【東京−京都インプレ】ロールス・ロイス新型「ゴースト」が目指した新たな世界観「贅沢のその先」とは

2020年10月に日本上陸を果たした、2代目となるロールス・ロイス新型「ゴースト」。初代はBMW傘下のもと開発された始めてのモデルとして2009年に発売。11年間の販売期間で1906年以降最高の総売上台数を達成させるなど、ロールス・ロイスの中核をなす存在だ。その最新型はどのような進化を遂げたのだろうか。

あえて抑えられた豪華さは上質さを生み出す

 若返り、世代交代、オーナーのサスティナビリティ。すべての自動車ブランド、ことに高級銘柄、が抱える課題のひとつであろう。近年、ユーザー層の若返りに世界でもっとも成功したブランドは何か。答えはロールス・ロイスだ。

 ロールス・ロイスのごく一般的なイメージといえば、白い手袋をはめた運転手が巨大なサルーンの観音開きドア(コーチドア)を恭しく開けるとなかから白髪の大金持ちが降りてきて。というものだが、最近はまるで違う。平均年齢はなんと43歳。つまりグッドウッド・ロールス・ロイスから降り立つのは若々しい成功者であり、それも後席ではなくたいていは運転席のドアが開く。

 若い世代はサルーンのショーファードリブンを好まない。それならいっそアルファードのようなミニバンでいい。よいクルマはやっぱり自分でドライブしたい。そう考えている。ロールス・ロイスでいえば2009年に登場した初代「ゴースト」と、その派生モデルである2ドアの「レイス」&「ドーン」によってその傾向に拍車がかかった。端的にいってそれらは運転する歓びのあるモデルだったのだ。スタイリングにはモダンな華やかさもあった。初代ゴーストの成功こそ若返りの原点であったといってよい。

 10年ぶりとなるゴーストのモデルチェンジに際して、グッドウッドは攻めた。2代目は似て非なるモデルへと進化を遂げたのだ

●自動車としての本質にこそ、先見性があった

控えめなアップデートを施されたエクステリア。グリルは裏側から控えめにライトアップされる(C)橋本玲
控えめなアップデートを施されたエクステリア。グリルは裏側から控えめにライトアップされる(C)橋本玲

 果たして若いハイエンドカスタマーの望みとは何か。グッドウッドの回答は「ポスト・オピュレンス」だった。直訳すると”贅沢の先”にあるもの。見せかけだけの贅沢ではなく、真の贅とは何かを追求する。そんな彼らの姿勢を補足する言葉が「リダクション」(縮小)であり、「サブスタンス」(実質)である。要するにシンプルに極めることこそがモダンエレガンス。無駄な贅沢はもうやめた、というわけだ。

 すでにその実力の一端をメディア試乗会で味わっていたが、少し乗っただけでハードとしての完成度の高さは十分に理解できた。後はもう少し長く乗ってみて、グッドウッドのいう「ポスト・オピュレンス」の髄を確かめてみたい。そう思った筆者はきめ細かなメタリックグレーのゴーストSWBを借り出して、一路、東京から京都を目指した。

 シャットラインやキャラクターラインは少なく、クロームラインの輝きも控えめで、車体全体の優雅さでは先代を遥かに凌ぐ。インテリアも同様で、上質なウッドやメタル、レザーといった素材のもつ力を生かすべく可能なかぎりシンプルなデザインを貫いた。インテリアを高級に見せる手段はいくつもあるが、“全部載せ”がよいとは限らない。けれどもただ減らせば貧相になってしまう。だからシンプルな贅沢さの表現は難しい。

 もっとも、新型ゴーストの目指す“贅沢のその先にあるもの”とは、ただそんな見栄えの話に限ったものではなかった。自動車としての本質、そのパフォーマンスにこそあったのだ。

 テクニカルにみて最大のポイントは、ブランド専用開発のアルミニウム・スペースフレーム骨格を採用したことに尽きる。先代はBMWグループの上級プラットフォームを活用していたが、新型ゴーストは違う。ロールス・ロイスに「必要な性能」を盛り込むべく新たに開発されたもので、「ファントム」と「カリナン」にはすでに採用されているプラットフォームだ。

 車台を一新した一方で、心臓部には純内燃機関を受け継いだ。ファントムやカリナンでおなじみの6.75リッターV型12気筒ツインターボエンジンである。これに8速ATを組み合わせ、わずか1600回転からフラットに850Nmもの大トルクを発揮する。この大トルクをロールス・ロイスのサルーンとしては初めて4WDシステムにより路面へと伝えることになった。

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