アップル社の「車開発再始動」報道、なぜいま復活? トヨタに自動運転で本当に勝てるのか
トヨタやテスラはGAFAとどう向き合う?
アップル以外では、グーグルがいわゆる「グーグルカー」として自動運転車の開発を続けています。
そもそも、アップルとグーグルの自動車産業参入が取り出されたのは、2013年から2014年にかけて、カーナビなどの車載インフォテイメントと呼ばれる情報通信の領域でした。
まず、スマホと車載器の連携システムとして、アップルが「iOS イン・ザ・カー(のちのカープレイ)」を考案。それをグーグルの「アンドロイド オート」が追従しました。
さらに、グーグルは車載OS(オペ―レーティング システム)全体に対して一気にシェアを拡大しましたが、アップルは車載OSまで踏み込んだ事業計画を立てることはありませんでした。
そうしたインフォテイメント領域の量産化と並行して、グーグルは自動運転開発を継続し、アップルがEV技術を含めた自動運転開発をおこなうという流れが生まれました。
大手IT4社のGAFA(ガーファ)では、その他にアマゾンもドローンを使った空中物流の導入を検討してきました。この分野にはグーグルも他業種と連携を模索してきました。
こうしたなか、いまやEV世界最大手となったテスラや、トヨタやメルセデス・ベンツなど従来型の自動車メーカーは、GAFAとどう向き合っていくのでしょうか。
まずは、カープレイとアンドロイド オートについては、欧米に比べて日本市場での新車装着率はまだ低いですが、これからさらに拡大する可能性があります。
一方で、EVや自動運転技術については、自動車メーカー側の開発や量産体制が拡充されつつある状況のため、IT巨人のグーグルやアップルがそれぞれ単独で市場拡大をすることは難しいと思われます。
ただし、トヨタが先日量産を発表した、e-Paletteのような公共交通機関や物流については、トヨタとの直接的な連携を含めて、自動車メーカー各社との協業の可能性があると思います。
アップルによるEVハードウェア量産が本格化すると、e-Paletteと競合してしまうこともあり得ます。
その他、一時は自社開発EVの量産計画を発表していたダイソンや、画像認識技術での事業拡大のためにEVデモカーを披露したソニーなど家電メーカーも、EVや自動運転で新たなる戦略を水面下で進めているのかもしれません。
こうした多種多様な業種による動きが予測されるなか、グーグルとアップルの最大の強みは、スマホやパーソナルコンピュータなどを通じたビックデータの集積と分析、さらにビックデータを活用したマネタイズ(有料事業化)の実績です。
この部分で、自動車メーカーは現状で、しっかりとした体制作りができているとはいい切れず、グーグル・アップルとの総括的な連携は必然かもしれません。
これから2030年代の電動化・自動運転化の本格的な到来をにらんで、IT大手と自動車メーカー、さらに電気関連企業との綱引きが激しさを増しそうです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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