なぜトヨタはいすゞ・日野と新会社設立? 小型商用事業で協調する狙いとは

いすゞと日野およびトヨタは、2021年03月24日に商用事業において新たな協業に取り組むことに合意しました。新たな協業で輸送課題の解決やカーボンニュートラル実現への貢献を目指すといいますが、どのような狙いがあるのでしょうか。

なぜトヨタ、いすゞ、日野が新たな協業をおこなうのか

 2021年3月24日、日本の自動車メーカー3社が新たな協業をおこなうことに合意しました。
 
 その3社とはトヨタ、いすゞ、日野です。さらにこれに伴ってトヨタといすゞは資本提携に関する合意を締結しています。なぜ、この3社がタッグを組むことになったのでしょうか。

共同記者会見にて(日野自動車株式会社 代表取締役社長 下 義生/ トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田 章男/ いすゞ自動車株式会社 代表取締役社長 片山 正則)
共同記者会見にて(日野自動車株式会社 代表取締役社長 下 義生/ トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田 章男/ いすゞ自動車株式会社 代表取締役社長 片山 正則)

 日野は1966年にトヨタの傘下に入り、2001年に完全子会社化されました。

 古くは日野の工場でトヨタ車の生産をおこなうなど間接的なタッグはあったものの、実際の所はトヨタ/ダイハツ、トヨタ/スバルのようなシナジー効果は得られていなかったのも事実です。

 確かに乗用車を主に扱うトヨタと商用車専業の日野では接点は少なそうですが、ユーザー目線で見ると「何かできそう」、「よりタッグを組める」という想いが一致したのでしょう。

 いすゞはGMとの資本提解消後、2006年にトヨタと資本提携をおこないました。
 ディーゼルエンジンを中心とする協業が目的でしたが、市場環境の変化などで協業が進展せずに2018年に資本提携を解消。

 ただ、喧嘩別れではなく「現時点では各々の道を進んだほうが両社にとってはメリットが多い」という発展的な解消で、実際の所は「何かあったらまたタッグを組みましょう」という関係だったといいます。

 つまり、今回の資本提携は「何か」があったわけです。それは自動車業界にとって大きなターニングポイントとなるCASEへの対応。つまり「同じ道を進むならタッグを組んだほうがいい」だったわけです。

 ただ、いすゞと日野はバス事業では2004年にいすゞ/日野で共同出資の新会社(ジェイ・バス)を立ち上げていますが、トラック事業ではガチンコのライバル関係になります。

 そこは「ユーザー目線」といっても、なかなか話は進展しなかったようですが、その仲を取り持ったのがトヨタでした。

 その背景には日本政府は「2050年にカーボンニュートラルを実現する」という目標のためには乗用車/商用車の違いはなく、「チームジャパン体制」で取り組む必要があるという考えが後押ししたのはいうまでもありません。

 その根底には「日本をよくしたい」という強い想いが通じたのでしょう。まさに「クルマの未来を創りたい人、この指とまれ!!」です。

 では、具体的にはどのようなことをおこなっていくのでしょうか。

 ちなみに日野はトレイントン(フォルクスワーゲンのトラック・バス部門)、いすゞはボルボトラックと各々で資本提携も結んでいます。

 今回の協業は小型トラック/ピックアップなどの領域を中心に、EV/FCVなどの電動化技術、自動運転技術、電子プラットフォームの開発を共同で取り組むと発表されました。

 そのために新会社「Commercial Japan Partnership Technologies」を設立(トヨタの中嶋祐樹CVカンパニープレジテントが代表取締役社長に就任)。

 この新会社では3社の理論を踏まえ、商用車におけるCASE技術・サービスの企画がおこなわれます。さらに志を共にするそのほかのパートナーとの連携もオープンに検討するそうです。

 CASE技術は広く普及しなければ意味がありません。そのためには、乗用車よりも経済・社会を支えるために長距離・長時間稼働し、インフラと連携して導入を進めやすい商用車のほうが重要です。

 トヨタは常日頃から「技術は普及してこそ意味がある」と語りますが、そのための協業ともいえるのです。

 ちなみに商用車の国内保有台数は全体の2割ですが、二酸化炭素の排出量で見ると全体の半分を占めるといいます。

 加えて、いすゞ/日野を合わせて8割というシェアを考えると、今回の協業による「カーボンニュートラルに繋がる電動化技術の普及」という部分は、スピードアップするでしょう。

 そのなかでもFCVはインフラの整備は欠かせません。趣味嗜好で選ばれる乗用車は多少の不便であっても許容できる部分がありますが、ビジネスユースの商用車では通用しません。

 すでにトヨタは福島県における水素社会実証へのFCトラックの導入やインフラと連携した社会実験などをおこなっていますが、今回の協業により普及に向けた取り組みが加速することは間違いないでしょう。

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