どちらが人気? 「Gクラス」軍用/民生用の装備の違いとは?

世界的にSUV人気が続いているが、基本設計を変えずにいまなお根強い人気があるのがメルセデス・ベンツ「Gクラス」だ。そのGクラスの最初期モデルである「240 GD」で、軍用と民生用のどちらに人気があるのかを検証する。

NATO向けの軍用車両として開発された「Gクラス」

 オン&オフともに卓越した走行性能や流行を超越した独自のキャラクターが、現代においては、クルマ趣味人はもちろんのこと、ライフスタイルやファッションにもこだわるファンたちから圧倒的な支持を受けている「ゲレンデヴァーゲン」ことメルセデス・ベンツ「Gクラス」は、周知のごとく誕生から40余年を経た超ロングセラーである。

 1980年代に生産された初期モデルについては、既にクラシックカーとしてマーケットに出回り始めていることも、ご存知の方は多いに違いない。

 今回はRMサザビーズ社が2020年10月−11月に英国とアメリカで相次いで開催した「LONDON」オークション、および「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品された、生産年も仕様も異なる2台の「240GD」を紹介しよう。

いまなお人気が衰えないメルセデス・ベンツ「Gクラス」の初期モデルは、軍用と民生用ではどちらが人気があるのだろうか(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
いまなお人気が衰えないメルセデス・ベンツ「Gクラス」の初期モデルは、軍用と民生用ではどちらが人気があるのだろうか(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 メルセデス・ゲレンデヴァーゲンは、もともと北大西洋条約機構(NATO)から多目的自動車の製造を請け負うためのコンペ案として「ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)」社およびオーストリアの「シュタイア・プフ(Steyr-Puch)」社によって共同開発された軍用車両にまでオリジンを遡ることができる。

 現在では「マグナ」社に名を変えて、今なおGクラスの生産を請け負っているシュタイア・プフ社は、オーストリアで1910年代から自動車生産をおこなっていた「シュタイア」社を、独ダイムラー社から派出・発展した「オーストロ・ダイムラー」が1934年に吸収したことによって誕生した小規模メーカー。

 第二次大戦後には全輪駆動の軍用・民生用クロスカントリー車両を開発・生産し、この特殊な分野での開発能力については、既に確たる実績を誇っていた。

 そして、ダイムラー・ベンツとの数年間にわたる共同開発作業を経て完成した車両は「Typ-461ゲレンデヴァーゲン」と名付けられ、1978年の正規配備を目指しておこなわれたNATOのコンペに臨んだものの、フォルクスワーゲン/アウディの提案した「Typ-183イルティス」に敗退。その後、1982年からようやく正式採用を勝ち取った。

 エンジンやトランスミッションなどのドライブトレインは、メルセデス・ベンツの乗用モデルのものが流用された一方で、いかにも軍用車然とした堅固なシャシやディファレンシャルなどの駆動系システム、いかめしい印象のボディワークは、シュタイア・プフが培ってきたテクノロジーによるものだった。

 当初は軍用バージョンのみだったが、のちに民生モデルとしてW460系が「プフ」ブランドから生産・販売を開始。さらにはそのメルセデス版としてW460系「230G」が今から32年前、1979年春のジュネーヴ・ショーにて正式デビューするに至ったのである。

●1988 メルセデス・ベンツ「240 GD」

デンマーク王立軍に正規納入されたメルセデス・ベンツ「240 GD」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
デンマーク王立軍に正規納入されたメルセデス・ベンツ「240 GD」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 今回紹介する1台目、RMサザビーズ北米本社「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品された240GDは、まさしくゲレンデヴァーゲンの出自を物語る、ホンモノの軍用バージョン。

 RMサザビーズ社の公式WEBカタログによると、1988年に新車としてデンマーク王立軍に正規納入されたとの記録が残っているという。

 写真で見る出品車両は、その正統性を証明するようにヘビーデューティ感がありありと見て取れる。ボディワークはオリーブグリーンで、同系色のソフトトップと頑強なスチールホイールが組み合わされる。シートは黒いビニールレザー表皮とされる。

 一方メカニズムは、2.4リッター直列4気筒SOHC自然吸気ディーゼルエンジンに4速マニュアルのトランスミッションを組み合わせ、ハイ/ローレンジが選択できるトランスファーを介して4輪を駆動する。また、フロント/リアともにロック可能なディファレンシャルが装備されている。

 そしてエクステリア/インテリアにおいても、元祖ジープのごとく前方に倒せるフォールディング式ウインドスクリーン、折りたたみ式シート、リアスイングハッチ、マッドフラップ、ワイアハーネス付きのピントルヒッチ(けん引用連結器)、フロントおよびリア補助照明など、ミリタリー仕様の魅力的なディテールを完全装備するのは、生粋の軍用車両であることのなによりの証であろう。

 ただ、クラシックカー/コレクターズカーの国際市場において、趣味としての軍用車両のマーケットは決して大きいとはいえないうえに、第二次世界大戦中とその直後のモデルに人気が集中する現状においては、まだまだ価格高騰には至っていないようで、11月におこなわれた競売では2万2000ドル、日本円に換算して約230万円での落札となった。

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