エアバッグが開いたクルマはもう乗れない? 廃車と修理のボーダーラインは?
事故の衝撃から乗員を守るエアバッグ。エアバッグが開いてしまった場合、そのクルマは廃車にするしかないのでしょうか。それとも修理は可能なのか、整備士に聞いてみました。
見た目は軽傷でも中身が大きく損傷しているケースも
事故などの強い衝撃から乗員を守る安全装備として、「SRSエアバッグ(エアバッグ)」が一般的になりました。
「SRS」というのは、「Supplemental Restraint System(シートベルト補助拘束)」の略で、あくまでもシートベルトの装着を前提とし、事故などの強い衝撃を受けた場合に乗員を保護する装備ということです。
エアバッグは、クルマに搭載されたセンサーが急激な減速を感知してコントロールユニットから指示が出され、内蔵されている火薬が爆発することでエアバッグが開くシステムになっています。
エアバッグは車両前方が大きくヘコむような大事故で開く場合と、軽症そうに見えてもエアバッグが作動してしまうケースがあります。
このエアバッグが開いしまうほどのダメージを受けた場合、修理することができるのでしょうか。もしくは廃車にするしかないのか、そのボーダーラインについて整備士に聞いてみました。
「前方からの衝撃を検出するために取り付けられるのが『フロントインパクトセンサー』と呼ばれるセンサーなのですが、一般的にはフロントサイドフレームに取り付けられています。
通常はフロントサイドフレームが歪むほどの衝撃がある事故は大きな事故だとセンサーが判断して、エアバッグが作動するわけです。
また、一見、軽症に見えてもエアバッグが開いてしまうケースでもフロントサイドフレームに衝撃が加わっており、かなりフレームに歪みが発生している可能性が高く、見た目以上に重症なケースであるといえます」
見た目こそ被害が軽そうでも、フレームが歪んでしまうと走行性能に大きな影響が出てしまいます。
真っ直ぐ走らなかったり、エンジンやサスペンションの取り付け位置、ステアリングやグアボックスにまで影響が出ていることも想定される事態だといえます。
また、エアバッグが開いたクルマは廃車になるともいわれていますが、これもあながち間違いではないようです。
「よほど損害が大きくなければ、技術的に修復は可能です。ただし、フレームに生じた歪みから連鎖して、サスペンションの取り付けやエンジンの搭載位置、ステアリング、ギアボックスなどにも歪みやズレが生じている可能性があります」(整備士)
それでも廃車になるかならないかは、クルマの年式や走行距離、人気などを考慮した「残価」と呼ばれる資産価値によってボーダーラインが引かれるのだそうです。
「エアバッグが開くほどの事故となると、修復も大掛かりになります。修理の総額より残価が高ければ修理するほうがお得になりますが、中古車などで残価が低いクルマは、むしろ同程度の中古車に乗り換えたほうが安く済む場合も多いです。
そこで修理せずに買い替えるケースが多いため、エアバッグが開いたクルマは廃車になるというイメージを持っている人が多いかもしれません」(整備士)
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ちなみに、修復ではなく買い替えとなった事故車は、廃車にすることなく自動車保険会社に引き取られていくケースがあるそうです。
その後、保険会社によって解体屋に持ち込まれたり、違うところで修復して中古車として販売されていることもあります。
「修復歴アリ」の中古車を購入する場合、目先の安さに惑わされず、しっかり修復されているかを見極めることが大切です。
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