車の「買取価格」なぜ新車メーカーが重要視? 「購入時より高値」起きる車種も
クルマの電動化が中古車市場に与える影響とは?
また、少し視点を変えてリセールバリューを見ると、自動車メーカー関係者は「新車販売を増やすには、リセールバリューを上げることが第一」という考え方が業界の常識です。
リセールバリューが高ければ、所有期間全体でのユーザーの実質的な支出は減りますし、また残価設定ローンなどの条件もユーザーにとって有利になる場合もあり、結果的に新車販売を押し上げます。
例えば、FCAジャパンの場合新車3年後のリセールバリューは、走行距離や車両の程度によりますが、各モデルでライバル車より概ね10%から20%も上回る結果となっています。
具体的には、ジープ「ラングラー リミテッドスポーツ」が67%から83%、ジープ「レネゲート リミテッド」が60%から79%、フィアット「500」が48%から74%、アバルト「595 コンペティツィオーネ」が53%から73%、そしてアバルト「124スパイダー」が65%から88%という実績です(同社調べ)。
こうした高い相場が維持できている裏には「認定中古車制度の見直しを強化し、在庫を増やし、さらに販売店でもしっかりと利益が出るようにしたから」(FCAジャパン関係者)といいます。
過去1年間で、認定中古車在庫は1500台から5300台に拡充しています。
在庫増状態となっても、良質で信頼度の高い在庫が増えたことでブランド力が上がり、新規顧客数が増えて、結果としてリセールバリューが上がったと、同社では分析しています。
さて、自動車産業全体で見ると、今後は電動化が一気に加速することになります。日本では「遅くとも2030年半ばにICE(ガソリン車・ディーゼル車)の新車販売禁止」という方針を2020年末、政府が正式にアナウンスしていますが、その具体的な実施プロセスについては未発表です。
今後どのタイミングで、ガソリン車やディーゼル車のリセールバリューが動くのか、ユーザーにとって気になるところですが、こうした法的な大変革は自動車産業界初の事例であり、それが及ぼす相場を正確に予測するのは極めて難しい情勢です。
ユーザーとしては、市場の変化を逐一見ていく必要があると思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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