昔はFR車が選びたい放題だった!? 1980年代に登場したFRスポーツ車5選
FR車の魅力というと、駆動輪と切り離された前輪がもたらす優れたハンドリングや、アクセル操作でクルマの姿勢や向きをコントロールする楽しさが挙げられます。近年は比較的小型のFR車は激減してしまいましたが、1980年代の日本では、小型FR車が隆盛を極めていました。そこで、若者を夢中にさせた往年のFRスポーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。
コンパクトなFRが数多く存在していた頃のスポーツモデルを振り返る
30年ほど前から、世界的に数が減少してしまったのが比較的コンパクトなサイズのFR車です。現在、日本車ではマツダ「ロードスター」と、トヨタはまだ正式にはアナウンスしていませんが、新型のデビューが控えているトヨタ「86」/スバル「BRZ」があり、一定の人気を保っています。
海外ではBMW「Z4」「M3/M4」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」「SLC」などが存在しますが、高額なモデルなため、だれもが手軽に入手できるクルマではありません。
一方で、1980年代から1990年代にかけて、日本市場では数多くのコンパクトFR車が存在。
FR車の魅力というと、駆動輪と切り離された前輪がもたらす優れたハンドリングや、アクセル操作でクルマの姿勢や向きをコントロールする楽しさが挙げられ、走りを重視した若い世代のユーザーを中心に絶大な人気を誇っていました。
そこで、若者たちを夢中にさせた往年のFRスポーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。
●日産4代目「シルビア」
日産「シルビア」は、1965年にスペシャリティカーとして誕生しました。初代はあまりにも高額だったことから普及しませんでしたが、2代目以降は価格を抑えたスポーティなFR車として人気となります。
そして、1983年には4代目のS12型が登場。この世代からドアミラーが標準となり、先代の角型4灯ヘッドライトに対して、スポーツカーとしては定番のリトラクタブルライトを採用した、ウェッジシェイプのボディに一新されました。
ボディタイプはクーペとハッチバックが設定され、販売チャネルの異なる兄弟車の「ガゼール」も引き続いてラインナップ。
エンジンラインナップは多く、高性能グレードには2リッター4気筒DOHCの「FJ20E型」に加え、ターボを装着した「FJ20ET型」を搭載し、最高出力は190馬力(グロス、以下同様)を誇りました。
また、足まわりも進化し、フロントにストラット式、リアにセミトレーリングアーム式を採用するシリーズ初の4輪独立懸架となっています。
次世代の5代目S13型シルビアが大ヒットしたのと比べ、S12型はヒット作にはなりませんでしたが、硬派な印象が残ったシリーズ最後のモデルとして、いまも語り継がれる存在です。
●いすゞ「ジェミニ ZZ」
現在、国内ではトラックに特化したメーカーとなっているいすゞですが、2002年までは乗用車を生産しており、「117クーペ」や「ピアッツァ」など、数々の名車を世に送り出してきました。
いすゞは1971年にGMと提携し、1974年には当時、同じくGM傘下だったオペルが生産していた小型車「カデット」をベースにした、オーソドックスなスタイルのFRセダン/クーペの初代「ジェミニ」を発売。
同時期のトヨタ「カローラ」や日産「サニー」よりもワンランク上の車格で、いすゞの主力車種となります。
そして、1979年には最高出力130馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載した「ZZ(ダブルズィー)」シリーズを追加ラインナップ。
さらに1981年には、強化サスペンションやLSDを標準装備した「ZZ/R」を発売し、「ベレットGTR」の再来と評されます。
外観は派手な演出は施されていませんが、リアバンパーの下から覗く斜めにカットされたデュアルマフラーが、スポーティさを強調し、エキゾーストノートも低音が響く迫力あるサウンドを奏でました。
1985年にFF化された2代目ジェミニが登場しましたが、初代もしばらくは併売され、1987年に生産を終了。その後1990年代には、SUVを除くいすゞの乗用車はすべてFF車となりました。
●三菱「ランサーEX GSRターボ」
1973年に誕生した三菱初代「ランサー」は、大衆車というポジションながらスポーティなグレードも設定され、国内外のラリーで活躍しました。
ところが、1979年に発売された2代目の「ランサーEX」シリーズは、排出ガス規制強化によるパワーダウンや、100kg以上増えた車重の影響が色濃く、初代ほどのスポーティさは影を潜め、まさに牙が抜かれた状況でした。
そこで1981年に、最高出力135馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載した「ランサーEX 1800GSRターボ」を追加ラインナップ。
当時、ターボ化は各メーカーに波及し、ライバル車も次々にパワーアップを図っており、ランサーEXターボも1983年のマイナーチェンジでインタークーラーが装着され、最高出力は160馬力まで向上しました。
外観ではインタークーラーを覗かせるスポイラー形状のフロントバンパーに、逆文字「TURBO」のデカール、小ぶりなリアスポイラーを装着することで、直線基調のボディをスポーティに演出。
足まわりも専用にチューニングされ、コントローラブルなハンドリングによって、硬派なスポーツセダンとしての人気を確立します。
その後、1987年にランサーEXシリーズは生産を終了。高性能セダンの系譜は「ギャランVR-4」、そして「ランサーエボリューション」へと継承されました。
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