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北米市場ではSUV自体が不人気というわけではありません。
前述のSUVラインナップ以外にも日本でも販売されている「RAV4」や北米版「ハリアー」である「ヴェンザ」、かつての「ハイラックスサーフ」の流れを汲む「4ランナー」などまさに多種多様です。
北米ではピックアップトラックの需要が高く、トヨタにも「タンドラ」や「タコマ」といったベストセラーモデルがラインナップされているため、SUVと一部競合する部分はありますが、それでもSUVというカテゴリー自体は根強い人気があります。
ただ、販売台数を稼いでいるSUVモデルのほとんどが、乗用車をベースにしたSUV、すなわち「クロスオーバーSUV」です。
一方、ランドクルーザーのようなラダーフレームを持ち、悪路走破性能に優れた本格的なSUVの販売台数は決して多くありません。

北米の自動車事情に詳しい関係者は、この点について次のように指摘します。
「アメリカでは古くからサスペンションのストロークの長いクルマ、いわゆる『乗り心地の良いクルマ』が好まれる傾向があります。
国土が広いためクルマの乗車時間が長く、その一方で路面のコンディションがあまりよくないことが原因といわれています。
しかし、路面のコンディションが悪いといっても、新興国のようなまったくの未舗装路はそれほど多くはなく、多くの場合はクロスオーバーSUVで十分です。
逆に、クロスオーバーSUVでは物足りないような場合は、アメリカではピックアップトラックが好まれる傾向があるため、ランドクルーザーは微妙な立ち位置になってしまっているといえます」
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また、ラダーフレームを持つこととも関係しますが、ランドクルーザーの価格もネガティブなポイントといえるでしょう。
北米トヨタにおけるもっとも高価なモデルがランドクルーザーであり、日本円で約870万円ほどです。
フルサイズSUVのセコイアが約510万円から、大型ピックアップトラックのタンドラが約350万円からという点と比べると割高感は否めません。
日本ではかつてのRVブームの影響もあり、ランドクルーザーはもちろん、メルセデス・ベンツ「Gクラス」も根強い人気があります。
しかし、北米市場ではGクラスよりもクロスオーバーSUVである「GLS」のほうが好まれており、Gクラスの販売台数はGLSの20%から30%程度です。
ワイルドなイメージのあるアメリカですが、多くのユーザーは「イメージ」よりも「乗り心地」という実利を取るということのようです。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。
































