バブル期5000万円もザラだった!! 「テスタロッサ」のバリものが1800万円で落札!

バブル時代のフェラーリを象徴していた「テスタロッサ」は、コロナ禍において価格が落ち着いてきているようだ。そこで、テスタロッサとそのビッグマイナーチェンジモデルともいえる「512TR」のどちらが買い得感があるのか、最新オークションで検証してみよう。

バブル時代に憧れの象徴だった「テスタロッサ」

 COVID-19こと新型コロナウイルスによる惨禍が世界を覆うなか、2010年代中盤から驚くべき価格高騰劇を見せていたフェラーリのマーケット評価にも、大きな地殻変動があったようだ。

外観上は大きな変化を見ることはできないが、中身は大幅に変化している。「テスタロッサ」(上)と「512TR」(下)(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
外観上は大きな変化を見ることはできないが、中身は大幅に変化している。「テスタロッサ」(上)と「512TR」(下)(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 とくに近現代の量産モデルについては、一時期と比べて明らかな市況の落ち込みが見られることが、2020年に開催されたオークションの結果からも明らかになってきている。その厳しい情勢は、自動車界のスーパースターとしてバブル時代に君臨した「テスタロッサ」とそのファミリーについても変わらないのだろうか?

 今回はRMサザビーズ社が2020年10月ー11月に英国とアメリカで相次いでオンライン開催した「LONDON」オークション、および「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品された1990年型テスタロッサ、そして1992年型「512TR」の2台を「レビュー」の俎上に載せて、現在の国際マーケット市況を探ってみることにしたい。

●1990 フェラーリ「テスタロッサ」

バブル期の象徴であったフェラーリ「テスタロッサ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
バブル期の象徴であったフェラーリ「テスタロッサ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 まずは、2020年11月11日から20日までRMサザビーズ北米本社が開催した「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品されたフェラーリ・テスタロッサを紹介しよう。

 テスタロッサは「512BBi」の後継モデルとして1984年パリ・サロンに登場したフェラーリの12気筒ベルリネッタである。

 1973年のデビューから連綿と進化を図ってきたBB系ユニットを4バルブ化し、390psまでスープアップしたボクサー12気筒5リッターのエンジンを、同じくBB系からホイールベースを50mm延長した鋼管スペースフレームに搭載。290km/hの最高速度を標榜した。

 一方、新時代のフェラーリを宣言するごとき意欲的なボディは、もちろんピニンファリーナが架装。デザインワークは同社に所属していたスタイリスト、エマヌエーレ・ニコジアが中心になって手掛けたとされる。

 そして、今や伝説として語られる北米のTVドラマ「マイアミバイス」でも、主人公ソニー・クロケット刑事の愛車として大活躍するなど、1980年代カルチャーを象徴するスーパーカーとして世界中のファンを魅了することになったのだ。

 今回の出品車両は、モデル終盤にあたる1990年型。フェラーリの象徴である「ロッソ・コルサ」のエクステリアに、ベージュ/ブラウンのレザーインテリアの組み合わせで、走行距離は4800マイル(約7700km)にも満たない。

 気になるコンディションもこの走行距離に見合ったもので、オリジナルのペイントとインテリアを保持しながらも、極めて美しい状態を保っている。

 また、アフターマーケットのフロアマットがかなり非常に早い時期から重ねておかれていたことから、結果として本来の純正カーペットも新品同様。タイヤもオリジナルといわれており、本格的な運転をする前に新鮮なセットをお勧めせねばならないものの、このテスタロッサがあたかもタイムカプセルであるかのような夢を与えてくれよう。

 ところでこの個体は、新車としてのデリバリーから現代に至るまで2オーナーのみ。今回のオークション出品車である現オーナーは2人目の所有者で、1991年以来所蔵を続けているとのことだ。

 2019年には、北米の著名なフェラーリ・スペシャリスト「パトリック・オッティス・カンパニー」に所属するジョン・ハイム氏に委託して、2万ドル以上の費用を投じたリフレッシュを敢行しているという。

 例えば、ベルト駆動のエンジンでは必須となるタイミングベルトの交換に加えて、燃料噴射システムを洗浄して調整。ブレーキの消耗品や冷却ホース、バッテリーなども交換した。また、テスタロッサの弱点とされる空調システムもオーバーホールするとともに、冷媒はR134クーラントに変換済みとのことである。

 この出品に際しては、スケドーニ社製の革ポーチに収められたツールキットやけん引ジャック。およびサービス履歴を記した請求書やオーナーズマニュアルなどのドキュメントも完備。この象徴的なモデルが、新車として登場した際に及ぼしたインパクトを思い起こさせる1台といえるだろう。

 テスタロッサの生産台数は、7177台と超高額のスーパーカーとしてはかなり多く、クラシックカー・マーケットにてこの種のクルマに求められる希少価値という点では、いささか分が悪いことは事実。それでも数年前のフェラーリ暴騰の際には、カリスマゆえに2000万円越えの取引が頻発していたようだが、今回のオークションでは17万500ドル、日本円にして1760万円で落札されることになった。

 このプライスは、ひと頃よりは落ちついたともいえるが、依然としてかなりの高評価という見方もあるに違いあるまい。

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