・コートは、アンドレア・ザガート会長との協議の席をセッティング。テデスキ氏のスケッチに示された獰猛なスタイルのクーペを、ザガートのマネージメントのもとに具現化することになったという。

 こうしてザガート主導のプロジェクトとなったハイエナは、日本では「エヴォルツィオーネ」のペットネームも添えられた当時最新のデルタHFインテグラーレから、そのプラットフォームを流用。全長4mにも満たないコンパクトなボディは、アルミニウムに一部樹脂製パーツも併用したものであった。

 そのスタイリングは1950年代末のフィアット「アバルト750GTザガート」を思わせる、イタリア製ベルリネッタの魅力を体現する一方で、インテリアはダッシュパネルからコンソール、ドアのインナーパネルに至るまで現代的な総カーボンファイバーで構成され、オリジナルのデルタに較べ150kgダイエットしていると謳われていた。

 また、エンジンについても点火系およびインジェクション、バルブタイミング、フューエルプレッシャー、ターボのブースト圧を変更などにより、スタンダードでも250ps、顧客の要望によっては300psまでチューンが可能とされ、本格的なライトウエイトスポーツを目指した。

インテリアはダッシュパネルからコンソール、ドアのインナーパネルに至るまで現代的な総カーボンファイバーとなっている(C)2020 RM Sothebys
インテリアはダッシュパネルからコンソール、ドアのインナーパネルに至るまで現代的な総カーボンファイバーとなっている(C)2020 RM Sothebys

 ハイエナ・ザガートは1992年1月の「ブリュッセル・モーターショー」にてデビュー。一説によると、ザガートではアルファロメオES30系「SZ/RZ」に次ぐビッグプロジェクトとなることを期待して、ランチアとともに500台の生産を可能とする体制構築に務めていたとされる。

 しかし、ランチアが属するフィアット・グループの支援が期待していた規模のものとはならなかったことから、生産計画は大幅に縮小。結果としてワールドプレミア時のリリースでは「ザガート生誕75周年を記念して75台の製作予定」と発表された。

 さらに不運なことに、インテリアを構成するカーボンファイバーの製造過程にもトラブルが発生したことから、結局24台がラインアウトしたに留まったといわれる。

 ただし、同時代のV8フェラーリにも匹敵するプライスが敬遠されてしまったのか、オーダーは予想以上に少なく、24台で断念せざるを得なかったのが実情とする見方もあるようだ。

 ちなみにわが国においても、当時ザガートの日本総代理店を名乗り、日本輸入車組合(JAIA)にも所属していた「ザガート・ジャパン」が1580万円の正札で販売。3台のハイエナが正規輸入されたといわれている。

【画像】カルトなザガート「ハイエナ」とは(40枚)

【2023年最新】自動車保険満足度ランキングを見る

画像ギャラリー

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー