本当に公道を走って大丈夫? 1億円の飛べない宇宙船「アズテック」とは
少なくとも日本に2台は輸入されていた!
1991年初夏のF1モナコGPにてデモンストレーション走行をおこない、その存在をアピールしたイタルデザイン・アズテックは、同じ年の後半からシリーズ生産へと移行された。
世界限定で50台の生産が見込まれていたとのことだが、最大のマーケットのひとつとして想定されていたはずの日本が、折しもバブル崩壊による景気後退に喘いでいる時期にあったこと、あるいは日本では「1億円」と設定された驚くべき高価格も相まって、実際に製作されたのは25台のみ(ほかに18台などの諸説あり)といわれている。
しかし、ビジネスの点では成功作とはいえなかったアズテックだが、その未来的なアピアランスは、時のクリエーターたちを大いに刺激することになった。
生産プロジェクトにおいてサポーターの役割を果たした、日本のさるオーディオメーカーのTVCMや雑誌広告にシンボルとして採用されたほか、「B級ホラーの帝王」と呼ばれたアメリカのロジャー・コーマン監督が、2031年のロサンゼルスが舞台という設定のSFホラー映画『フランケンシュタイン禁断の時空(1990年)』にも登場。それらの露出もあって、今なお90年代カルチャーの語り部として、しばしば取り上げられることになったのである。
ちなみに日本には、1992年初頭の時点で少なくとも2台が上陸。なぜか千葉・船橋市内の高級輸入車ディーラーのショールームに置かれていたのを、この時期に筆者自身も目撃している。
その後、所有権が転々としたといわれる2台の内、可動状態とされる1台は国内各地のイベントにも姿を見せていたが、現在の所在に関しては明らかになっていない。
●未来的なスタイリングを披露した3モデル
アズテックにはドアはなく、ウインドスクリーンを持つ左右ふたつのボディ上部ユニットがセンターフレームを軸に左右に開き、乗員はそこからシースルーのドアシルを跨いで乗り込むという少々トリッキーなデザインを採用する。
エンジンはアウディ製の直列5気筒20Vターボエンジンで、これをリアミドに搭載し、4輪を駆動するフルタイム4WDのパワートレインを採用した。この4WDシステムは、ランチア・デルタインテグラーレの流用で、5MTのトランスミッションと組み合わされている。
インテリアは、ジウジアーロが1970−1980年代に積極的に採用していたサテライトスイッチをメーターナセル周囲に配置したステアリングまわりが特徴的だ。ステアリング外径とほぼ同じ大きさのメーターナセルの中のメーターは、アウディ製が流用されている。
ちなみに、コンセプトカーはワンオフデザインを採用するが、市販版アズテックのテールライトは気づきにくいがアルファ164の流用である。
同時に発表されたアスピドは、戦闘機のキャノピーのようなポリカーボネイト製のフロント/サイドウインドウ一体式のルーフを採用したクーペバージョン。
さらにアズテックのホイールベースを200mm延長し、ミニバンに仕立て上げた6シーターのアズガードもラインナップ。市販版アズテックが成功したあかつきには、これらも市販化が見込まれていた。
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