ソニーが車を本気で開発? 「ビジョンS」テストの目的とは 市販化は「ファブレス化」が鍵を握る?

量産化の鍵を握るのは「ファブレス化」?

 もうひとつの狙いは、ESG投資への対応です。経済産業省によりますと、ESG投資とは、「従来の財務情報だけではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資」を指します。

 ソニーとしては、「センシングによる社会価値創出」としてセンシングカメラによる運転での安全への貢献、CO2排出レベル低減、また電力のスマートグリッド化などを挙げており、さらにAI(人工知能)技術を活用した環境技術事業にも積極的に取り組んでいます。

 こうした企業としての取り組みを見える化する上でも、ビジョンSは大きな存在だといえます。

 このようにソニーの事業実態を見てくると、ビジョンSは量産を考慮しないコンセプトカーである可能性が高いといえます。

ソニーが公道試乗を開始した試作車「VISION-S」(画像:ソニー公式ウェブサイトより)
ソニーが公道試乗を開始した試作車「VISION-S」(画像:ソニー公式ウェブサイトより)

 一方で、ソニーがビジョンS製造のパートナーとしている、オーストリアのマグナ・シュシュタイアは、カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルの子会社であり、マグナグループ全体として、フォード向けなどのEV委託生産で実績があります。

 またEV以外では、オーストリア国内のグラーツ工場でトヨタ「スープラ」とBMW「Z4」などを生産していることでも知られています。

 また、マグナインターナショナルはCES2021で、EV生産について韓国LG化学との業務連携を強化し、EV生産委託業務の拡大を示唆しています。

 さらに、ビジョンSの自動運転や高度運転支援システムについては、ソニーはハンガリーのAImotiveと連携しており、ソニーの自動運転EVを量産する基本的な体制はすでに整っているともいえます。

 一部報道であるように、アップルがiPhoneのように、自社で商品企画と設計のみをおこない生産を外注するファブレス企業としての特性を生かして自動運転EV量産を検討しているとすれば、ソニーとしてもアップルのようなファブレス企業の体系でソニーブランドとしての自動運転EVを量産するというシナリオが想像できます。

 果たしてソニーのクルマは量産されるのか、今後の動向を注視していきたいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. 作って開発に使うのはメリットがある。
    センサーの性能や消費する電力の確認やバッテリーの性能・開発はある程度、自分でしないと交渉で強気に出れない。
    ただ売るのにメリットがあるか言えばほとんどない。
    値引きだ、ディーラー網だ、サービス網だと言えば金がかかるし、タイヤだガラスだと総合商品でそのメーカとの取引も膨大なるし、今後販売はさておいいぇもサービス10年20年と続けないといけないから、家電よりも期間がいるし、当然細かい部品でも長期にわたって保有しないといけない。
    それを考えれば手を出さないのでは?

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