アーマーゲー時代の狂気ワイドボディ「AMG 560 SEC」の凄さとは?

AMGジャパンがオーダーした1台の評価はいかに?

 今回RMサザビーズ「ARIZONA」オークションに出品された、1989年型「560 SEC AMG 6.0ワイドボディ」は、シルバーに近い「パールグレーメタリック」のボディに「アンスラサイト(グレー)」レザーの組み合わせ。「AMGジャパン」のオーダーにより、バブル真っ盛りの1988年9月に日本に向けて送り出され、翌年わが国で初登録されたという。

●1989 メルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」

バブル期の日本で「アーマーゲー」と呼ばれ、並みいるスーパーカーたちと同じくらいに憧れの対象だったメルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」(C)2020 RM Sothebys
バブル期の日本で「アーマーゲー」と呼ばれ、並みいるスーパーカーたちと同じくらいに憧れの対象だったメルセデス・ベンツ「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」(C)2020 RM Sothebys

 もともとシュトゥットガルトで作られた量産型560SECは、アファルターバッハのAMGファクトリーに属する熟練工たちによって大変身を遂げていた。

 AMG謹製の6.0リッター32バルブエンジンにワイドボディパッケージまで含めたプライスは、もとより高価なメルセデス・ベンツのフラッグシップSECクーペの車両価格と合算することによって、この時代におけるもっとも高価なロードカーの1台となった。

 きわめて高価なこの価格は、当時もっとも裕福だった愛好家だけがチューニングメーカーのカタログの頂点を堪能できることの証だったのだ。

 今回の出品車両も、特別にエクスクルーシブな「560 SEC AMG 6.0 ワイドボディ」の1台。エンジンナンバー/トランスミッションナンバーの双方ともに、まずはメルセデス・ベンツとしてのマッチングナンバーを示している。

 AMGでは「Gen II(第2世代)」と呼ばれている純正フロントフェンダーとフロントバンパーなどのボディパーツには、当時の西ドイツ交通当局が認可したナンバーが記載されている。

 くわえて、5.6リッターから6リッターに増強された32バルブユニットの専用カムカバー、排気マニホールドやスロットルボディにもAMG純正であることに加え、アファルターバッハ工場でエンジンを組み上げた職人のIDコードを示すナンバーが刻まれている。

 さらに、AMG純正の4ピストン式フロントブレーキキャリパーは、AMG純正ビルシュタイン製ショックアブソーバーともども、このクルマのエクスクルーシブな特質を明らかにしているのだ。

 この時代のAMG製コンプリートカーのなかには、最初のオーダー主の意向により、これら純正パーツの一部しか装着されていないものも存在するという。しかしこの個体では、車両全体に最上級のパーツがふんだんに使用されている。

 純正リミテッド・スリップ・デフの脇からリアエンドに抜ける、ステンレス鋼製エキゾーストもそのひとつ。AMGの刻印が施された、ツインのエンドマフラーも装備されている。

 ただフロントフェンダーに装着された、現代の「AMG」ロゴを持つプラスチックバッジのみは、最近になって追加されたかと見えるものの、そのほかは当時そのままの姿を示しており、新品のブリヂストン「ポテンザ」に組みつけられた3ピースの17インチホイールも、新車時以来の純正品が装着されている。

 そして、オークション出品時の走行距離は9万400km。日本にデリバリーされた際のマニュアル&サービスマップの小冊子やAMGのドキュメントポーチ、ジャッキ、スペアタイアなどの純正アクセサリーも添付されているそうだ。

 ところでメルセデス560SEC AMGワイドボディといえば、さる2020年8月に同じRMサザビーズ北米本社が開催したオンライン限定オークション「SHIFT MONTLEY」にて、今回の出品車と同様のワイドボディを持ち、同じく「AMGジャパン」が日本の顧客のためにオーダーした、5.6リッター32バルブの560SEC AMGを紹介したことを記憶している人もいるだろう

 この時には、オークショネアに支払われる手数料も含めれば、エスティメート上限を超える25万3000ドル(約2670万円)で落札されるに至っている。こうした最新例を思えば、今回の「ARIZONA」オークションで設定された17万5000−22万5000ドルというエスティメート(推定落札価格)は、かなりリーズナブルとも思われよう。

 2020年8月に出品された個体が、このモデルを代表する人気色「ブルーブラック」であるのに対して、今回の車両はやや好みの分かれるパールグレーメタリックであること。また、内外装のコンディションや走行距離なども前回の車両ほどではないことなどを加味しての価格設定がおこなわれたものと考えられる。

 今回は「Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品だったことから、たとえ出品者の意に沿わない価格であっても必ず決済されてしまう取り決めとなっていたのだが、現地時刻の22日13時からおこなわれた競売では20万1600ドル、つまり、邦貨換算約2090万円で無事落札に至った。

 これは「ホンモノの」560SEC AMGワイドボディが、依然として大人気であることを裏づけるオークション結果とみて間違いあるまい。

【画像】アーマーゲーと呼ばれていた時代の「AMG」とは(33枚)

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